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side.テティリーヌ
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金細工で作られた繊細な意匠の壁に、淡い光が反射して優美な影を作り出す。東国から運んできた大きな鏡台の前で、テティリーヌは肩口から溢れる金髪など気づかぬように俯いていた。
「 ……あの男」
脳裏に浮かぶのは、どこまでも美しい姿の青年。月光の光を紡いだような淡い白金色の髪は細く繊細で美しい。女神のように整った儚げな美貌を彩るのは、菫色に潤んだ瞳。
「マリユス…マリユス…!! 」
そこで激昂したようにテティリーヌは鏡に掌を打ち付けた。衝撃を受けた鏡面が小さく震え、細かな傷を作って、テティリーヌの白い指先を赤く染め上げる。真っ赤な炎のように鮮やかな朱色が鏡を伝った。鏡に写るテティリーヌの顔が、血で染まってゆく。
「 父上…?父上ですって」
金を溶かしたような美しい瞳が、侮蔑と恥辱に塗れた色で染まっていた。
「 いくらわたくしを馬鹿にすれば気が済むというの?」
真っ赤なくちびるが震え、ああそうね、と醜く歪んで笑みの形に吊り上がる。
「 そう…そうね……殺しましょうーーいままでやってきたのと同じ。もっと酷く殺してあげる……わたくしに辱められて死ぬがいいわーーあのクソ男」




