5話『甘えん坊なルナ』
今回は、ルナがメインになってます。
可愛くなってるかなぁ。
――ザァー………ドォン!!
セツナの家に入ってから数時間。どしゃ降りの雨に加え、近くに雷まで落ちたようだ。
「ひゃう!?ゆーくん!!」
「よしよし、大丈夫だからなー。」
雷の音に怯えたルナが幽希に抱きついた。その様子は、友達というより、兄妹の方がしっくりくる。
「雨が降るかもとは思っていたけど、これは予想外だね。態々この雨の中を歩いて帰るくらいなら、泊まっていったらどうだい?シェドには私が連絡するからさ。」
偶に聞こえてくる雷の音で怯えるルナを撫でながら、少し考えてみる幽希。
「でも、迷惑をおかけする訳には――」
「ゆーくん、帰っちゃうの?」
悪いと思って幽希が断ろうとしたのだが、途中でルナに遮られた。そして、ユニも賛成らしい。
「いいじゃない、泊まっていったら?夕食も一人分増えたって作る手間は変わらないし。」
ユニがそう言うと、「そうそう」なんて頷いているセツナ。しかし、「作るのは私なんだけど?」とつっこまれて頭を掻いている。
ここまで言われたら、断る方が失礼だろう。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
「ゆーくん、お泊まり?……やったー!」
ルナが首を傾げて聞いてきたので、頷く幽希。抱きつかれたまま大きな声を出されたせいで、かなりのダメージだ。
「そういえば、2人共濡れてなかったかい?」
「あ、ホントね。お風呂沸かしてくるから入って来なさい。」
確かに、外で鬼ごっこをしている時に突然雨に降られたので、結構濡れている。最初からどしゃ降りだと、そういう事にもなるだろう。
そういえば、鬼ごっこだが、中々馬鹿に出来なかった。敏捷が同じくらいだったのでいい勝負にはなったのだが、その速度は地球の子供より速かった。100mなら14秒で行けるかもしれない。
そして、全力で走ったのもあって、幽希のステータスは少し伸びた。ルナと遊ぶのも十分いい運動になる。
それはともかく、お風呂の順番を考える幽希。
「それなら、ルナを先に入れた方が良いですよね。風邪を引いたら困りますし。」
「そう?じゃあ、セツナ。入れてき――」
「やだ!」
言い終わる前に拒否したルナに、セツナが話しかける。
「どうしたんだい?ルナ」
「ゆーくんも一緒!」
「……随分懐いたわね。まあ、精神的にも歳上だし、頼れるお兄ちゃんって所かしら?」
「いや、でも、さすがにお風呂は……」
いくら子供とはいえ、女の子であり、更に言うなら美幼女なルナだ。幽希的には犯罪臭がする。別々に入りたい所だ。
しかし、そうは問屋が卸さない。
「そう言っても、ルナが離れないのだし、それしかないと思うよ。そのままでいても、2人が風邪を引いてしまうんじゃないかい?」
一見普通の事を言っているように感じるが、子供を引き剥がすのは難しくはないだろう。つまり、面白がっているだけなのだ。
「分かりましたよ。やればいいんでしょう?」
「あ、そうだ。洗おうとしても嫌がらないはずだけど、ちゃんとやってあげて。」
幽希の味方は居なかった。
当然、風呂に入るのだから体も洗わなければならない。だが、4歳の子供に出来るかと言われれば、難しいだろう。それを幽希がやるのだ。
「それじゃ、すぐに沸かして来るわね。」
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結局、仲良く2人で風呂に向かった。
今は、背を向けて座るルナの髪を洗っている所だ。
「痒い所はあるか?」
「ううん、だいじょーぶ!」
耳を触る度に反応するのは気になったが、しっかり洗う幽希。手触りのいい髪なので、洗うのも苦にならない。
「次は、体……」
本当に、良いのだろうか。
そう悩む幽希に更なる試練が。
「ゴシゴシするのいや!手がいい!」
ルナ曰く、「擦られると痛い」との事。垢擦りを触ってみると、かなり硬めなので、女性が使うのには適していないだろう。
実際、ルナとユニは手で洗っている。
「ちょっと待て、俺の手で……?」
「ゆーくん、洗ってー?」
こうなればやるしかない。
ゆっくりと深呼吸をして、気合いを入れる。
「ふー……よし。」
まずは、首周りから。
「んぅ……ふふっ……んっ……」
どうやらくすぐったいようで、頻繁に声が聞こえる。その度に、「ロリコンじゃない」と自分に言い聞かせながら進めて行く。
首が終われば肩、腕、脇、背中、尻尾。
脇も弱く、体をくねくねさせていたが、無事に終了。
尻尾は……更に弱かったらしい。
見た目は太く見えるが、実際には毛が殆ど。
本体も洗うべく軽く握ったのだが、
「ゆー、くん……ん、ふぅ」
軽く擦っているだけなのに、ビクビクとしているせいで、悪い事をしている気がする。
だが、声は聞こえないものとしてガッツリ洗った。
終わった後も息が乱れていたが、とりあえずは問題ない。
そこで一旦、止まってしまう。
「どう、したの?」
洗うのをやめた幽希を振り返るルナ。
残っているのは、前と下半身。
どう足掻いてもアウトではないだろうか。
「いや、子供を洗うだけだ。見た目なんて関係ない。」
「?そっち向く?」
その言葉に慌てて止めようとする幽希だが、気づいてしまった。
足を洗うには、こちらに前を向けてもらわなければ不可能であると。
洗うのが大人であれば、後ろからでも届いただろうが、今の幽希は6歳。圧倒的に腕が短い。
そして、ルナがこちらを向いた。
「よし、速攻で終わらせる!」
素早く足を洗い、感触は出来るだけ気にしないようにする。そして、足が終わるとすぐに後ろを向いてもらった。
その後は前を洗い、お湯で流す。
「先に入ってな。」
そう言って自分の体を洗い終えると、幽希もお湯に浸かる。ミッションコンプリートだ。
「あったかい……」
「お湯なのか、俺の事なのか……」
幽希の膝の間に収まるルナ。
先程は動揺していた幽希だが、あんな事さえなければそこまで慌てる必要もなかった。
「そういえば、いつもはお父さんとお母さんに洗ってもらうのか?」
「うん。でも、パパは頭と背中だけ。」
「……え?えっと、じゃあ何で俺には全部やらせたんだ?」
「ゆーくんだから!」
特に意味は無い。
そういう風に受け取っておく幽希。
というか、自分で出来るならそう言って欲しい。
「また、いっしょに入ろ?」
「ああ、うん、今度な。」
今回みたいな事はそうそうないはずなので、これが最後だろうとは思うが、余計な事は言わない。
出る時はささっと拭いて、服を着る。
「お帰り。髪を乾かして来なさい、すぐに出来るから。」
「温風機ならそっちにあるよ。」
「はい。ありがとうございます。」
温風機と呼ばれるドライヤーもどき。
その名前だと別の物をイメージするだろうが、この世界での温風機はドライヤーなのである。
「ゆーくん、乾かしてー!」
目の前には温ぷ……ドライヤーを両手で持って幽希に差し出すルナの姿が。
幽希がやるのは当然の事らしい。
タオルで拭いて、乾かす時間を減らす。
ドライヤーを使うが、魔力で動いているので機械音はしない。
「よし、こんなもんだろ。」
「ありがとー!」
ふわさらな髪が出来上がった。
さて、自分の髪も乾かそうか。そう思っていた幽希だが、ドライヤーを取られた。
「今度は私がやる!」
じゃあ、最初から自分でやれば良かったのでは?なんて考えてはいけない。
「髪さらさらー」
「そうか?イマイチ分からないけど。」
他人の髪を触ったことは、数える程度しかない。
なので、比較する事も出来ないのだ。
そして、髪が乾かし終わったすぐ後にユニの声が聞こえてくる。準備が出来たとの事だ。
椅子に座り、いただきますの挨拶は無しで食事が始まる。
「お風呂、どうだったの? 」
「気持ちよかったですよ。」
ユニには、「そういうことじゃない」と言われたが、曖昧な返事をしておく。
しかし、ルナに聞けば1発だ。
「えっとね、ゆーくんに全部洗ってもらった!」
その言葉を聞いたユニは、同情の眼差しを向けてくる。
「ああ、そういう……なんというか、ユウキ、お疲れ様。」
「私の時は、頭と背中しか洗わせてくれないんだけどなぁ。本当に、ユウキ君への懐きようが凄まじいね。」
セツナの言う通り、ルナの懐き方は異常だ。
これは、別に幽希が何かをした訳ではない。ただ、昔から動物に好かれやすいだけだ。
そして、妖狐……というより、何かしらの動物の要素がある種族は、幼少期の時だけ動物の部分が強く出る。
それ故に、幽希がどれだけ優しく、どれだけ悪意が無いのか。それをルナは、知らない内に理解していた。
「ルナ、ユウキ君の事は好きかい?」
「うん!大好き!」
「そうか、俺もルナの事は好きだぞ。」
見事なくらいのルナの即答である。
しかし、子供の好きは、友達に言ったり親に言うものであり、恋愛感情で無いことは幽希も分かっている。
その為、慌てる事も無く自然に返せる。
だが、ユニは少しだけ気になっている事がある。ナイフを動かす手を止めて、料理を幽希に切ってもらうルナを見た。
「明日、大丈夫かしら……」
それは、幽希が帰っても平気なのかという事。
懐いているのはいい事だが、ここまで来ると、ルナが駄々を捏ねて泣いてしまうかもしれない。
「あーん!」
「えぇ?仕方ないな……ほら、あーん。」
幽希に食べさせてもらうルナを見て、こう思う。いつもより甘えん坊になっているのはどういう事だ、と。
そして……
「ゆーくんも、お口開けて」
「あ、あーん……」
後10年もすれば、お義母さんと呼ばれる日が来るかもしれない、と。
幸い、セツナからのお墨付きなので心配は要らないのだ。
――――――――――切り取り線――――――――――
「手伝ってくれなくても良かったのよ?」
「いえ、何もしないというのは悪いですから。」
現在、幽希とユニの2人は後片付けをしている。
ユニからすれば、客人で、弟子でもある幽希にはゆっくりしてもらうつもりだったのだ。
まあ、幽希が手伝うと言ってしまったので、こうなった訳だが。
「そういえば、寝る時ってどうすればいいですか?」
「空いてる部屋にベッドがあるわ。それより、問題はルナの方よ。多分、また同じ事になるんじゃないかしら?」
恐らく、一緒がいい!と言われるだろう。
「いや、さすがにそんな事は……」
否定出来ない。
寝る時だけは違う、なんて事はないだろう。
そして、就寝前。
おやすみなさいと言って部屋に行こうとする幽希だが、ルナは何も言わない。
普通にセツナ達と寝るのかもしれないと、幽希が後ろを振り返れば、そこにはルナがいた。
「?」
幽希が振り返ったことに対して首を傾げるのみで、一緒に寝る事は当たり前らしい。
「うん、もう諦めよう。」
ドアを開けて、そのままベッドに入る。
それに続いてルナも入り込む。
大きさは、大人が2人入っても余裕がある程。
「なのに、何でくっ付く?」
「なんとなくー?」
こうして、幽希は眠る。
明日は、晴れるだろうか?なんて、考えながら。
子供って、何故かベッタリになることありません?自分経験があります。
ちなみに、2人の歳は30前くらいです。一応。




