魔道具を作ってみよう
あれから1週間。
ホーンラビットの素材を中心に毎日依頼をこなした。
おかげで顔も覚えられている。
普通の冒険者が2日に1度は休息をとるのに毎日依頼をこなしているせいで覚えられたようだ。
それに一度に大量の依頼をこなし今まで一度も失敗していないおかげか、今セリューで最新気鋭の駆け出し冒険者として知られている。
幸か不幸か顔を売ることに一役買っていたようだ。
解体場のおっさんもことあるごとに手伝うよう言ってくるのでゴブリンに解体を覚えさせてみた。
情報源は世界知識だ。
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ゴブリンリッパー
Ⅱ等級
獲物を解体することに喜びを見出したゴブリン。隠密に長けており、素早く獲物をしとめた後バラバラに解体する。
スキル
【短剣:3】【投擲:2】【罠:3】【隠密:3】【暗殺:2】【解体:2】【身体強化:3】
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いざとなったらこいつを人(?)身御供に差し出すつもりだ。
召喚術がばれるとか言ってられない。
というかばれたとしても今の俺の能力なら撃退くらい簡単だ。
面倒なのは光神教の信者くらいか。
きっと面倒なことになるだろう。
敵対するなら潰す。
そうでないならそれなりの対応をするつもりだ。
光神教は光神ラトミスを主神に据えた宗教で、もともとは光の英雄ラトミスを崇拝する団体であったのだが、長い歴史で何度も教義が変わっている。
その歴史はまだ人々の生活が安定していないころまでさかのぼり、口伝とともに受け継がれてきた。
もとは魔物の勢力が支配していた土地をラトミスとその仲間が切り開いて村を作り、いつしか国ができたというものであった。
しかしいつしかそれは「光神ラトミスが大地に降り立ち、魔物を殲滅して人々に安全な土地を与えた」というものと挿げ替えられ、もともとあった国は聖教国ラトネイアを名乗るようになった。
教国はラトミスが倒そうとした魔物をこの世から殲滅することが光神ラトミスに対する信仰の証とし、信者に強要しているので強大な武力を誇っている。
また、魔物の力の根源である魔石を邪悪なものとし、それから作られる魔道具を悪魔の発明品として使用を制限しているため周辺国家との軋轢が絶えないが、有り余る武力で脅しをかけているようだ。
そのくせ聖属性の魔石を利用した魔道具を聖遺物とあがめており、聖属性魔石の買い占めや聖属性を持つ人物を集めていたりする。
時には誘拐まがいのこともしているようだ。
集められた人々は『ヒーラーギルド』に所属させられ、光神教の洗脳を受ける。
そのせいもあってこの世界では技術があまり発展していない。
『教会』が有用と認めた魔道具を独占、もしくは闇に葬っているのが原因だ。
魔道ギルドもお布施の名目で賄賂をおくり細々と研究を続けているが、人々の還元される分はごくわずかしかない。
なので技術の発展を目指す俺には教国は目の上のたんこぶのような存在だ。
教国のやり方が気に入らない以上友好的な関係はありえない。
あるとすれば互いに不干渉か対立の2極端になる。
俺としては後顧の憂いをなくすために徹底的に潰しておきたいが。
そんなことを考えつつ今日も冒険者ギルドに出勤。
いつものように買取してもらって帰ろうとすると呼び止められた。
少々げんなりした顔で振り返ると今日はいつもと様子が違うようだ。
「そういやそうな顔で振り返るんじゃねぇよ、今日は別件だ。
依頼達成が連続で60回を超えたからランクアップ試験が受けられるがどうする?」
そう聞かれたのでもちろん受けると答えた。
「それなら表の買取りカウンターで申請すれば試験が受けられる」
ということなのでさっそく申請してみるが、
「申し訳ありません、現在試験官をできる冒険者が不在なため、Dランクへのランクアップ試験は3日後となりますがよろしいですか?」
と受け付けのお姉さんに言われてしまった。
そういうことなので仕方ないが2日間暇になってしまったな。
そういうわけでやってきましたいつもの森。
もう人に知られたくない実験のための定番と化してるな。
本日の目的は新しい装備の製作だ。
それもただの装備ではなく魔道具。
ゴブリンブラックスミスを20体呼び出して製作開始。
まず始めに用意したのは鋼の塊500㎏。
これを魔法で大剣の形に形成していく。
切れ味よりも丈夫さを求めているので刃は分厚目だ。
本来ならオーガやトロールくらいしか扱えない超重量の品だが、これを魔道具にすることで人間でも取り扱えるようにする。
必要なのは土の魔石が二つと無の魔石が一つ。
一つ目の土魔石には『武器』『付与』『重力無効』、二つ目には『武器』『付与』『重力十倍』と書き込んだ。
ルーンは書き込む文字数が多いほど正確に効果を現すので、なるべく多くの文字を書き込むほど強力な魔道具となる。
ただし書き込める条件は全部まとめて一つの効果となるので、相反する条件を同時に書き込むことはできない。
今回は小さく正確に書き込むため、光魔法のレーザーで焼き込んでみた。
無の魔石には『常時』『武器』『付与』『超硬化』と書き込み、すべての魔石を柄に埋め込めば完成。
魔道具の効果から常時魔力を消費するので柄頭に無属性の魔石をつけて供給源にする。
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<地裂の棍棒>
柄に組み込まれた魔石に魔力を流すことで自在に重量を変える大剣。
使い方次第では100tをゆうに超える。
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できたのがこれだ。
名前は切るより押しつぶす方が多いと思うので棍棒と名付けてみた。
無重力の魔石に魔力を流すと、まるで羽毛のように扱える。
これを片手で扱うさまを見ればさぞや迫力があることだろう。
試しにゴブリンに振らせてみる。
身長1m程度のゴブリンが2mを超す大剣を扱う様子はコミカルを通り越してシュールだと思う。
気を取り直して次の作品だ。
取り出したのは以前作った鋼のロングソード。
これを魔改造しようと思う。
使うのは水の魔石。
これに『刃』『付与』『水刃』『高速旋回』と書き込んで柄に埋め込む。
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<グラインダーソード>
魔力を通すと水の刃が高速回転する剣。
大抵のものは切れる。
魔力を通さなければただの剣。
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できたのはウォーターカッターのまねをした長剣だ。
魔力を流すとチェーンソーのように水の刃が高速回転して触れたものを切り裂く。
これで召喚したマイナーエントの木材を削っていく。
ゴブリンには材料を渡して部品を作らせる。
そしてそれらを組み込み、パラライズスパイダーの糸を張ればば完成。
――と、言うわけではない。
今回作るのは魔道具だ。
ただの武器なはずがない。
無属性魔石を作って『矢』『高速回転』『射撃』と書き、組み込む。
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<蒼天のクロスボウ>
魔力で構成された矢を放つクロスボウ。
属性魔石を別途組み込むことで属性矢を放つ。
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できたのは所々が金属で補強されたクロスボウ。
魔物素材を使っているためただでさえ強力な武器が魔道具となったのだ。
その威力は推して知るべし、である。
加工に使った剣と合わせてゴブリンに練習させる。
剣はあっさりと木を両断し、矢は1本目の木を貫通して砕け散った。
半ば予想どうりとはいえここまでうまくいくと気分も良くなる。
良くなった気分で今度は防具を作ろうと思う。
作るのはフルプレートアーマーだ。
鋼の塊をゴブリンたちと一緒に叩いて板金していく。
徐々に出来上がっていく騎士鎧に気分はもううなぎ上りだ。
そして出来上がったのはスリムだがどことなく無骨なフルプレートアーマー。
本来革で補強するところも金属製にしたため重量は100㎏位あるだろう。
これに魔石を仕込んで魔道鎧にする。
つける魔石は火が二つに風一つ、土一つに無が二つだ。
火属性魔石には二つとも『常時』『付与』『身体強化』。
風属性魔石は『常時』『付与』『適温維持』。
土は『常時』『付与』『重力半減』。
無は一つ目に『常時』『付与』『鎧』『超硬化』、二つ目に『常時』『付与』『衝撃吸収』と書き込む。
後は上から順に肩、胸、腰、膝の部分に魔石を埋め込んで完成だ。
鈍色の表面に魔石の色が映えて見た目も美しい。
殺人的な重量も着用時は土魔石の重力半減が間自分自身にもかかるので、差し引きで若干体重が増えた程度の重さしかない。
適温維持の効果で着ている間快適な温度が保たれるのも大きい。
気分がいいので同じデザインでゴブリン用の鎧も作ってしまった。
さっそくおそろいで鎧を着てみる。
若干魔力を吸い取られているような感覚があるが、微々たるものなので問題はなさそうだ。
軽く体を動かすと、火属性魔石の効果で身体能力が飛躍的に上がっているのが分かる。
衝撃吸収があるので不意の一撃を受けてもそうそうダメージにならないだろう。
注意すべきは鎧を着ている状態に慣れて、着ていない時の注意が疎かになることだ。
いくら超回復があるとはいえ怪我をすれば痛いものは痛いのである。
ゴブリンから武器を受け取って装備すると、さながら歴戦の冒険者という風体になった。
今朝まで駆け出し風の見た目だったのがいきなり変わったので訝しまれるかと思ったが、買ったか盗賊退治の戦利品とでも思ってもらえるだろうか。
どのみち顔はヘルムで隠れているため、名乗らない限り気づかれることもないだろう。
作業に熱中していたためあたりはすっかり日が落ちてしまっている。
これではもう閉門に間に合わないだろう。
新しい鎧の性能チェックもかねて野宿だな。
広い場所を探して隠蔽結界を張り、光の魔法で結界内を照らして視界を確保。
相対するのはおそろいの鎧を着たゴブリンだ。
互いに普通の剣を装備して構えをとる。
鎧の性能テストのために互いに打ち合ってみるつもりだ。
すでに剣の勝負では勝てないため、どちらかといえば耐久力を調べることになる。
本来の性能を試すために互いの武器には刃挽きはしていない。
本物の真剣だ。
地面を蹴って駆けだす。
本来なら数歩が必要な距離が、鎧の効果で増幅された筋力により、わずか一歩で詰められる。
魔力での身体強化は一切使っていない。
爆発したようにえぐれる地面を残し、さらに一歩。
すでに眼前に迫った相手に対して横薙ぎの一閃をふるう。
しかしこちらと同様増幅された瞬発力で一瞬にして間合いの外に逃げられ、返す刀でカウンターを叩きこまれる。
回避は間に合わず、左腕でこれを受け流した。
激しい火花を散らしながら逸れていく剣先に冷汗が流れる。
剣を受けた左腕に衝撃はなく、代わりに金属をこすり合わせる嫌な音が響いた。
眉間にしわを寄せながら離脱し、さらに距離をとる。
ちらりと確認した左腕の手甲には傷一つついていない。
性能は上々のようだ。
怪我の心配がなくなったようなので思い切って攻撃を仕掛ける。
手数はこちら、技術は向こう。
明らかに手加減されているのが分かる。
ならば、とさらに魔力による身体強化を重ね掛けして突撃を仕掛けるが、この目論見は失敗してしまった。
限界を超えて強化された身体能力に思考が反応しきれず、結界に激突してこれを砕いてしまう。
さらに進路上の木を何本もへし折りながらようやく停止することができた。
鎧のおかげで怪我も衝撃もなかったが、このせいで勝負はお流れとなってしまった。
まぁ結果としては性能や今後の課題が明らかになったので良しとしよう。
あれだけ動き回ったのに汗ひとつかいていないのは鎧の内部が快適な温度に保たれているおかげだ。
魔道鎧でなければ数分動いただけで汗だくになっていたにちがいない。
残るは最後の性能テストだ。
鎧を着たまま休息をとることにする。
護衛として最低限のゴブリンを残して送還した。
横になってみるが大して負担は感じられない。
凹凸が少なく、体にフィットするデザインにしたおかげだろう。
ヘルムがしっかり固定され、簡単に外れないことを確認して眠りについた。




