久しぶりのギルド
「ただいま、ジュロン」
「お久しぶりです、リール様!本日はどういったご用件で?」
ジュロンに何かを調べてもらうためにリリを使わせていたことはあるが、こうして私自身も含めみんなで来店するのは久しぶりだった。
「久しぶりに依頼を受けようかな」
「おお!どのようなご依頼がよろしいですか?ランクアップに役立つもの、力試しができるもの‥」
「多くお金が入るもので!」
勢い込んで身を乗り出したせいでカウンターにヒビが入ってしまったのはご愛嬌。
「お金‥ですか?」
「うん、実は‥」
「実は‥」
思いっきり深刻な面持ちで口を開く。
「金・欠なんだ」
「え、金欠!?」
ジュロンは、周りを見渡してから顔を寄せて口を開いた。
屈まれたのが悔しい。
「で、でもレイティーン様は公爵家のお嬢様ですよね!?不自由ない暮らしなんじゃ」
「だからなのよ。普通はそうなんだけどうちの親はあなたがよく知っている通り私のことが嫌い。お金は最小限しか渡さないし、それでなんとかなっているのをみていまはほとんど仕送りなし。でも公爵家のお嬢様として色々必要だから、稼がないとなのよ!!」
まあ普通のお嬢様に騎士学校の制服はいらない気もするが‥。
「‥なるほど。では今回は、報酬を分けずに済むように、リール様単独でご依頼を受けますか?」
「んー、それがいいかな。他の二人にもそれぞれ自分が受けたい奴受けてランクをあげてもらおうか」
「承知いたしました。高ランクの方向けの高収入の依頼‥あっこれなら!いや、でも‥」
「どうした?何を迷っている?」
「Bランク以上の冒険者に対して、護衛の依頼がきています」
「それにしよう!」
「‥しかし、その護衛対象の方の素性がわからないのです。」
「素性が‥わからない?」
「報酬の額などからしてかなり高位の方であることは確かなのですが、お名前も爵位も、年齢も何も‥」
「怪しさ満点だな‥」
「それでも、受けますか?」
「報酬額は?」
「3回の警備で、金貨二万枚です」
こんなにお得な話があるだろうか。制服を買ってもまだお釣りがくるじゃないか。
「3回というのは‥?」
「土曜日と日曜日が休みじゃないですか?その二日、それともう1日警備して欲しいらしいです。
「んー、なるほど。」
前回の炎ガエルの魔石は、ものすごく驚かれはしたが金貨千枚程度。薬草なんか金貨一枚だった。
それが三日怪しい人物のそばにいるだけで二万枚。
「受けない手はない!」
すぐにクエストの依頼書にリールとサインした。
「本日も希望日に入っているので、早速お願いします」
「任せろ!あー、言葉遣いはどうしたらいい?」
「その冒険者モードのままで大丈夫です。リール様と面識がある可能性もあるので、くれぐれもバレないようにお気をつけて」
「うん!」
言われたことに従っておもての通りに出た。
しばらく待つと、大きな、でもどこか素朴で目立たない馬車が目の前に停まった。
運転する所から、目出し帽に執事服、シルエットからして背の高い犬の獣人のような、そんな怪しさの塊が降りてきた。
『依頼を引き受けてくれた方ですか?』
そうスケッチブックいっぱいに書かれた濃い青いインクの字で書かれている。
この筆跡、どこかで見たことあるような‥?
そんな考えを巡らす暇もなく、次のページがめくられた。
『乗ってください』
急いで片足を馬車に引っ掛けると、まだ体が乗り出しているにもかかわらず馬車を急発進された。
「うわっちょっと!!」
そう叫んでも気にも留めない様子でぐんぐん進んでいく。
慌てて体を引っ張り込み、馬車の座席に座ると、その異様さに改めて気がついた。
中は思ったよりも広く、上品の色合いの木材や艶やかなシルクの座席からかなりのお金持ちからの依頼だとわかる。
車内に漂う甘い匂いにしだいにくらくらしてきて、次に目が覚めたのは、森の中だった。
「ん‥?」
美しい森、鳥の囀り。
そして‥屈強な騎士とその真ん中に堂々と立つ小さい影。
つば広の黒い帽子の周りに、薄いけれども透けにくいレースが重なり、その顔を巧みに隠している。
「こんにちは。私のことはルーク、とでも呼んでください。」
「ルーク?」
「チェスが好きなんです」
依頼主はどこか不思議で、寂しげで、でも圧倒的支配者感と威圧感がある幼い少年だった。
同い年くらいだろうか。
少年は、
「もし将来あなたが出世して、私に会って正体がバレたら嫌だから」
そう心持ち声を高くして話しているらしい。
「僕‥じゃなかった、私はね、今日一日森でゆっくりしたいんです。普段何かと忙しいもので。」
「でもなぜ冒険者を」
「だってこんな鎧で固めたおじさんに囲まれてちゃ、ゆっくりなんてできないでしょ?私はもっと軽装備の方といたいんです」
そう笑いながら話すから、自然とこちらも警戒心がほぐれた。
「よろしくお願いしますね、ルーク様」
「ルーク、でいいよ。仮名なんだし」
「わかった、ルーク」
「こんなに他人に楽に接してもらったのは初めてだっ!」
なんだか感激と興奮が入り混じった弾けた声で言われ
「あっちの木の実食べたい!」
だっと走り出した彼を一生懸命追いかけながら、後ろをチラリと見ると、騎士が兜を手に持って優しく微笑んでいる。
何か、楽しい思い出を作ってあげたいな。
「い、いやぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!」
「‥え?」
ごめんなさい、投稿を隔週にします!




