2話『セリナの魔法』
ステータス要素はまだ出ませんよ?
それと、理を統べる転生者の方を更新出来なくてすいません。
明後日までにはあっちも更新しますので……
あの日から2週間、ずっと足や手を鍛え続けた。
とはいえ、赤ん坊の体では大した事は出来ず、横になったまま足を上下させたり、腕を持ち上げたりしていた。
その結果……
「ユウキ、凄いわ〜!もう歩けるなんて……きっとこの子は天才ね!」
「つっても全部1なんだろ?天才は言い過ぎだと思うがな。……まあ、歩き始めるのは早いか。」
リビングにて親バカになっているセリナと、冷静に指摘しつつも、笑っているシェド。
そう。見事、歩く事に成功している。
本当は、昨日の夜には歩けたのだが、上手くバランスがとれず、フラフラしていた。
なので、歩く練習をして今日がお披露目になったのだ。
才能値というのは、高くとも爆発的に成長出来る訳ではないが、成長速度や成長限界が遥かに上がる。
それに加えて、歩く事を意識して鍛えていたのだ。起きている間の7割も。
(すること無かったからなー。でも、これで本格的に行動できる!魔法とかもあるみたいだし)
常に鍛えるのは流石に無理があった為、休憩している時はリストを眺めていたりした。
そこには、『~魔法』という項目があり、関連するものに『魔力の器』というのがあった。
パッと見分かりづらいかもしれないが、魔力の最大値が増えやすくなるものだ。
ついでに、『魔力操作』というものがあったのだが、魔力の使い方自体を知らない為、今のところ何も出来なかった。
そして、魔法について聞くには、言葉を話せなければいけない。
そんな訳で、
「天才じゃない、でも、頑張った。」
「「え゛」」
普通に喋れるようになった。
……さすがに才能リストばかり眺めていても飽きるのだ。で、別の事をしたいと考えていた時、ふと思いついた事があった。
それは、『身体操作』『筋力強化』なら口にも効果があるのではないか、というもの。
鍛え始めて3日でこれを思いつき、2人の居ない時に発声練習をしていた。
「驚かせてごめん。でも、2人と話したかったんだ。」
(主に魔法についてだけど。)
そんな心の声は押し留めて、なるべく子供らしくニッコリ笑う。
「か、可愛い~!」
「ありがと。」
かなり短い言葉で話す幽希。先程のような長文はまだ難しいのだ。そして、「いや、目が怖ぇよ……」という言葉が聞こえた気もするが、華麗にスルー。
(さて、一応確認しておこう)
「魔法、使える?」
「私が?……そうね、結構自信あるわ。」
「上級まで使えるからな。セリナは凄いぞ?」
(……これはラッキーだな。というか、上級ってなんだ?どう別れてるのか気になる。)
「じょうきゅうって何?」
無垢な子供を演じながら、魔法について聞いてみる。
「魔法はね、初級、下級、中級、上級、超級、超越に別れてて、初級は練習用の……って、そんな事言っても分からないわよね。」
「うん、分かんない。」
(ごめんなさい。本当はよく分かりました。でも、超越だけ級がつかないのは不思議だな。)
「それで、魔法がどうしたの?見たい?」
「教えて欲しい」
「分かったわ。じゃあ、まずは魔力を感じましょうか。」
一連のやり取りを見ていたシェドはこう思う。「魔法の事はいつ知ったんだよ!」と。
普通なら疑問に思うはずだが、親バカスイッチの入ったセリナには関係ない。
「私がユウキの魔力を動かすから、流れを感じて。感じ取れたら、ユウキも動かすのよ。」
そういって幽希の手に触れると、魔力を動かし始める。
(血流みたいだな。いや、実際に感じたことはないから、イメージだけど。)
自分でもやろうとする幽希だが、そう簡単には出来ない。元々魔力の無い世界から来たのだから。
それを続けること20分。
ようやく、成果が現れた。
「うー………あっ」
皺を寄せて唸っていた幽希が、少しだけ嬉しそうな顔をする。そして、セリナは幽希に対して驚きながらも微笑む。
「ちょっとだけ動かせたわね。凄いわ……!」
「おいおい、マジか?この短時間で?」
少しだけとはいえ、赤ん坊が短時間で出来る事ではない。この20分の間、幽希が全神経を集中していたからこその成果だ。
ちなみに、ポイントを振って効率良くやろうとしたのだが、それは出来なかった。
実際に試した時、これが出てきたせいで。
【魔力操作の習熟度が足りません。0/180】
この数字については単位が分からない為、放置している。
だが、この数字を上げればいいのは分かった。
次に、このシステムが嫌だと思う人は多いはず。なぜなら、上げたとしてもスキルを覚えるわけでは無いのだ。更に言うなら、これはゲームではなく現実である。
しかし、一部の変態には当てはまらない。
そう、幽希のように、「しゃあ!やってやるぜ!」という感じになる人もいるのだ。
「もういっかい。」
「まだやるの?疲れたと思うんだけど……」
そう言いつつも、もう一度幽希の魔力を動かし始めたセリナ。少し心配そうだ。
(コツは掴んだ……あとは、それを忘れないように繰り返す!)
ゆっくりと、しかし、確かに自分の意思で魔力を動かした。
「ど、どうなんだ?」
幽希の真剣な顔を見て、1人だけどうなっているのか分からないシェドが尋ねる。
「これなら、後は1人でも練習出来るわね……」
顔には「さすが私の息子」と、書いてある。
それを見たシェドは呆れ顔だが、親バカにはそんなもの通じない。
「……寝る……」
「あ、疲れたみたい。魔力は消費してないけど、最初のうちは疲れるもの。」
(体は動かしてないのに……魔力って一体……)
セリナは素早く抱っこして連れていこうとするが、既に限界だった。
「おや、すみ」
「ええ、おやすみなさい。」
そして、1人残されたシェド。
凄く微妙な顔になっているが、それを気にしてくれる人は幽希の世話をしている。
「俺、何もしてやれてない気が……」
やはり、聞いていた者は誰もいなかった。
――――――――――切り取り線――――――――――
魔力操作を覚えた次の日。
「今日は魔法を使ってみる?」
「やりたい。」
残念ながらシェドは仕事で不在だが、教えてもらう分にはセリナに頼める。
(父さんの仕事……何なんだ?筋肉は凄いから、肉体労働なのは間違いないけど。)
そんな事を考えながら、セリナと共に移動する。向かう先は家の庭だ。
「お庭が広くて助かるわね〜。ユウキを外に出すのは早すぎるもの。」
庭だけではない。屋敷のように部屋が多く、広いのだ。そして綺麗。
幽希の推測は、どちらかが貴族なのか、シェドが大金を稼いでいるか。
(まあ、そのうち聞けばいいか)
「さ、まずは私がお手本になるから、よく見ててねー?」
「うん。」
返事を聞くと、幽希ほ目の前に指を立てて、詠唱を始める。
「我が指先に、灯火を……トーチ。」
――ボッ
すると、ライターで付けた時と同じ大きさの火が。これを見た幽希の目は、本当の子供のようになっている。
(火は小さいけど、魔法だ!でも、随分詠唱が短いんだな。)
「練習に使う初級魔法なんだけど、普通はこれで魔力の動かし方を覚えるのよ。」
そうしなかったのは、セリナがやれば長く感じられるし、魔力を消費しないからだ。
それなら、皆その方法でやればいいと思うかもしれないが、それは不可能に近い。
魔力というものは本来、体内のものを動かすので精一杯だ。セリナが優秀だからこの方法を選べただけである。
「それじゃ、やってみましょう?」
「うん。我が指先に、灯火を……トーチ!」
初魔法という事で少し気合を入れて詠唱した幽希だが、出てきたのは今にも消えそうな火。
思わず苦笑いしてしまう幽希に対して、セリナは喜んでくれた。
「ちゃんと使えて良かったわね!」
「そうだね。」
「次は下級を教えてあげたいところなんだけど、お勉強しなきゃ出来ないのよね……」
実は、詠唱で使えるのは初級のみなのだ。
難しい魔法程、詠唱が長くなってしまう為に、下級からは別の方法をとる。
しかし、幽希はまだ0歳。
親バカの補正で流されているが、勉強まで出来てしまえばおかしいと思われるだろう。
「じゃあ、今度。」
「分かったわ、もう少し大きくなったら。……多分、体がだるくなってるでしょう?魔力が少なくなるとそうなるの。忘れないでね。」
確かに、幽希は先程から体がだるいと思っていた。そして、少なくなっただけでこれなら、無くなったらどうなるのか気になってもいる。
「でも、お手本は見せましょうか。元々、その為にお庭まで来たの。」
そう言うと、被害を減らすために斜め上へと手を向ける。
さすがに、トーチのような弱い魔法のために外へ出た訳ではないらしい。
そこで、セリナの手から魔法陣が現れた。すると、魔法を発動せずに説明を始める。
なお、分かりやすく噛み砕き過ぎて長かった為、まとめたものを伝える。
魔法陣にした理由は3つ。
1つは、先程の通り詠唱が長すぎる事。
2つ目は、アレンジがしやすい事。
そして3つ目は――
「魔法陣を消さなければ、連続で発動出来ちゃうのよ。こんな風にね〜。」
すると、光を放つ魔法陣から炎の槍が5本続けて放たれた。
雲を突き抜けたりはしなかったが、かなり上空まで飛んでいた。
「あ、私ったら。ユウキはまだ分からないのに、ついやっちゃったわー……」
(ああ、魔法の事になるとスイッチが入る人なんだ。一応母親なんだけど可愛いな。)
セリナの年齢は19なので、照れている姿も可愛らしいのだ。
ちなみに、シェドは32歳というそこそこ歳が離れている夫婦なのだが、セリナが大人っぽい雰囲気である為に、幽希は全く違和感を感じない。
と、そこで突然、大きな声が聞こえてくる。
「セリナさん!何かあったんですかー?」
目を向けた居たのは、玄関から様子を伺う男性。かなり身長が高い。
「え?狐?」
「おや?君は……」
訝しげな表情をする男性。
しかし、今はそれどころではない。
(なんだその耳は!本物か?本物なのか!?)
頭の上にある2つ耳は、どう見ても偽物ではない。それに、普通ならある場所に、耳が無かったのだ。
「すいません、セツナさん。さっきのは、ただの試し打ちなんです……」
「あー、そういう事でしたか。私はてっきり飛行型の魔物が出たのかと……あはは。」
その言葉にセリナは苦笑い。「そんな事あるわけない」と、そう言いたげな表情である。
恐らく、セツナは天然だろう。
「そういえば、その子は養子ですか?」
「あ、いえ。この前、森で拾った子なんです。もう歩けますし、言葉も話せるんですよ?」
普通ならありえないと否定されるような事を言われたが、セツナは少し驚いただけで納得顔になる。
「凄いですね。……ふむ、耳、触るかい?」
「えっと、はい!」
チラッとセリナを見た幽希だが、頷いてもらえたので素直に返事をする。
すると、セツナは幽希のすぐ側に来て触らせてくれたのだが、こんな事を耳打ちされる。
「君は、転生者かい?」
「っ!?……どうして、分かったんですか?」
その質問に驚いた幽希が、更に質問で返す。
セツナは質問をしたが、確信を持って聞いている事が何となく分かった。
そして、それならば、誤魔化しても無駄だろうと思ったのだ。
「そうだね、その事も含めて、今度ウチで話してみないかい?」
(どんな意図があるんだ?……でも、悪い人には見えないし……)
「分かりました。外に出る許可が貰えたら、伺います。」
「ああ。楽しみにしてるよ。」
幽希を撫でて、ニコッと笑うセツナ。
そのあとは、普通に耳を触らせてもらった。
(居るだろうとは思っていたけど、実際に見たら驚くもんだな。ほうほう、髪とは少しだけ毛の質が違うのか……)
そんな幽希の様子を見ていたセリナは、頬に手を当てて困り顔をしている。
「あらあら、私よりもセツナさんに懐いてしまわないかしら……名前も似てるし……」
ちなみに、セツナは耳が良い為、その呟きが聞こえていた。
……セリナの言葉に苦笑したのは言うまでもないだろう。
セリナとセツナ。
名前似てるなーと思ったんですけど、あえてそうしました。
魔法陣とかの設定は、少しだけ考えてあります。




