7話『錬成魔法(数十分のみ)』
時間が足りない……結構更新遅くなります。
「可愛いなぁ……」
そう呟く少女は、幽希の頭を撫でている。
それによって目を覚まし、見つめ合う2人。
ボーッと少女を見た後、誰だこの子は?と思ったのだが、すぐに分かった。特徴的な耳と尻尾がある為、セツナとユニの娘に間違いない。
髪は、ユニが濃い赤であるのに対して、この少女は明るい赤だ。活発系美少女だろうか。
「えっと、何をしてるんだ?」
状況を呑み込めない幽希は質問してみたが、少女はそれを質問で返して来た。
「あ、ごめん、起こしちゃったかな?」
「いや、それはいいんだけどさ。」
幽希が自分の頭の後ろをポンポンと叩く。
そこにあるのは、少女の太腿。
分からないフリをしたかったところだが、少女の位置的に、膝枕しかなかった。
これはどういうことだ?と目を向ける。
「その……可愛くてつい?」
「……なんだそれ。足は痺れてないのか?」
何がついなのかは分からないが、とりあえず心配する幽希。但し、照れて目を逸らしながらである。
「大丈夫。あ、嫌だった?」
「別にそんな事はないけど……」
そう言うと、少女は微笑んで頭を撫で始めた。
少しの沈黙を挟んで、幽希が少女の事を聞いた。
「私はアニマ。ルナのお姉ちゃんで、10歳だから、ユウキ君のお姉ちゃんでもある。いくらでも甘えて良いからね!」
むしろ甘えろ!というニュアンスを感じる。
そして、アニマという名前に吹き出しそうだったが、辛うじて堪える。怪しまれてもいないようだ。
アニマというのは、精神医学の方なのか、ラテン語での魂の事なのか。
あるいは、この世界にそういう名前の何かがあるのか。凄く気になるところではある。
「よろしく、アニマ。」
「……ねえ、ユウキ君って大人っぽくない?」
先程、「ユウキ君のお姉ちゃん」と言ったのをスルーされたアニマが変な事を言い出す。
その言い方からすると、幽希が転生者であることは知らされていないようだ。
とはいえ、今更敬語にしても変だろう。
「大人っぽくは無いと思うけどな」
「ううん。落ち着いてるし、包んでくれそう」
包容力があると言いたいのだろうか。
恐らく、子供だからそう感じるのだろうと納得する幽希。
「そういえば、どうしてここに居たんだ?」
それは、今幽希が寝ている部屋に入っていたことについてだ。アニマは、考え込む。
そして、ようやく思い出した。
「あっ」
だかしかし……
――ガチャ
「アニマ?起こしてきてって頼んだでしょ?」
「ご、ごめんなさ〜い……」
何となく予想は出来ていたが、案の定だ。
そして、その話し声でルナも起きた。
「うーん?……あ、お姉ちゃん!」
「ただいまっ」
「おかえり!」
笑顔で抱き合っている様子からも分かるが、随分と仲のいい姉妹だ。微笑ましい。
2人を見ていると、いつの間にか来ていたセツナが、幽希の隣で座っている。
「ユウキ君には話してなかったと思うけど、もう1人の娘だ。昨日は、君と同じような経緯で友達の家に泊まっていてね」
「あー、なるほど。それにしても、俺の顔ってそこそこ目つきが悪いはずなんですけど、可愛いってどういうことですかね?」
幽希の目つきが悪いのは、前世のものだ。
家で鏡を見つけた時、顔が引きつってしまった。何故なら、前世と全く同じ顔だったからである。
何か理由があるのかは分からないが、態々同じ顔にしなくともいいだろうと嘆いた幽希。
「多分、寝てる時は分からないからさ」
「……納得です」
寝てる時は可愛い。
起きてる間は目つきが悪い。
大人っぽいというのは、それだったのだろうか?幽希は出来れば違うと信じたい。
前世の両親は、美形だった為、幽希も目以外ならそこそこだと自覚している。少しモテるくらいだと。
扉の前で見ていたユニもこちらに来て、幽希の体調を気にしている。すっかり忘れていた。
「それでユウキ、体はもう平気?」
「はい、痛みも無くなりました」
「うん?ユウキ君ってば、怪我でもしてた?」
それを聞きつけたアニマが、心配そうに見てくるので、ただの筋肉痛だと説明しておいた。
「そう言うと軽く聞こえるなぁ……」
「でも、実際そうですし。それで、ユニさん。起こしに来たんですよね?」
「ええ、お昼は食べるでしょ?後、あれがただの筋肉痛だって言うなら、ユウキを人間とは認められないわね」
そう言われて初めて空腹だと気づいた。そして、後半は聞こえなかった事にする。
すると、ぐぅ〜っとお腹がなってしまった。
「食べます。行きましょう、ほら」
恥ずかしかった幽希は、若干早口気味に言った。
アニマがニヤニヤしているが、完全無視。
食事中は、幽希が箸を使っているのを見たアニマが真似して、出来ないのを悔しがったり、出来るルナが幽希とお揃いなのを喜んだりしていた。
さらに進んで、後片付けが終了。
「今度は私の番ね」
「お願いします、師匠」
教えてもらう間は、師匠と呼ぶ事にしている。
それ以外は、ユニさん。メリハリは重要だ。
幽希はセツナも師匠と呼ぶつもりだったのだが、本人に駄目だと言われた。
別に、幽希を弟子にしたくないという話ではなく、そういう堅苦しいのが好きじゃないとの事。
「そうね、まずは……魔道具についてどのくらい知ってる?」
そう言われても、あまり知らない。
「えっと……魔法が使えなくても、魔力を流すだけで効果が得られるもの、くらいです」
「魔法が使えなくても効果が得られるのは間違いないわね。でも、魔力を流す必要がない物もあるの。例えば、内蔵魔力になっていて使い捨てだったり、空気中の魔素を吸収したりよ」
それに幽希は驚いたが、
「ま、空気中の魔素を吸収っていうのは、かなり大掛かりなものにしか無いけどね?時間もかかるし」
そう言って苦笑するユニ。
「後は、ゴーレムなんかも魔道具ね。知ってる?」
「名前しか知らないですけど、お金がかかるのだけは間違いないと思います」
魔法で簡単に作れるなんてありえない。
「ええ、それも無駄にね。中途半端な素材で作ってもすぐに壊されるし、核も作るのが面倒なの。まあ、そのうち教えてあげるから楽しみにしてなさい」
ゴーレムの作り方を教えて貰えると聞いて興奮している幽希だが、表情には出さない。
「分かりました、楽しみにしてます」
「よろしい。それじゃあ、錬成魔法のやり方を教える……と言いたいところだけど、その前に、魔法陣の事は教えて貰った?」
「見せては貰えましたけど、6歳までは教えないって言われてたんですよね」
つまり、今日からは問題ないという事だ。
「そう……今回は練習だから、細かい事は分からなくてもいいわ。真似をしなさい」
差し出された手には、赤い魔法陣がある。
しかし、そう言われてもやり方を知らない。
「どうやるんですか?」
「魔力でこの魔法陣を形作ればいいわ。簡単でしょ?」
いや、知らん。等とは思っていても口には出来ない幽希。何はともあれ、試してみる。
やってみれば、意外と出来るもので、色だけ黒くなった魔法陣が出来上がった。
しかし、ユニは不服そうにこう言う。
「……ちょっと、なんで出来るのよ?」
「え?いや、やれって……」
「言ったわよ。でもね、そこは苦戦して私が手伝ったりするところでしょう!」
「えー……」
師匠は理不尽であった。
ユニとしては、上手くできない幽希にドヤ顔で教えたかったのである。本当は難しいそれを、あっさりやって見せた幽希もおかしいが。
「そういえば、魔力関係のステータスが高かったのよね……魔力操作の練習とかしてる?」
「毎日やってます。お陰で……いや、何でもありません」
さすがに、「もう才能値が5です」なんて言えない。そのうち、自分の事を教えるつもりではあるが。
「何よ?……まあ、いいわ。毎日やってるなら納得ね」
言うつもりが無いのを理解したユニ。
「変な事を言って悪かったわ。それが出来るなら、この鉄を使ってやってみましょう。こうやって魔法陣を鉄の上にして、変えたい形をイメージしながら魔力を流すの」
実際にユニがやってみると、魔力光を放ちながら、鉄が形を変えていく。フォークだろうか。
「金属が柔らかそうに見えますね」
「私もそう思うわ。……はい、ユウキもやってみなさい」
出来上がったフォークをそのまま渡されたので、ユニと同じようにやっていく。
「それにしても、ユウキの魔力は真っ黒ね」
「そうですね。これって魔法陣を作ると色が付きますけど、何か意味はあるんでしょうか?」
幽希が首を傾げる。
「確か、色によって契約出来る精霊が違うはずよ。まあ、学院に通えば嫌でも習う事ね」
「本にもそんな事が書いてあったような」
結構前の事だったせいで、忘れてしまったらしい。
「それと、話しながらとんでもない物作らないで貰える?というか、もうそんなの作れる訳?」
会話しながらも作業は続けていた。
その結果出来上がった物は、
「ルナっぽく出来てます?覚えてない部分は適当ですけど。」
「似すぎよ!」
ルナのフィギュアだ。しかも、かなりの力作である。
そんな事をしていると、ドアが勢いよく開いた。現れたのは、ちびっ子2人。
「わー、ルナそっくりだね。ユウキ君が作ったの?」
「すごーい!ゆーくん天才!」
言わずもがな、アニマとルナが乱入してきた。
「全く……邪魔しちゃ駄目って言ったでしょう……」
「パパとママばっかりゆーくんを独り占めしてる!私も遊びたい!ゆーくんもそーだよねっ?」
「えーっと……」
助けを求めるようにユニを見る幽希だが、肩を竦めて首を横に振っているだけだ。
つまり、諦めろ。ということである。
ここで断れば宥めるのに時間がかかり、頷いてもここで終わりになるだろう。
どちらにしても、続行不可だ。
「そうだな、一緒に遊ぶか!」
「やったー!」
「……ごめんね、ユウキ君」
残念な事に殆ど時間が経っていない。
だが、いつでも出来るのだから、問題はないだろう。
「ま、子供は元気に遊ばないとな」
「ゆーくん、早く行こう?」
それに、遊ぶだけでもステータスは上がるのだから、無駄にはならないのだ。幽希だけは。
次回は街にでも出かけようかなって。
アニマをヒロインにするかは決めていませんよ?




