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クリスタル‥

ーー気が重い。その分足取りまで重い‥‥。

「頑張れ〜」

相変わらずどーでも良さそうにしててマイペースなカラメロ。

「壊しちゃってくださいっ!」

フラグを立てることが生きがい見たいなリリエッテ。

「かっこいい姿、期待してるよ」

なんか原作と違う少女感のある方向へ進み出しちゃったクラッセル。

「‥‥」

何も言わないけど、ここにいたいんだったら力を証明して見せろ、と目で言ってるグリードン。

「あーー、イヤダイヤダー行きたくなーいー」

と軽く呟いて見たもの手応えがない。

ーーおっかしいな?中学ではこう叫んだらみんな「う、うん」って諦めてくれたのに

  そうか!声量が足りないのか!!

「スゥーーーーーーーーーーっ!」

思いっきり息を吸い込んだけれど、カラメロにとめられた。

「ンゴホッごほっ。ーーーーーーーーーーーーっ!?何するの?」

「なんかだだこねそうだったから。初日からそんなことしたらいくら公爵令嬢とはいえ退学になるよ」

ーーはい、ごもっとも。

  仕方ない。腹をくくってやるかっ!





一歩一歩踏み出して行くごとにクリスタルが思いの外大きいことがよくわかる。

ザリギドル三人どころじゃなさそうだ。

それにしても‥、どうしよう。

剣なんて絶対なしだ。

じゃあつまり‥素手?

愛武器的なものも何もないのだからそれしかない。

でも痛いのは嫌だから、手にふんだんに魔力を込めて強化してっと。

手に魔力を込めて行くうちにクリスタルについた。

この世界にはまだ身体強化魔法などという発想がないようだからバレないだろう。

「よっこらしょ」

自分でも間延びした声だと思うけれど、力を抜くにはそうするしかなかったのだ。

「ははは」

周囲から失笑が漏れる。

ーーでも、私が手を振りかぶった瞬間、耳に痛いくらいの静寂が訪れた。

  てへっ(*´ω`*)

やめて!失笑でいいから誰かなんか話して!

なんかピキピキ聞こえてくるよ?聞こえてくるよ!?

これ「真っ二つ〜」みたいな展開になるよっ!?



しばらく見つめていたが、クリスタルにはなんの変化もなさそうだ。

なーんだ、思い過ごしかー。

びっくりしたーーーー。

ぴき、ぴきピキピキ

徐々にほんの少しの割れ目だったところが伝染して行き、大きな蜘蛛の巣状に広がって、割れた。

粉々に、割れた。

本当に、大きなカマンベールチーズが粉チーズになったみたいに、細かくなった。

「あはっあはははははー」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

ここでぽかんと固まるような人たちではない。

雄叫びをあげ、狂喜乱舞し、この稀に見る怪力少女を歓迎した。

ーあ、そうだ。そうじゃん。

 この人たち力はあればあるほどにいいっていうタイプだったわ。

「すごいっすね、めっちゃやばかったっすよ!」

あのグリードンも目の色を変えて接してくる。

ーええええ。

 力を見せつけるだけでここまで変わるんだ。やっぱ力って偉大なんだなぁ。

 *これは脳筋の間にだけ通じる理論です*

みんなに半ば胴あげみたいにして寮の方へ通されて行く中、一人だけこの熱狂の輪に加わらずぼんやりとしている人がいた。

あれは‥さっきのビート・デュークだ。

どうしたんだろう?

「今夜は豪華なメシにするぞぉおおおおおおお!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

私のささやかな思考は、ザリギドルとその周囲の生徒によって打ち切られた。

あれ?というかクリスタルあのままでいいのかな?

「先生?クリスタルは‥」

「ああ、新しい物を探す‥さ……」

「えと、もしかして私ダメでしたか?」

「あーいやぁ、期待通りだったんだがな。ただあれ、我が国の国家予算三年分は優に超える代物でなぁ」

「ヒャぁぁぁぁぁぁぁぁ」

前世庶民だった私に、国家予算単位で数える必要があるものを使わせないでほし、い‥‥







「おはようございます、お嬢様!」

「‥ん〜、あれ?リリ?」

「はいっ!ここでのお世話も私ですよ!」

「っここは‥‥」

「おはようレイティーン。私が今あなたのおかれている状況を大変わかりやすく説明してあげましょう」

「はい?」

「レイティーンは、高すぎるクリスタルの値段に驚いて、倒れたのだ!そして、ここは君の寮の部屋だ!

 相変わらず体は丈夫だしタフなのに変なところ弱っ‥」

「へぇっ!?つまりつまり、いまは何時でここは部屋なの?」

「二つ同時に聞かないでっ!今は六時で、ここは部屋!」

「夕飯は!?夕飯何時から!?」

「このごに及んでまだ最優先はご飯なんだね‥」

「いいからっ!」

「夕飯は七時からだよ。その汗と泥で汚れたドレスを着替えてからだね」

「私、予備はすでに準備済みですよ!お嬢様。」

「ありがとリリ。ってあれ、私たちだけの部屋?てっきり相部屋とかなのかと‥。」

部屋は木製のシンプルなつくりで、チョコレート色の枠組みのベッドが二つと、荷物をおける小さなラックがベッドの脇にそれぞれひとつ。

そして真ん中には机があるくらいで、対して広くもなく、とてもシンプルだ。

建築様式の古い、味のあるビジネスホテルといえばわかりやすいだろうか。

「公爵令嬢ですし、メイドも、使い魔も、連れているのはお嬢様と殿下だけなので。我々はそれぞれ一つずつの部屋なのです。」

ー公爵令嬢といえばビート!

 彼女は身の回りの世話自分でしてるんだなぁ。

「お嬢様、今夜のパーティーその他色々は我々は出席できません。カラメロは使い魔としてこの先の授業などには同席できますが。私たちに、お嬢様が学校へ通われている間に自由に街に出て冒険者ランクをあげたり見聞を広めたりする許可をくださいませ」

「もちろんいいよ」

リリ曰く、軟禁状態にする主人も少なくはないのだそう。

ー甘いと言われるけれど、私はこんな生活が気に入っている。

リリに服を着せてもらいながら、そんな呑気なことを考えていると

「そういえばあのクリスタル‥」

「あああ!そうだクリスタル‥」

ーー弁償しろとか言われませんよ〜にっ!!!

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