人工魔物生成実験
翌朝。
起きてみるとそこには惨状が広がっていた。
大量のオオカミやゴブリンの死体が広場の一角に積み上げられ、あたり一面は血の海だ。
夜中にうるさいと思いながら気にせずにいたらこのありさまだよ!
こんな状態でよく眠れたと自分でも思う。
比較的戦闘音が小さかったと思うのは召喚術で進化したスーパーゴブリンたちのおかげだろう。
死体のそばには剥ぎ取りが完了した毛皮や魔石が積み上げられている。
解体を覚えさせたおかげで勝手にやっておいてくれたようだ。
どれもきれいに剥ぎ取られている。
それらをアイテムボックスに詰め込みながら土魔法で死体を埋めていく。
ただ埋めるだけだと掘り返されるかアンデッドになって這い出して来るので、バラバラに砕きつつ念入りに土と混ぜ合わせる。
かなり強引だがそのうち良い肥料になってくれることだろう。
さて、寝起きのインパクトが強すぎてすっかり遅くなってしまったが実験結果の確認だ。
首や手足を回して念入りに調子を確かめる。
何処も痛くなったり動きが悪くなっていることはないようだ。
風邪をひいている様子もない。
着心地も合格だ。
これなら実戦で耐えうる。
今後はこの鎧を標準装備にしようと思う。
今日の予定は実験。
それから従魔には引き続き探索をさせようと思う。
召喚したのはゴブリングールとフォレストウルフ。
それぞれ10体づつを組ませて主に森の深部を探索させる。
結果を待つ間は実験だ。
以前、人為的にアンデッドを作る実験をしたが、今回は魔物を作る実験をしたいと思う。
対象はそこら辺にいる生物や魔物だ。
森から草原に出てホーンラビットを探しつつ、何か実験できそうなものがないか周囲を見渡す。
初めに見つけたのは小さなアリの巣だ。
さっそく魔力を遮断する結界を張って内部を高密度の魔力で満たす。
同時に何があってもいように防御結界も張っておく。
ゴブリングールを召還して内部に変化がないか監視させるが、10分ほどで何の反応もなくなってしまった。
その後もアリの巣を見つけたら属性を変えて実験してみるが、どうも結果は芳しくない。
そうこうしているうちに初めの目当てだったホーンラビットを見つけた。
こちらを見つけると突っ込んできたので、これを結界で閉じ込めて同じように実験する。
初めは暴れていたホーンラビットも、結界内の魔力が高まると徐々におとなしくなった。
グールの目を通してみると体の中心、魔石のあたりに魔力が集中していっているのが分かる。
そのまま結界内の魔力をすべて吸い尽くすように魔石へと魔力が収束する。
変化は突然だった。
いきなりびくりと跳ねたかと思うと、体のあちこちが裂けて血や骨が飛び出す。
しかし数瞬後には何事もなかったように元の毛皮に戻った。
バキバキと音を立てながら少しづつ体が膨張していく。
同時にグールの目から見た魔力も膨張と収縮を激しく繰り返している。
その間ホーンラビットは白目をむいてびくびくと痙攣していた。
変化が唐突なら終わりもまた唐突だ。
爆発的な膨張を見せた魔力が一気に収縮して安定すると、そこにはホーンラビットによく似た、しかし決定的に違うウサギ型の魔物がいた。
体長は3倍ほどに膨れ上がり1.5m位ある。
額の角はより長くなり、剣のように薄く鋭くなった。
口からは鋭く長い犬歯が飛び出しており、手足の爪は鉤爪のように鋭くなっている。
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<ヴォーパルバニー>
ソードラビットの変異種。別名『首狩りウサギ』。
肉食性で気性が荒くとても危険。
素早い動きからの一撃は相手の急所を確実に狙ってくる。
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どうやら一段飛ばしで進化してしまったようだ。
説明によれば一段階前にソードラビットというホーンラビットの上位種がいるらしい。
元ホーンラビットのヴォーパルバニーは激しく暴れながら結界に攻撃を仕掛けている。
結界をとくとさっそくとばかりに襲いかかってきたのでさっくりと迎撃した。
その際相手の攻撃が思ったより早くて一撃もらってしまったようだ。
倒す直前に金属を引っかくような音がしたので間違いないと思う。
鎧を新しくしておいて正解だった。
以前のままだったら致命傷とはいかずともかなり深い傷を負っていただろう。
さすがギルドでCランクに指定された魔物だ。
素早い一撃は熟練の冒険者でさえ躱しきることができない。
普通の冒険者なら見た瞬間に逃げるほどだという。
ゴブリンを召還して解体を任せた。
その間に考察する。
先ほどの実験で魔石を中心に変化が起こっていたことから、魔物の発生と進化に魔石がかかわっているのはほぼ間違いないだろう。
それともう一つ、この世界には魔力酔いという現象がある。
これは周囲の魔力が高密度下にある時、体内に余剰魔力が溜まって起きる現象だ。
この現象は総魔力量の少ないものほど起きやすい。
そしてこの状態が長く続くと肉体が耐え切れずに死亡するケースが多く報告されている。
中には魔物へ変貌する者さえいるという。
魔物に体内には必ず魔石があるために、魔物化の際に魔石が生成されているのはもはや確実だろう。
ではなぜ魔物は魔石を生成するのか。
これは一種の防衛反応だと思う。
体内に過剰に蓄積した魔力濃度を下げるため、一時的に魔力を一か所に集める。
その際に起きる反応こそが魔物化だと思われる。
魔力が結晶化する際に肉体が引っ張られて変貌するのだ。
ならば元から魔石が体内にある場合は?
それが今回のホーンラビットの実験結果につながるだろう。
魔石には魔力をため込む性質があり、ため込むことでより高品質なものへと成長する。
そしてその成長の過程で起こるのが魔物の『進化』なのだと思う。
つまり人工的に魔物を発生させたい場合、対象の体内に魔石がある方が成功の確率が高くなると結論付けられる。
というわけで今度の実験は細かく砕いた魔石を使って行う。
アリの巣穴の中に魔石の粉を流し込んでしばらく待つ。
そのうえで結界を張り高密度の魔力にさらすと――。
予想どうり、魔物化したアリの群れが地面から這い出してきた。
一匹一匹の大きさはどれも30㎝を越えている。
そのアリの群れが2000匹ほど、結界の中ですし詰めになっている。
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<ヴァリアント>
狂暴化したアリの魔物。「兵隊」「護衛」「近衛」「女王」からなる。
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<ロックアント>
鉱物を取り込んでより頑強な外殻を持ったアリの魔物。
「兵隊」「護衛」「近衛」「女王」からなる。
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こいつらは魔物とはいえ所詮虫なので氷魔法で凍らせたら一気に殲滅できた。
凍らせたせいでバラバラになってしまったが魔石は無事なようだ。
その後も虫を捕まえては魔物化しては討伐を繰り返した。
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<センチネルビー>
Ⅲ等級
魔物化した体長80㎝ほどの蜂。強力な麻痺毒を持つ。
巣に近づくものに対して苛烈な攻撃を行う。
スキル
【噛み付き:3】【特攻:3】【毒生成(麻痺):3】【飛翔:4】【方向感覚:3】
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<フォートレスビー>
Ⅲ等級
頑強な甲殻を持つ蜂。盾のように発達した前肢を持つ。
体長は1mほどで強力な毒がある。
スキル
【噛み付き:3】【堅守:3】【毒生成:3】【飛翔:4】【方向感覚:3】
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<アイアンキャタピル>
Ⅲ等級
鉱物を取り込んで鉄のように強靭な甲殻を持つ体長2mの芋虫。
強靭な顎で森の木を食い尽くす害獣。
粘着質な糸を吐く。
スキル
【噛み付き:2】【堅守:4】【躁糸:3】
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<ディアクロウラー>
Ⅲ等級
鹿の角のような触角をもつ1mほどの芋虫。怒ると帯電し、角から放出する。
『ストームパルサー』の幼虫。
スキル
【噛み付き:2】【雷属性:2】【躁糸:2】
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<メイズパピヨン>
Ⅲ等級
深い森の中などに生息する蝶。幻覚作用のある鱗粉をまき散らす。
鱗粉を吸い込むと方向感覚を乱され、永遠に森の中をさまようことになる。
スキル
【飛翔:3】【毒生成(幻惑):4】【夜目:2】
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<サンクトゥスモルフォ>
Ⅲ等級
聖域に生息するとされる蝶。鱗粉に癒しの効果があるため、薬の材料として乱獲された。
教国では魔物でありながら聖獣として扱われている。
スキル
【飛翔:3】【聖属性:2】【薬生成:3】【夜目:2】
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<ラヴァ・モス>
Ⅲ等級
炎のように燃える翅をもつ蛾。火の粉のような鱗粉をまき散らしながら飛ぶ。
鱗粉には毒があり、触れると焼けただれたように炎症をおこす。
スキル
【飛翔:3】【火属性:2】【毒生成:3】【発光:3】
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<フロストヘイムバタフライ>
Ⅲ等級
ガラスのような氷の羽を持つ蝶。粉雪のようにまき散らす鱗粉には眠りの効果がある。
荒涼とした大地に生息し、旅人を永遠の眠りへ誘う。
スキル
【飛翔:3】【氷属性:2】【毒生成(睡眠):3】【発光:2】
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<サンドワーム>
Ⅰ等級
巨大化したミミズの魔物。大きなものは数十メートルにもなる。
呑み込めるものなら何でも捕食する。
個体差が大きい。
スキル
【潜行:4】【強襲:3】【身体強化:3】【振動感知:4】【魔力感知:3】
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<アシッドデスワーム>
Ⅲ等級
2~5mほどのミミズの魔物。森の中に生息し、主に動物や魔物の死体を捕食する。
強力な酸で大抵のものは溶かしてしまう。
スキル
【潜行:3】【毒生成(酸):4】【身体強化:2】【振動感知:4】【嗅覚感知:3】
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半数以上は高濃度の魔力に耐えきれずに死んでしまうため、成功率は4割ほどと少ない。
それに法則性もよくわからない。
同じ種類の虫で実験しても毎回同じ魔物が生まれるとは限らないのだ。
魔力に属性を持たせることである程度進化の方向性を制御できるが、確実ではない。
火属性の魔力から火の特性を持つ魔物に進化したと思えば真逆の氷の特性に進化することもあった。
そのことから進化先には個体差が大きく表れるとみていいようだ。
そろそろ日が傾いてきたので探索組の方に意識を向けると、どうやら新しい反応を見つけて向かっているようだ。
もう少しかかりそうだったので先ほどの実験成果を登録しておこう。
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ヴォーパルバニー
Ⅱ等級
鋭い角に爪と牙をもったウサギの魔物。『首狩りウサギ』の名で知られる。
同じ魔物のソードラビットと似ているため犠牲者が後を絶たない。
スキル
【ひっかき:4】【噛み付き:3】【突撃:4】【跳躍:3】【隠密:2】【身体強化:2】【聴覚感知:4】
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ヴァリアント
Ⅲ等級
狂暴で何でも餌にするため、巨大な魔物にも集団で襲いかかる習性をもつ。
「兵隊」「護衛」「近衛」「女王」からなる。
スキル
[ポーン]【噛み付き:3】【運搬:4】【特攻:2】【身体強化:1】【嗅覚感知:2】
[ルーク]【噛み付き:3】【防衛:2】【堅守:2】【身体強化:2】【嗅覚感知:2】
[ナイト]【噛み付き:3】【毒攻撃(酸):2】【飛翔:4】【集団指揮:2】【身体強化:3】【嗅覚感知:2】
[クイーン]【噛み付き:3】【コロニー生成:4】【飛翔:3】【集団指揮:3】【身体強化:3】【嗅覚感知:2】
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ロックアント
Ⅲ等級
鉱物を取り込んだことでより頑強な甲殻を持つようになったアリの魔物。
「兵隊」「護衛」「近衛」「女王」からなる。
スキル
[ポーン]【噛み付き:3】【掘削:3】【運搬:4】【堅守:2】【身体強化:1】【嗅覚感知:2】
[ルーク]【噛み付き:3】【防衛:2】【堅守:3】【身体強化:2】【嗅覚感知:2】
[ナイト]【噛み付き:3】【毒攻撃(酸):2】【堅守:3】【飛翔:4】【集団指揮:2】【身体強化:3】【嗅覚感知:2】
[クイーン]【噛み付き:3】【コロニー生成:4】【堅守:3】【飛翔:3】【集団指揮:3】【身体強化:3】【嗅覚感知:2】
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クイーンの【コロニー生成】はポーン・ルーク・ナイトを独自に召喚するスキルのようだ。
こちらから直接の指示ができない代わりに召喚枠を消費しないらしい。
おまけにクイーンがいなくなると強制送還されるため野生化の心配はないという安心設計。
ついでに人工魔石の登録もできないかと試してみたが、こちらは俺の魔力が元だったので登録できなかった。
他の人の魔力だとどうなるかわからないが、そのうち試してみようと思う。
登録を終えると同時に従魔からの連絡がきたのでそちらに意識を戻すと、目に飛び込んできたのは二足歩行する豚の集団だった。
正確にはオークという魔物で、10体ほどが群れている。
ゴブリンと同様繁殖力が強く、他種族のメスを繁殖に使うため嫌われる魔物だ。
単体の戦力は一般的な冒険者と同程度で様々な武器を操るため、1対1でオークを倒すことが一人前の冒険者の証として扱われている。
ゴブリンと違ってその肉が食用にされたり革は様々なものに加工されるため、一人前以上の冒険者の稼ぎとしてよく狩られているようだ。
ちなみに肉は淡白で豚肉のような味らしい。
知能はゴブリン同様低いため、戦術さえ確かなら一人で複数を圧倒することもできるので、比較的くみしやすい相手と言えるだろう。
まだこちらに気付いていないため、さっそく新しい従魔の性能テストのために犠牲になってもらうとしよう。
センチネルビーを30体とヴァリアント・ポーンを100体召喚して突撃させる。
突然の襲撃に蜂の巣をつついたような騒ぎになり、がむしゃらに武器を振り回したり逃げようとするものがいたので逃げるものから優先的に攻撃させた。
分厚い皮と脂肪で毒針の通りが悪いようだが、それでも複数回刺されたものは麻痺して倒れてゆく。
倒れたオークはヴァリアントに集られ、少しづつ解体されていく。
一方武器を振り回している方のオークはといえば、やたらめったら武器を振り回すせいで味方にも被害を出していた。
おまけに足元のアリを振り払おうとすれば上から蜂が、蜂を振り払おうとすれば足元からアリがというように攻撃を仕掛けるため、動きが鈍ったものから仕留められていく。
数の暴力によってオークたちはあっという間に骨を残して解体された。
今回必要だったのは魔石なので肉や皮はアリたちの餌にしました。
今手元には4㎝ほどの透明な魔石が乗っている。
オークの魔石だ。
さっそく登録する。
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オーク
Ⅱ等級
太った人型の躰に豚の頭を持つ魔物。知能は低いが力があるため、これを倒すことが一人前の冒険者の証とされる。
肉は淡白でおいしい。
スキル
【体当り:2】【殴り:2】【剣術:2】【棍術:2】【身体強化:3】【嗅覚感知:3】
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スキルはゴブリンとほとんど変わらないが、タフなので今の俺には前衛としてちょうどいい。
ゴブリンが思ったより強くなっているため使わないかもしれないが、一応保険のつもりだ。
従魔たちはすべて送還し、グレイウルフを呼び出す。
そろそろ閉門の時間が近いのでこれ以上遅くなるとまた野宿することになる。
あぁ~、星がきれいだな~。
そんなことを思いながら横になって星空を見上げる。
前の世界では空気が汚かったり街の明かりで星がほとんど見えなかったため、こちらの世界に来てからというものどれほどあの世界では環境汚染が進んでいたのか思い知ったカナタです。
ふと気になって星座を探してみるが、こちらの空は星の配置が違うのか一つも見つけられなかった。
そういえばこちらにも星座があるのかな~。
そうしみじみと星を見つめる。
寝転がっているのは宿屋のベッドではなく見渡す限りの草原だ。
まぁ、背後には町の防壁があるけど・・・・・・。
こうなったのにも原因はある。
横を見れば即席のかまどに鍋をかけて夕食の支度をしている人たちがいた。
途中で盗賊の襲撃を受けていた武器商人とその護衛たちだ。




