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いつか最強になるその日まで  作者: 彩京 一木
第2章 新たな人生の幕開け
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6話『過去とお箸と最適化』

ちょっと、幽希がどのくらい頑張っていたかを分かるようにしてみました。(伝わるかな……)


「くそっ!なんでだよ!!」


 幽希の苛立った声が響く。

 今日もまた、才能が無いと言われてしまった。

 初めは褒められる事が嬉しくて始めた努力。だが、次第に成長すること自体が目的となっていた。


 だがしかし、


「何も才能が無いなんて、おかしいだろ!」


 どうしようもない現実は、中学一年の時にやってきた。

 小学生の時は、どんなに下手でも褒めて伸ばす事が多い。でも、中学生になれば話は違う。


「君には向いていない。」


 そうハッキリ言われるようになった。

 他の場合は、こんなものがあった。


「練習していないんだろう。ちゃんとやりなさい。」


 そんな事は無い。幽希は人の何倍もやっている。

 だが、何もしていないと思われる程に幽希の才能は壊滅的だった。それも、試した事全て。


 だとしても、諦める理由にはならない。

 毎日必死に練習して、上手くなろうとする。

 そのうち、人から上手だと言われるくらいにはなれた。

 だが、そこで止まってしまう。

 どんなに時間が過ぎようとも、先には進めなかった。


「大丈夫、ゆーくん。やりたい事、何でも試してみよう。あ、もちろん、悪い事以外だからね?」


 母親も父親も、頑張れ、いくらでも試せと言ってくれた。


「ありがとう……」

(ありがとう)


 声を出そうとすると、自分のものと、声変わりする前のものが重なって聞こえてくる。

 それで気づいた。ああ、これは夢なんだな、と。


 もう、この2人には会えない。


(俺はもう、新しい世界に居るんだから。)


「ゆーくん、起きて!」


 そんな声が聞こえてきた。

 母親と同じ呼び方で、髪の色も似ている金狐。


(今起きるよ、ルナ)


 今度の人生は、迷惑をかけないように頑張らないといけない。2人に会えない事は悲しいけれど、自分で選んだ道なのだ。


(さよなら、父さん、母さん)



 ―――――――――切り取り線―――――――――――



 目が覚めた幽希は、非常に困っていた。


「なあ、起きたから降りてくれないか?」


「……すぅ…すぅ…」


「……寝てんのかよ」


 幽希の上で寝ているルナ。

 さっきまで起こしていたのは間違いないのだ。


「眠気に負けて、二度寝したって所か。」


 その通りである。

 まず、幽希が目を覚ます5分程前に起きていた。

 そして、構ってもらう為に起こそうとする。

 そこまでは良かったのだが、幽希の上は心地よくて、つい寝てしまった。乗った状態で。


 どうしたものかと悩む幽希。

 そんな時、扉が開かれた。


「朝食が出来たから起きなさ……何があったの?」


 性格的には少しツンツンしているユニ。

 しかし、この有様を見て理不尽に怒るなんて事はなかった。幽希が子供だからというのもあるのだろう。


「おはようございます。俺も起きたばっかりなので分かんないですけど、多分、起こそうとしてたんだと思います……」


 ユニと話しながら、ルナの肩を揺さぶる。

 最初はイヤイヤするだけだったが、少し続けると目を覚ました。


「……ふわぁ〜……ゆーくん?」


「不思議そうな顔をしない。ルナが自分で乗ったんだろ?」


「そうだった!起きて……るんだった」


 思い出して起こそうとしたルナが、目の前の幽希を認識した。名前を呼んでいたのに寝惚けていたらしい。


「ほら、ご飯だから早く来なさい」


「わっ!?お、おはようママ」


「気づいてなかったんだな」


 後ろから声をかけられたルナは、驚いて猫のように飛び上がった。狐なのに。

 その衝撃が幽希に来たせいで少し痛かった。


 ルナが降りると、部屋を出る3人。

 テーブルには既に座って待っていたセツナがいる。


「おはよう、パパ!」


「ルナもユウキ君もおはよう。昨日はよく眠れたかい?」


「おはようございます。お陰様でぐっすりと寝れましたよ」


 これは、決して世辞などではない。

 ルナと同じになってしまうが、抱き枕にされていた幽希も温かさが心地よかったのだ。

 とはいえ、そんな事をルナの親である2人に言う事は出来ない。引かれる可能性もある。


 そして、椅子に座って食事を済ませた。

 料理についてはセリナよりも上手いので、是非とも教えてあげて欲しいと思う幽希。


「やっぱり、箸が欲しいよな……」


 料理の中に米が出てきた為、思わずそう呟く。

 作ろうとすれば作れるが、両親に違和感を持たれる。


 それをセツナに聞かれていた。


「?ハシってなんだい?」


 だが、セツナとユニに話す分には問題ない。

 ルナに分からないように言葉を選んで話す。


「俺の故郷では、食事に2本の棒を使うんですよ。こんな感じで。この米も主食としていつも食べてたので、思い出したんです。」


 こんな感じで、と言いながら箸を動かす真似をするが、あまりピンと来ないようだ。


「ああ、前のって事ね?ふぅん……ちょっと作ってみるわ。後で詳しく教えなさい。」


「私の分もよろしく頼むよ。」


 幽希としては、見た目を教える事には何の問題も無い。

 それよりも、2人……いや、気になっている様子のルナも含めれば3人に、箸の使い方を教えなければならないだろう。


「でも、あれは良いものだ。」


「ゆーくん……?」


 うんうんと頷く幽希に、ルナが首を傾げる。

 しかし、その時にフォークを咥えていたせいで、「駄目でしょ」なんて言われていた。



 ―――――――――切り取り線――――――――――



 その後、本当に箸について聞かれた。

 そこまで複雑な物でもないので、絵に描いて見せると、早速作って来たユニ。


「上手くいかないな……」


「何でユウキは簡単そうにやってるのかしら……」


 その後3人は、何かの豆で箸の練習している。

 幽希がお手本として次々と豆を持ち上げるが、出来ない人も多いのではないだろうか。

 当然、初めての人にやらせる事では無い。


 なので、10分程経った今も依然としてセツナとユニは苦戦しているのだが、ルナだけはちがった。


「出来た!……あ、落ちちゃった……」


 顔を上げた直後に落としてしまったが、出来たのには変わりない。ルナが子供というのもあり、要領がいいのだろう。


「さて、このくらいにしておこうか。箸については後で練習するよ」


「あ、やるんですね、後で」


「当然だとも。ルナが出来たのに、私が出来ないなんて……親としての威厳が無くなってしまうよ」


「私は箸で威厳を保とうとするセツナにビックリよ」


 幽希とユニから、「何言ってんだこの人」という目を向けられても、平然としている。


「そんな事より、昨日話していた通り色々教えてあげるつもりだけど、今から始めるかい?」


「いや、唐突過ぎますよ!……でもお願いします。というか、威厳はそんな事なんですね?」


「じゃあ、お昼の後は私と交代にしましょう。」


 本当は、朝食後すぐに言うつもりだったセツナ。

 だが、箸への興味の方が勝ってしまったのだ。

 それでもちゃんと、箸の事が終わったらと決めていた。


「先に庭へ行っててくれ。必要な物を取ってくるからさ」


 そう言われた幽希は庭へ向かう。

 ユニは家事をしに、ルナは幽希と一緒にいる。

 子供に見せるものでもないだろうと思ったのだが、一人でいても暇だと言って着いてきた。


「ゆーくん、遊ぶの?ならルナも!」


「そうじゃないんだ。ルナは見てるだけ」


 自分だけ仲間外れだと思ったルナは、「えー!ずるーい」と言っていたが、まさか戦闘訓練に混ぜる訳にもいかない。当然見学だ。


 幽希がルナを説得した所で、セツナが戻ってきた。


「待たせたかな?多かったからちょっと嵩張ってね」


「それはいいですけど……随分と、色んな武器を持ってるんですね……」


 あらゆる武器を使いこなすというのは、意外と本当なのかもしれない。別に疑ってもいなかったが。


「戦う上で必要なものを覚えてたら、いつの間にかね」


「じゃあ、刀とか分かりますか?」


 分からないようなので、幽希が日本刀の形状を説明してみたところ、思い当たる節があったらしい。


「刀……ああ!確か、過去の勇者から伝わった武器だったね」


「ありましたか。別に使った事はないんですけど、少し気になったんです。」


 すると、セツナが武器の山から一振りの刀を取り出す。手入れはされているのだが、名刀という訳ではない。


「切れ味は良いよ。でも、耐久性に難があるから、あまり使ってないんだ。」


「あー、それは細いですもんね。にしても、何で武器を持ってきたんですか?訓練をするだけなら木と……木剣でいいんじゃ?」


 思わず木刀と言いそうになったが、両刃の剣が普通の世界なら、木剣の方だろう。


 ちなみに、木刀言いそうになる理由は、幽希は元剣道部員だからである。そして、竹刀よりも重みのある木刀が好きだった。

 それは、カッコイイとかではなく、竹刀だと筋肉が鍛えられなかった為に、木刀で練習するのは有意義だったのだ。


「そうだけど、一応どんな感じか確かめてもらう為だよ」


「なるほど?なら、とりあえず持ってみますか」


 取り落とす程の重さだと思っていた幽希は、恐る恐るセツナから刀を受け取るが、予想に反してしっかりと持てる。

 さすがに振り回すことは出来ないだろうが、普通の素振りくらいなら出来るだろう。


「思った程じゃないです……」


「ユウキ君のステータスが高いお陰だね。ユウキ君が来たのは勇者達と同じ世界のようだから、ステータスも無かったんだろう?それなら、自分の筋力についてあまり分からないんじゃないかってね」


 もう少しステータスが上がると、金属の塊である剣や刀を振り回せるそうだ。物理法則は何処へ?


 その後も色んな武器を持たされた。

 弓、片手剣、片手棍、斧、鞭……etc……

 軽く振ってみたりもした。


「どうだい?自分に合ってそうな物はあったかな」


「まあ、刀か片手剣ですかね。」


 しっくり来るのはその二つ。

 他の武器は、自分に合っていない気がするのだ。


「じゃあ、ユウキ君には近接戦闘を教えた方が良さそうだ。意外と、そういう感覚も大事なんだ。」


「じゃあ、そこにある木剣で訓練をするんですね?」


「そうそう。最初は、ステータスに表示されない筋力を付けるものなんだけど、ユウキ君は自分でやってるみたいだし、必要ないだろう?」


 ステータスに表示されない筋力。

 幽希も薄々分かっていた事だが、ステータスだけで決まる訳でもないらしい。


 気になるので、セツナに少し聞いてみた幽希。


 筋トレをする意味は、Lvアップでのステータス上昇量が変わるからだそうだ。

 パワーレベリングしても、大した戦力にはならない。努力しないとただの雑魚。

 幽希にうってつけの世界である。


 後は、成長と共にステータスも増加するのだが、その時の上昇量も変わってくるらしい。

 マッチョなのに、筋力が低いということはないようだ。


「まずは、基本である9種の斬撃を覚えてもらう」


 そう言って自分も木剣を持つと、幽希の前で振り上げる。幽希も見逃さないように集中。


「上から振り下ろす――」


 説明しながら、順番にやってくれる。

 一つ一つの太刀筋は、素人の幽希が見ても綺麗だと思う程。セツナの鋭い剣は美しいが、これで極めていないという事は、上も存在するのだろう。恐ろしい。


「最後に、突きだ」


 最後の突きだけは、よく見えなかった。

 引いた腕がブレたと思えば、既に突き出した後。


「一応覚えました。で、これをやればいいんですね?」


「ああ、最初はね。ずっとこれだけやっていても仕方ないから、大体……数ヶ月程経ったら次に行こうか」


 その後に、「まあ、その辺はユウキ君の上達具合で変わるけど」と付け加えるセツナ。


「じゃあ早速……」


 唐竹。振り下ろした剣がピタリと止められない。


 逆風。下から上へ切り上げるも、その速度はゆっくりだ。


 袈裟。左肩から右脇へ。勢い余って地面にサクッ。


 逆袈裟。右肩から左脇へ。止められたが、今度は意識し過ぎて遅くなっている。


 右薙ぎ。右から左へ水平に。思っていたより、水平に保つのは疲れる。


 左薙ぎ。左から右へ水平に。剣の先が下がって来た。


 左切り上げと右切り上げは、袈裟、逆袈裟を反対にするのだが、逆風と同じくゆっくり。


「う、腕が痛い……」


「あはは。まあ、初めてだからしょうがないね。ちゃんと覚えてるみたいだから、それを繰り返す。」


 木剣でも、自分と同じくらいの長さの物であれば、筋力が足らないのも当たり前。

 さらに、重力に逆らう動きで剣を振ったせいで、腕が悲鳴をあげている。


 それでも、セツナに言われた通り、繰り返す。


(痛い………けど、もっと成長出来る)


 2回、3回、4回、5回………


 何度も続けるうちに、全身が重くなってきた。だが、どんなに体が訴えようともやめない。何十回でも、何百回でも。

 痛くても、努力が出来る。成長出来る。ステータスのお陰で、次の日には完治する。気にする必要は無い。


 さっき目に焼き付けたセツナの動きを思い出す。

 腕だけではなく、全体で剣を振るわなければ。

 当然、ぎこちなくはなったが、1回毎に最適な動きへと修正する。やはり筋力が足りない。


 もう少し、自分に合ったものに。


 セツナの動きはセツナの体に合わせて生み出されたものであり、幽希に最適な動きはまた別にあるのだ。


 無才だった前世でも努力をやめなかった幽希は、スポーツについてもかなり研究していた。

 その中で、他人を真似ても自分には無理だと分かったのだ。

 細い事は省くが、構造に個人差がある為に、基礎の練習でも動きが少し変わってくる。

 なら、自分に最適な動きを見つけるしかない。


 残念ながら、前世では市大会で優勝する程度だったが、才能値があるこの世界では違う。


「ふふ、はははっ」


 才能リストの中には、『模倣』というものがある。

 全てが1である幽希は、天才ではないが、無才ではない。いや、天才になる事は出来る。


 模倣し、最適化する。

 簡単ではないが、出来る事なら幽希はやる。


 とはいえ、何百回もやれば限界は来る。

 段々フラフラしてきた幽希が、後ろ向きに倒れた。しかし、気分は清々しい。

 昨日まで外に出られなかった鬱憤も晴らしていたのかもしれない。


 と、そこに2人が駆け寄ってくる。


「君には驚きだよ。限界まで泣き言1つ言わずに振り続けた。しかも、笑いながらね。普通は飽きた、辛い、実戦がいい。そんな事を言うんだけど……」


「……はぁ、はぁ……まあ、俺、こういうの、好き、なんで」


「ゆーくん、大丈夫……?」


「ああ。……はぁ……でも、もう少し、このまま……」


 幽希も、かなり無茶をしていた自覚はあったが、確実に成長している実感が持てて興奮していたのだ。

 全身が痛くて、自分でもどうやって動いていたのか分からないくらいである。


「ちなみに、どのくらいやってました?」


 息が整ってきた所で、セツナにそう聞いた。


「1時間半くらいだね」


「えっ?そんなに経ってました?……ルナはよく待ってられたなぁ」


「うん。いい子にしてたよ?」


 ルナは歳の割に我慢の出来る子供だ。

 空気を読める、4歳児。


「ルナは偉いな……よしよし」


「えへへー」


 なお、時間は地球と同じで24時間。12ヶ月、月30日と、そこだけ適当な感じに変わっている。

 魔道具の時計もある。

 始めたのが9時過ぎだったので、今は10時半程だ。


「動けるかい?せめてベッドで休もう」


「まあ、何とか歩けます」


 心配そうなセツナ。

 先程は幽希を止めようとも思ったのだが、不敵な笑みを浮かべ、1回毎に上達するのを見て笑ってしまった。


 動きを覚えて、体全体を使う事に気づけば今回は十分だと思っていた。

 なのに幽希は、その先にある自分の剣を探し始めている。これは、自分が思っていたよりも、期待出来るかもしれない。


 そんな事を考えていたせいで、倒れるまで見ているだけしかできなかったのだ。


「お昼まで休んでていいよ。」


「分かりました。午後はユニさんの方もありますから、しっかり休んでおきます。」


「じゃあルナもー!」


 別に邪魔はしない子なので、一緒に寝るのは問題ない。

 だが、幽希はこう思う。この子は本当に4歳児かと。

一応言っておきましょう。

幽希はMではなくSであると。

はい、どうでもいいですよね。

次回は、ユニ師匠の魔道具講座です。

あと、もう1人の娘も出します。

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