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またこいつらか!


ことの起こりはグレイウルフに乗って帰路を急いでいる時のこと。


今回は鎧の性能チェックのためにいつもより森の奥で実験をしていた。


そりゃ森の中でゴブリンに囲まれて横たわってたら襲われているか死んでいると勘違いするよね。


というわけで獣除けの火も焚かず無防備に寝ているせいで他の冒険者に見つかり、面倒になることを避けたためだ。

帰るための目印として森を抜ける街道に近いところにいたとはいえ、ここまで入ってくるものはそういないだろう。


帰り道も人目につかないように街道に沿った森の中を進んでいた。

森の先、街道から戦闘音が聞こえてきたのはその時だ。


まず始めに気付いたのは従魔のオオカミだった。

そこから従魔の耳を通してここからそう離れていないところで何者かが争っていることが分かった。

人数は多数。

掛け声によると片方が一方的に押していることが分かった。


バーゲルの時もこの森のあたりから襲撃に遭ったそうなのでおそらく盗賊だろう。

前回は全滅させてしまったのでアジトの場所が聞けなかったが、今回は聞けるかもしれない。

もし盗賊たちが優勢なら蹴散らして様子を見てみよう。



野次馬根性丸出しで音の場所に行ってみると、案の定盗賊と冒険者が争っていた。

中心には武器を満載した馬車とその持ち主らしい初老の男性がいる。

状況は盗賊が優勢らしい。

護衛は5人のうち3人が倒れていて、残り2人も満身創痍だ。

倒れた3人のうち2人はピクリともせず、もう一人は足から流れる血を必死に止血しようとしている。


盗賊たちはそんな彼らをニヤニヤと気持ち悪い顔で見ている。

どうやら嬲り殺しにするつもりのようだ。


見ているだけだと気分が悪いのでさっそく参戦することにする。

今回はアジトを突き止めるため何人かわざと逃がすつもりだ。

なので追跡用のウルフを何体か召喚しておいた。

ゴブリンを召還しなかったのは鎧の慣らし運転のために俺一人で相手をするためだ。

ウルフには見つからないよう指示をしておく。


背中の大剣を握りしめると、森から一気に躍り出た。

一番近い位置にいた盗賊に一閃、返す刀で間抜け面をさらしていたもう一人に剣の面を叩きつける。

攻撃の瞬間、重力十倍の魔石を発動させているため、盗賊たちをあっさりと吹き飛ばした。

特に叩きつけられた盗賊はそのまま吹き飛び、木立に叩きつけられてシミになる。


自分で作っておいてなんだがすごい威力だ。


重力を十倍にした瞬間腕ごと体を持っていかれるかと思ったが、そこは鎧の効果と魔力での身体強化で持ちこたえる。

威力はすごいがとんだじゃじゃ馬だ。

攻撃の瞬間、剣にはあるまじきすさまじい打撃音がする。


盗賊も冒険者たちもあっけにとられてそれを見ていた。

本来ならあり得ない重装で軽々と大剣を操るのに思考が停止しているのであろう。

動きの止まった盗賊たちを一気に殲滅していく。


20人以上いた盗賊はもはや半分以下だ。

何人かは気を取り戻して向かってきたが、その攻撃はどれもが鎧に阻まれてダメージすら与えることができない。

おまけに盗賊たちの武器が刃こぼれしたり折れる始末だ。


俺は敵の攻撃をよけずにすべて受け続けた。

この程度なら避ける必要すらないのだ。

証拠に鎧には傷一つついていない。



盗賊の中にはどれだけ切りかかろうと傷一つ付けられない俺におびえて逃げ出すものさえ現れ始めた。

そいつらに追撃を仕掛けるつもりはない。

アジトまで案内してもらうつもりだからだ。


一人、また一人と逃げ出すと、あとはなだれ打つように他の盗賊たちも逃げ出した。

逃げ出した盗賊たちはすでに従魔に追わせている。

さて、どれだけお宝をため込んでいるものやら。



ウキウキしながら振り返ると、残った護衛は息を整えているところだった。

倒れていた3人はどうやら間に合わなかったらしく、すでにこと切れている。


「すまない、助かった」


そう言って手を上げてくる冒険者にどこか見覚えがあった。

たまにギルドで鉢合わせする一人だ。

以前たまには何か食べようかと食事に行ったときに偶然相席になった。

いつも挨拶する程度の間柄ではあるので話してみたら意外と気が合ったのだ。


「やぁナッシュ、災難だったね」


そう言って声をかける。


「ん? あんたみたいな凄腕の冒険者に知り合いはいなかったはずなんだが。

すまないが誰だろうか?

どうにも心当たりがなくてな」


そう怪訝そうな顔で返された。

確かにそうだ。

この鎧を作ったのは昨日なので見覚えなどあるはずがない。

兜のバイザーを跳ね上げてようやく誰かわかったようだ。


「お前カナタか!?

ずいぶんといい装備をしているじゃないか。

どうしたんだそれ?」


盗賊から奪った、にしては装備が良すぎるし困ったな。

ここは正直に言っておこう。


「自分で作った。

前に言っただろ、自分の装備は自分で作ってるって」


「そういえばそうだったな。

いや、それにしてもすごいけど。


その大剣とかどうなってるんだ?

重くないのか?」


と、その後もいろいろと聞かれそうになったが、それを止めるものがいた。


「ナッシュ、気になるのは分かるが今は馬車をどうするか考えないと」


そう言って話をさえぎったのはもう一人残っていた冒険者だ。

こちらには面識がない。


「ありがとう、助かった。

俺は護衛隊のリーダーをしているシェーナーだ。

他の3人は残念だったが、何とか積み荷と依頼者を守れてよかったよ」


そう言って馬車の方へ戻っていく。

御者席には渋い顔で困っている持ち主がいた。

視線の先には矢で射殺された馬が二頭横たわっている。

どうも荷馬をつぶされたらしい。

困っている商人にシェーナーが言った。


「ですから積み荷を置いていかなければどうにもなりませんよ」


「しかしだな、この積み荷を手放したら私は確実に破産してしまう。

それにこのままだと確実に盗賊や魔物に持ち去られるだろう」


そう言って渋っているのは商人の方だ。


「そうはいっても馬がつぶされているのではどうにもなりませんよ。

持ち歩ける量もたかが知れていますし」


「そこを何とか!

そうだ、全員で馬車をひいていけば!」


「それこそ無茶ですよ。

2頭の馬がようやく引ける馬車を人間が引くなんて無理です」


「ぬぐぅ、せめてゴーレムコアさえあれば・・・・・・」



どうも積み荷のことでもめているらしい。

依頼主の商人は何が何でも積み荷を持ち帰りたいようだ。


ちなみにゴーレムコアは前時代の遺物アーティファクトだ。

発掘数が少なくルーンも複雑なため複製はできてもいまだ量産できていない。

起動と維持に魔術師数人分という莫大な魔力が必要で実用的ではないが、それにふさわしいだけのパワーを持っている。

もっとも単純な動きしかできないので荷物運びにしか使えないという欠点もある。


今回はその荷物運びができればいいようだが、ゴーレムコアなどというレアな代物は王宮の宝物庫に保管されているため、通常は表に出てくることはない。

それに出したとしても戦略級兵器という扱いなので戦争などがない限り日の目を見ることはないだろう。


そんなやり取りを横目で見ていたが、ついつい悪戯したくなってしまった。


「ありますよ、ゴーレム」


「なに?」


予想外の方向からの発言にぽかんとなる商人。

しかしそれも束の間で、すぐに詰め寄るように問い詰めてくる。


「ほ、本当に!? 本当にゴーレムがあるので!?」


「ちょっ、近い近い近い!

落ち着いてくださいって!」


あまりの剣幕に思わず引いてしまった。

この商人、やりおる。

一方の商人は多少落ち着いたのか、ようやく離れてくれた。

積み荷を動かせる可能性のある人物に失礼のないようにと、今更のように自己紹介をしてくる。


「失礼、少々(・・)取り乱しまして。

先ほどは危ないところを助けていただき、どうもありがとうございます。

あのままだと盗賊どもに積み荷を奪われて殺されていたことでしょう。

私はセリューで武器商をしているアルマスと言います。

どうぞ、武具がご入り用ならばわがアルマス商会へ。

お安くしておきますよ」


そう言いつつさりげなくこちらを観察している。

おそらくこちらの武具を見ているのだろう。


「それで、ゴーレムをお持ちとのことですが、あなたは魔術師なので?」


そう聞いてくる。

魔術師の中には土や石をゴーレムのように動かして使役するものがいるからだ。

ただこちらはアーティファクトのようなパワーは見込めない。

ゴーレムを動かすためには力に応じただけの魔力が必要なため、通常は盾のように前衛に立たされる木偶の坊でしかないのだ。

なのでゴーレムには荷物を満載した馬車をひくほどの馬力はない。

もっとも魔物としてのゴーレムは恐るべきパワーを持っているため、一般的にゴーレムといえば力持ちというイメージが強いのだ。


「ええ、こんななりですが一応魔術師ですよ」


まぁ無理もないだろう。

一般的な魔術師はローブなどの軽装を好むからだ。

金属は魔力をほとんど通さないので、金属の鎧は魔力の回復を妨げると知られている。

魔法銀ミスリルのような例外もあるが、産出量が少なく希少なためこれを武具とするものは極めて少ない。

おまけにミスリルの加工ができるのは限られたドワーフの鍛冶師だけなのだ。

自然と供給量は少なく高価なものになるため、ごく限られた貴族以上の者しか使用できなくなっている。

なので俺みたいにガチガチの金属鎧で武装した魔術師などいなくなるのだ。

もしいたとしてもそいつはかなりの代わり者だろう。

そうでなくとも大剣を振って戦っていたのだ。

普通は前衛の戦士と勘違いするのが当たり前だ。


「ということは、もしや荷物の運搬を引き受けていただけるので?」


「ええ、せっかく助けたのでそのくらいの面倒は見ますよ」


「あぁ、ありがとうございます。

これで私の首もとばなくて済む」


そう言って崩れ落ちんばかりにお辞儀をしてきた。

実際、安堵で崩れ落ちそうなのだろう。


「それにしても、そこまでして運び出したいほどの武具なのですか?」


ついそう聞いてしまう。


「ええ、領主軍に卸すための武具です。

もし盗賊に奪われていたら商会は解体、私は責任を取ることになっていたでしょう。

あなたには感謝してもしきれません」


そう言って再び頭を下げてくる。

積み荷を見れば確かに冒険者が持つ武具よりも質がいいようだ。

もっとも「この世界の武具にしては」とただしが付くが。


「確かに領主軍宛の荷物ならなくすわけにはいきませんね。

俺も微力ながら手伝わせてもらいましょう」


そう言って魔方陣を起動する。

俺の有り余る魔力を使えばゴーレムも不可能ではないのだが、今回は召喚術に頼ろうと思う。

何より商人たちがどういう反応をするか見てみたい。


「おいでませ、ブーちゃん!」


そんな掛け声とともに現れたのはブーちゃんことロックボアが2体。


さすがに魔物が出てくるとは思わなかったようで、商人は腰を抜かしていた。

冒険者たちも武器を抜いて後ずさっている。

どうやら悪戯は成功したようだ。


「な、な、な・・・・・・、何で魔物がいきなり」


商人は開いた口が塞がらないらしく呆然としている。


「そんなにびっくりしなくても噛み付きませんよ。

こいつは俺の使役する従魔なのでちゃんということを聞きます」


そう言ってペシペシとロックボアをなでると少しだけ落ち着いたようだ。

まだ従魔に対する警戒は消えていないようだがまあいいだろう。

バーゲルの時のようにすぐ慣れるはずだ。


「しかし、魔物を使役するなんて聞いたことがないぞ」


そういったのは今まで黙って成り行きを見ていたシェーナーだ。

ナッシュも馬車の陰に隠れながら頷いている。


「まぁ確かに魔物の使役は成功しませんでしたね」


そういうと怪訝な顔で見られたので、バーゲルたちにしたように召喚術について話した。

それを聞いて初めは驚いていた彼らも納得したようだ。




「つまりなんだ、こいつらはお前の使役する特殊なゴーレムっていうわけでいいのか?」


そう聞かれたので頷いておく。


「なるほどな、確かに合理的だ。

それに魔物を味方にできるのは大きい。

戦力が増えればそれだけ作戦の幅が増える。

こいつらをうまく使えば戦闘での死傷者もずっと減らせるだろう」


そう言って頷く。


「ところで、その【召喚術】は俺たちにも使えるのか?」


こちらが本題なのだろう、そう聞いてくる。

正直言って【召喚術】も『従魔の書』も俺のオリジナルのスキルなので、ほかの人が発現できるかはわからない。

それに従魔はその性質上、莫大な魔力を必要とする。

肉体が魔力で構成されているため、魔力の多い魔術師でゴブリンを数体出せるかどうかというほどだ。

普通ならスライムの召喚が関の山だろう。


なのでそのことを話してみたら肩を落としていた。

どうやら召喚術を使いたいらしかった。


これは、割と受けは悪くないか?


どうやら聖教国でなければ魔物を使役することに対する忌避感はないようだ。

そう思って、召喚術を少しづつ社会に浸透させられないかと考えた。

そのためにはもう少し一般の人の魔力でも動かせるように改良を加えないとな。

一番魔力を消費するのは肉体を構成するところだから初めから肉体を用意しておけば――。

いや、それだと【死霊術】になる可能性が高い。

なら人形なら――。



今後の予定を考えていたらその思考を強制的に戻された。

いつの間にか盗賊や冒険者の死体から荷物を集め終わって、あとは俺を待っているだけのようだ。

ロックボアを馬車につなごうとするが、馬ではないので馬具が合わなかった。

仕方がないのでロープで馬車と連結する。

通常は馬が内側に来るところだが、ロックボアだと2体並べないので外側につなぐことになった。

一応馬車を動かすのに支障はないらしい。

スムーズに動き出した馬車に商人は感激していた。

どうやら馬とは馬力が違うようだ。





ほどなくして森を抜ける。

森さえ抜ければあとは平原を行くだけなので、盗賊の襲撃をそれほど警戒する必要はない。

話す口数も多くなり、自然と俺の着ている鎧のことになったのは武器商ならではであろう。


「しかしカナタさんの着ている鎧はさすがですね。

盗賊の剣で傷一つつかないとは、かなりの業物とお見受けします。

ちょっと鑑定させていただいてもいいですか?」


ということだったので快く承諾した。


「やゃ!? これは!?

魔道具ですか。

しかもこれほどの物とは!」


そう言って目を丸くする。

どうやら装備の性能に気付いたようだ。

もっとも魔道具の効果までは分からなかったようだが。


「これほどの名品、一体どなたの作品ですかな?

さぞ名のある鍛冶師の作品なのでしょう」


そう言って褒めちぎる。

正直こそばゆいことこの上ない。

なにせ自分で作った作品を褒められたのだ。

うれしくないわけがない。

ついうっかり漏らしてしまったことは悪くないだろう。


「この武具は全部自分の作品です」


そう言って胸を張る。


「なんと、これが全部あなたの作品とは・・・・・・。

もしよければうちに武具を卸してくださいませんか?

もちろん悪いようにはしません。

最高級の武具として取り扱いましょう」


そう言って打診してくる。

しまった、そう来たか。


今のところ自分の鎧と同じ性能を持つ武具を世界に広げるつもりはない。

でも一部の機能に制限をかけた型落ち版ならいいかもしれないとも思う。


しばらく迷った結果、機能限定で売ることにした。


「いいですけど、この鎧はとっておきの素材を使ったため同じものを作るだけの材料はありませんよ。

いくぶんか型落ちになりますがそれでもいいなら」


「ええ、それでもかまいません。

それと魔道具は高価なため、一般用の普通の鎧もできたらお願いします」


人工魔石や土魔法について話すつもりはないので「とっておきの素材」ということにする。

そこまで話してはたと気が付いた。


「そういえば自分、商工会ギルドに登録してないんですけど勝手に卸してもいいんですか?

それと作るための工房や仕入れの当てもありませんし」


「そういうことならこちらで手配しておきましょう。

うちは武器商なので仕入れの当てならいくつもありますから」


ということだったので任せておくことにする。

詳しいことは後日、商館で相談することになった。

正式な契約もその時することにする。



話がひと段落ついたところでシェーナーが話しかけてきた。


「ちょっといいか?

倒した盗賊と亡くなった冒険者の取り分なのだが」


ということで要約すると、

・自分で倒した盗賊の荷物は自分の物

・なくなった冒険者の財産は3人で折半

ということだった。


こちらではなくなった冒険者のギルドカードをギルドにもっていくと、その冒険者の預金の1割が発見者に支払われることになっている。

残りは受取先が指定されていれば受取先に8割、2割をギルドが手数料として取る。

そうでない場合は全額ギルドが持っていくことが決まっている。

パーティーを組んでいたらパーティーメンバーが発見者ということだ。

ただあまりにも発見数が多いと、持ってきたものが冒険者を殺して奪ったと思われるため注意が必要になる。



気が付けば周囲はすでに暗くなり始めていた。

アルマスが光の魔道具を出して周囲を照らしている。

どうやら閉門には間に合わなかったらしい。

今日も野宿決定だな。

夕食は門に近づいてからとることに決まった。

もし何かあってもすぐに兵隊が駆けつけてくれるので、町の近くにいる方が安全なのだ。






門につく前に隠蔽の結界を張りなおした。

面倒事は御免こうむる。


「門についたら従魔を送還しますね。

朝になったら代わりの馬を連れてきてください」


「おや、私の商館まで引いて行ってくれないのですか?

いえ、催促するわけではなくてですね。

ここまででも十分助かりました、何とお礼を言えばいいのやら」


そう言って頭を下げてくる。


「今は暗いからいいですけどね。

朝になったらきっと騒ぎが起きますよ。

魔族と間違えられて投獄なんて御免こうむります」


そういうと、ようやく馬車を曳いているのが普通の馬でないことを思い出したようだ。

いつの間にか順応していたようですっかり忘れていたらしい。


「そういえばそうでしたな。

分かりました、明日あさイチで代わりの馬をとりに行ってまいります。

そのあとは話を詰めるために商館までご足労願えますか?」


了承しようとして、明日はギルドのランクアップ試験だったことを思い出した。


「明日はギルドのランクアップ試験があるのですが、終わってからでもいいですか?」


「ええ、かまいませんよ。

こちらでもいろいろと準備しておくのでアルマス商会の商館へ来てください」


ということだったので先に試験を受けさせてもらうことになった。




話しているうちにだいぶ門に近づいたため、街道を外れて脇の方に寄っていく。

門の外では同じように間に合わなかった者たちが野営をしているようだ。

騒ぎになると困るのでなるべく人気の少ない方で馬車を止めた。


「さて、到着ですよ」


誰も注目していないことを確認してロックボアを送還する。

どうやら騒ぎを起こさずに済んだようで、ほっと肩から力が抜けた。


「いやはや、ありがとうございます。

これで私も一安心できますよ」


そう言って馬車から降りたアルマスに続いて御者席から降りる。

ナッシュたちはすでに野営の準備を始めているようだ。

ついでなので普通の冒険者がどういう野営をするのか見学することにしよう。

俺の場合いろいろ普通じゃないからな。


「すみません、野営の手順を見学させてもらっていいですか?」


「おう、いいけど野営したことないのか?」


「いえ、ありますけど自分の場合普通じゃないんで」


そういうと、「はぁ?」と怪訝そうにこちらを見る。


「いえ、従魔に見張りをさせてそのまま地面に寝てたんですよ」


どうやらそれで納得してもらえたらしい。


「そういや召喚術があるんだったな・・・・・・って、テントも使わなかったのか?」


「ええ、必要性を感じなかったので」


「そうか・・・・・・」


どうも呆れられたらしい。


「いいか、テントはちゃんと張って寝た方がいいぞ。

朝方冷え込んで露が下りると体温を奪われるからな。

いつ帰れるかもわからない状態で余分な体力を消耗するものじゃない。


それと寝る前に索敵トラップを仕掛けるのを忘れるな」


そう言って見せられたのは紐のついた鳴子だ。


「こいつを周囲に張っておくと敵の侵入を感知できる。

簡単なものだがこれのおかげで命拾いできる重要なものだ」


次に取り出したのは細い棒状の何かだ。

長さは20㎝くらい。


「これは虫除けだ。

蚊なんかにも効くが一番の理由は毒虫を寄せ付けないためだな。

ここら辺にはいないが秘境には厄介なのがいっぱいいる。

かさばる毒消しを大量に持ち歩くわけにはいかないからな。


それとパーティーの場合は見張り番の目安として使われる。

1本燃え尽きるのに大体1時間半くらいだ」


その他にも簡単な調理の仕方などを教えてもらう。

これでパーティーを組んでも怪しまれなくなったな。





深夜。

見張り当番を終えて寝る前に、盗賊たちの後をつけさせたフォレストウルフたちの様子を見ることにした。


視点をウルフに切り替えると崖のふもとの洞窟が見えた。

どうやら盗賊たちはそこをねぐらにしているらしい。

洞窟の外には見張りがいるようだ。

パラライズスパイダーを5体召喚して崖の上から侵入させる。


外にいる見張りは上から忍び寄ったパラライズスパイダーに噛まれてあっさり無力化された。

ゴブリンを10体召喚して無力化した盗賊にとどめを刺させる。


盗賊たちはすでに寝入っていたため、都合10分でアジトの制圧は完了だ。

50人近くからなる大所帯だったが、その間一切のうめき声さえ上げさせていない。

見事な暗殺だった。


さて、お次はお楽しみの荷物改めタ~イム。

ゴブリンに指示をして荷物を回収させる。

隠し収納があるかもしれないので土魔法で不自然な空間がないか調べるとあっさり見つかった。

どうやら洞窟の一部をふさいで壁に偽装してあるらしい。


中からは金貨の入った袋や武器防具がたくさん。

どうもこいつら結構ため込んでいたらしい。

袋の中を調べてみると全部で約20億G、金貨にして200枚分の硬貨が入っていた。


食料庫と思われる場所には穀類や保存食のほかにも酒類が8樽。

さらに香辛料が全部で12袋だ。


さすがは貿易路にねぐらを持つ盗賊団だな。

ため込んでる量が半端ない。


全部ありがたくいただいておこう。



こうして交易路を騒がせる盗賊団の一つが人知れず壊滅したのであった。







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