第3話 魔法訓練です。
父さんは再度訓練内容を見直すということで一度部屋に戻り、その間に母さんと俺が魔法訓練をすることとなった。
「まず初めはジークちゃんがなんの魔法が得意かを見て見ましょうねっ」
母さんがそう言って話を切り出す。
「? それは昨日水晶で調べなかったっけ?」
「いいえ。昨日調べたのはあくまで適性で、何ができるかについてよっ。今日はその中で何が1番優れているかを調べるのよっ♪」
俺はなるほど、と一言納得する。
……あと多分だけど俺の場合、全部優れてそうじゃない? とも思う。……まぁやるだけやってみるけども。
「うん、わかった。・・・それで、どうやって調べるの?」
「簡単よっ♪ 今から的を作るから、それの中心を狙って魔法を打ってね?」
母さんはそう言うと〝土的板〟と言って土の的を作り出した。
・・・ちなみに一般的な『土魔法』の技の中にそんな魔法はないため、恐らく母さんの自作魔法だと思われる。
……んーやろうと思えば自分で新しく魔法の技を作ることも出来るのか。なるほど。
・・・っと、その前に。俺の設定的にそのまま魔法を使うことは出来ないんだよなぁ。
「母さん。やる前になにか攻撃魔法見せて」
「? えぇ、構わないけど……〝水矢〟これでいいかしら?」
母さんは疑問を浮かべながらも俺が頼んだ通りに攻撃系の魔法を撃ってくれた。
ヒュンッと音を鳴らしながら、水の矢が近くの木に突き刺さる。
俺はその撃たれた矢を見ながら、考えごとをする……フリをする。・・・うん、まぁ察しの通り『見て覚えた』というためだ。
一応そういう設定だし、ならその通りにやっとかないと何かあった時に勘づかれそうだからな。・・・あ、『木魔法』は術式を書いて発動するやつだから別ね?
まぁとりあえず1~2分間くらい俯いてじっくりと熟考する振りをした後、スッキリとした顔つきで勢いよく顔を上げた。
「…………うん! わかった! 〝水矢〟」
そして俺が作り出した〝水矢〟は、母さんが作り出した的の丁度ど真ん中を、軽く貫通した。
・・・貫通する破壊力もさることながら、命中率も凄まじいんだな。俺。
ちなみに母さんはというとさすがにもう慣れたのか、パァーっとニコニコ笑顔で目を輝かせながら俺のことを見てきてる。
>スキル《命中Ⅰ》《器用Ⅰ》《盗むⅠ》を獲得しました。
>スキル熟練度が一定に達しました。スキル《模倣》のランクが上昇しました。
>スキル《模倣》のランクが上限に達しました。
っと、新しくスキルをゲットしたな……って、『盗む』っ!? え、俺そんな犯罪的なことしてなっ・・・あぁ、待てよ? ……もしかしてあれか? 他人からものを奪うとかの方じゃなくて、技を盗むって方なのか?
・・・うん、タイミング的にも多分そういうことだよな。……いやわかりにくいわっ。もうちょっとマシな名前なかったの?
……うーむ、このスキルは人には見せられないな。勘違いで犯罪者とかたまったもんじゃないし。
……あ、なら『隠蔽』系で隠しておくか。進化した時に手に入れた『機能拡張』のおかげで、メニューの偽装もできるようになってたみたいだし。丁度いいでしょ。
~閑話休題~
「……そういえばジークちゃんには土魔法の初期のやつしか見せてなかったわねぇ。……だから魔法を使う前に攻撃魔法を使うように言ったのね? 納得したわ……。
あ、それよりもジークちゃん。魔力の方は大丈夫かしら? 〝水矢〟は本来『水魔法Ⅱ』で覚える魔法だから、魔力消費もそれなりだと思うのだけど……」
「うん、なんか全然平気みたい! ……それと『土魔法』と『水魔法』を使ったおかげで、魔法についてだいぶ理解できたよっ! これなら多分、他の属性も使えると思うっ!」
「えぇっ? ジークちゃん、本当?」
「うんっ多分こうでしょっ?」
俺はそう言って〝火〟〝水〟〝土〟〝風〟の魔法を発動する。・・・あぁ、さすがに上位属性系は無しだ。
んで作り出した4つの魔法は、綺麗な軌跡を残しながら俺の周りをふわふわと浮いた。
母さんは目の前で起きたそんな出来事に呆然とすると、驚きのあまり数秒間口をパクパクとする。……さすがにここまで凄まじいとは当然予想していなかったようだ。
「……ジークちゃんすごいわぁ。たった2つの魔法だけで他の属性も使えちゃうなんて。しかもそれを同時展開するなんて……ジークちゃんの年齢では考えられないわねっ。……私が教えることなんてあるのかしら?」
母さんが嫌味などなく、感心のみでそう呟くと、今度は〝火〟などの魔法に意識を向けた。
「それに見たところ特定の属性だけじゃなくて全部を同じくらいの精度で使えてるみたいだし……もしかしてジークちゃんなら全部の属性を文字通り自由自在に使いこなすことが出来るかもしれないわね?」
母さんは戯けてそう言うと、ハッとしてまた俺に意識を向けた。
・・・ってか母さんはこの初期魔法だけで俺の適性が凄まじいことを見抜けるのか……やっぱり母さんも母さんですげぇな。
「そういえばジークちゃんっ。体調の方は大丈夫かしらっ? こんなに使ったらさすがに魔力欠乏症になるんじゃっ?」
「うんっそれも全然平気みたい。もしかしたら魔力量がすごく多いのかもしれないね?」
「……これをただ魔力が多いで済ませていいのかわからないのだけど……まぁジークちゃんが平気そうならそれでいいわっ。
・・・あ、でも次は魔法の実戦の予定なのだけど……大丈夫かしらね?」
お、実戦かっ。これは何としてでも戦いたいところだが……。このままだと最悪明日ってことになりそうだな。よし、ここはぶりっ子して上目遣いで強請ろうか。
「うんっ、全然大丈夫っ! 多分だけどアロー系でもあと数十発くらいは余裕を持って撃てそうだし! ……ダメ、かな?」
「うーん、そのポーズ可愛いっ! ……じゃなくて……いえ、でもジークちゃんがそこまで言うのなら大丈夫かしら? 別に嘘って訳でも無理をしてるって訳でもなさそうだし……。
・・・うんっいいわっ。だけど一つだけ条件をつけるわね。〝少しでも体調が悪くなったりしたらちゃんと言いなさい〟これが訓練をするための条件よっ。わかったかしら?」
「うんっ!」
よし。聞き入れてくれた! ……結構ギリギリだったみたいだが、俺が本当に何事もなくピンピンしているのを見て、とりあえず許可を出してくれたみたいだ。
とりあえず訓練してくれるとの事だし、気が変わらないうちに戦闘準備に移る。父さんの時と同じく定位置に着いて、魔法の準備と同時に開始の合図を待つ。
「・・・ジークちゃん準備早いわねぇ。そんなにママとの訓練が楽しみだったのかしら? なら私も早めに説明しましょうかねっ。
まず魔法訓練と言っても何か特別なことはしないし、さっきのパパとの武闘訓練とも大して変わらないわっ。最初に私がジークちゃんの魔法を何発か避けるか防いで、それで大丈夫そうなら本格的な魔法訓練の開始よっ。
他の細かいルールはいつもの時と同じね」
母さんが俺の対面に立ってルールの説明をし終わると、一息ついて合図を出す。そして──
「それじゃ始めるわっ。……開始っ!」
──母さんとの訓練が開始された。
◇◆◇◆◇
~Sideアメリア(母)~
「──〝火矢〟〝土矢〟っ」
ジークちゃんがアルの時と同じく、躊躇いや戸惑いもなく私の頭と体を撃ち抜こうと、火の矢と土の矢を放ってくる──
「〝水壁〟っ!!」
ジュウゥゥっ!!
──けど、もちろん無抵抗で当たるわけもない。火の矢はすかさず水の壁を作り出して防ぎ、土の矢は後ろに飛んで避ける。
……うーんやっぱりジークちゃんは凄いわねぇ。ランクⅡ魔法の同時発動はもちろんだけど、この正確な命中率も凄まじいわっ。
それにアルの時も思ったけど、私達が態々教えなくてもちゃんと急所を狙えているのもかなり得点が高いわねっ!
「〝水矢〟〝風矢〟っ」
「〝風壁〟〝土壁〟っ!」
・・・そしてあの生物の命を冷たく嘲笑うような冷徹な目……ブラフや嘘偽りもなく、本物の殺気を感じたわ。
……ふへへぇ♡ この『もしかして当たったら本当に死んじゃうかも』っていうスリリングさが堪らないのよねぇ♡ はぁいいわぁ♡
っと、いけないいけないっ。顔に出さないようにしなきゃ。……こんな性格、みんなに知られたら引かれちゃうかもしれないし、母親としての威厳もありますからねっ。
「〝火矢〟〝水矢〟っ!!」
「〝水壁〟〝風壁〟っ」
私がそんなことを考えている間にも、ジークちゃんは何度も私の頭と体の中心を狙って魔法矢を撃ち込んでくる。もちろん私も対抗して魔法で防ぐ。
……本当に躊躇も何も無いわね。・・・日常生活でもあの目をしないか、少しだけ不安になっちゃうわぁ。
「〝水矢〟〝土矢〟っ」
「〝土壁〟っ!」
・・・でも実際に躊躇いなくこれができるかできないかで、戦場とかだと簡単に優劣が決まるのよねぇ。そう考えると無理に直す必要もないのかしら? ……まぁジークちゃんを戦場に行かせるつもりは無いのだけど。
でも今のうちに生き物を倒すことに慣れとかないと、今後もし私達が居ない時に魔物や盗賊が襲ってきた場合、大変なことになると思うし、冷徹さも覚えておいて損は無いわ。
「〝風矢〟〝土矢〟っ」
「〝土壁〟」
そういえば・・・今更だけどなんでジークちゃんは〝火矢〟とか〝水矢〟とか矢の魔法しか撃ってこないのかしら?
ジークちゃんほど賢いのなら、2~3回程繰り返せば矢の魔法は壁の魔法で簡単に防げるってこと、わかると思うのだけど……。
こんなに魔法を撃ってこれるのなら、魔力量的にも問題ないだろうし普通ならもっと上位の魔法も使えると思うのだけど……なんでなのかしら?
……ってあら? そういえば・・・ということは、もしかして? ・・・。
「……『水よっ〝水波刃〟』っ!『風よっ〝疾風槍〟』っ!」
「!! 〝土壁〟っ〝水壁〟っ」
──ジークちゃんは私の新しい呪文を聞くと、顔に笑顔を張りつけて壁系魔法の呪文を唱えたわ。そして私の魔法を受け止めて魔法の痕跡をよく見たあと、数回ほど素早く瞬きをして、ニヤリと笑った。
……でも今回はそれだけで終わらなくて、何かに気づいたみたいに首を傾げて、難しい顔をしたあと、また笑顔になったわ。
・・・これはやっぱり? ……いえ、だけど最後の難しい顔とまた出た笑顔は──
私がまた考えにふけようとした瞬間、ジークちゃんがとてつもない量の魔力を放出したことを感知したわ。
「〝火炎槍〟〝疾風槍〟っ!
複合〝火炎旋風槍〟っ!!」
「……えぇっ!? ……はっ。し、〝影の堅牢〟っ!! 『邪祓結界』っ!!!」
──私は咄嗟に『闇影支配』と『邪祓結界』を使うことで、ジークちゃんの魔法から身を守る。
十数秒してジークちゃんの魔法が止むと、私がスキルで護っていた範囲外の地面が真っ黒に焦げて、少しだけガラスのようになっていたのが窺えたわ──
え、え、えぇ!? ジークちゃんこんなに凄い力を隠し持ってたのっ!? ……凄いわねぇっ! 威力的にはランクⅥかⅦ以上あるんじゃないかしらッ?!?!
・・・もしも当たってたらどのくらいダメージ受けたのかしら? うーん、ちょっとだけ当たってみたかったかも……。
っ!!! それよりもジークちゃんはっ!? こんなにすごい魔法を使ってたら、さすがに魔力がなくなって倒れてるんじゃ?! もしも平気であっても、被害に巻き込まれてなんかしたらっ!
「ケホッケホッ。母さーん、大丈夫ー??」
「ジークちゃん! 貴方の方こそ大丈夫!?」
「うん平気みたい。……でも少しだけ疲れちゃった。今日はもう部屋で休みたい」
「え、えぇ。じゃあ今日の訓練はこれくらいにしましょうかっ。・・・」
ジークちゃん……ものすごい魔法の素質を秘めていたのねっ。……これなら、本当に私の技を受け継げさせることもできるかも……いえ、ジークちゃんならそのさらに高みにも上り詰めるかもしれないわっ。
……でもその前に。何としてでもこの子を育て上げなければいけないわね。……この子程の才能の持ち主が、何事もなく平凡に過ごすって言うのは到底無理な話でしょうしね。
本人が断っても、周りが意識しなくても、きっと世界や運命がそれを許さないでしょう。それなら、その運命に対抗できるくらいの力を付けてあげないとっ!
──全身全霊をもってジークちゃんを育て上げ、魔法の高みへと到達させる。……私は誰にいうわけでもなく、そう決意したわ。
──こうして、到底普通の3歳児ができるような訓練ではない、ジーク専用の鬼のような訓練が開始した──
~三者視点~
──ちなみに、ジークはこの訓練についてちっとも鬼のような訓練だと感じなかった。
・・・嘘でも冗談でもなく、本当に微塵の苦痛も感じていなかったのだ──
──アメリアはそのことに全く気づかないで、良心が痛む思いをしながら、ジークに訓練をし続けるのだった。
……どうやら母アメリアよりもジークの方がバケモノ度が一枚うわてだったようだ──
・雑談
今更だけど女口調分からねぇ……。とりあえず語尾に『だわ』とか『かしら』とか付け足したけど、それっぽく見えるかな? ・・・なんかいい方法教えてください。
あと次回は久々(7~8話ぶりだけど)にグレンが登場です! ……グレンの変わりように着いてこれますかね?




