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力加減を教えてくれええ

1日遅れてすみませんっ!

ー女性…?

 いや、別に何も驚くことはないのだ。実際自分だって女性、というかむしろ少女なわけで。

しかし、覇気というか雰囲気は、間違いなく力強い男の人のようだ。

しなやかな歩き方や長身ではあるものの細身であることから、女性だと感じられたけれど。

「ふぅ‥‥」

軽くため息をついた感じは、思ったよりも柔らかい。

鋭い眼光に気圧されつつも、それでも目が話せない。

ーー彼女は‥何者なんだろう。

「初めて生でビート様を見ました!はぁあ!素敵‥」

ーうちのリリちゃんを取られたようでさみしい心地がするのに、いつの間にか目が話せなくなっている。

オリーブグレーのハンサムショートの柔らかそうな髪の毛が、一歩歩くたびに揺れる。



彼女はそっとクリスタルの前で立ち止まると、陽の光を集めたようなヘーゼルブラウンの瞳を細め、左足を力強く踏み出した。

そのまま流れるように右手を振りかぶり、クリスタルに向かっていく。

ー速い。

 転生してからはハエを余裕で片手で掴み取れる(?)ほどの動体視力も得て、有頂天になっていた私が、よく目を凝らさないと見えない。

よくみるとメリケンサックを手につけているようだった。

ーー本当に何者なの?

やはり、というべきか残念なことに、というべきかクリスタルに傷はつかなかったけれども、間違いなくさっきまでの攻撃とは核が違った。

それに、突き出したまま微動だにせず、神秘的な一種の彫刻のように固まっている。

満足気なような、自分ならあれを傷つけられるのではないかと心の中では思っていたかのような表情で、こちら側へ帰ってくる。



ーいい匂い‥。それに近くでみるとすっごいメリハリがあって綺麗な体‥。

すっと横を通り過ぎた彼女に思わずそんなことを思ってしまったけど、変態じゃないからね!?

でも、こちらの世界ではシャンプーにも匂いがないし香水は全部きつめの悪趣味な香りだから、久しぶりにこんなに心が安らぐ香りを嗅いだ気がする。

「ふえぇ〜」

「次、‥‥!」

先生の声も耳に入らない。

「なんか女とはいえレティーが骨抜きにされているのが気に食わないな」

「ビート様は素敵ですけど、やっぱり私はお嬢様をお慕いしておりますから、元気を出してくださいませ!」

「いや〜、とっても元気だよ〜」

「大丈夫、多分レイティーンは頭の中お花畑なだけなだけだから。」

「なんだと〜!」

「みなさんって、仲良いっすよね。」

「え?まあね」

「羨ましいっす」

「なんで?」

軽く口を開きかけては閉じるという動作をもどかしそうに繰り返すグリードン。

ー何か事情があるのかな。

「ぐり‥」

「次!グリードン・ギーマン」

「あーじゃあ、さよならっすね。」

「う、うん。」

ー何を言いたかったんだろう。

 なんとも言えない霧が心に立ち込めているけれど、今はこれを楽しもう!

っとグリードンをみると‥剣を持っていない!?

なんか王道の戦い方を正々堂々とします、って感じの雰囲気だったから少し意外だ。

この通過儀礼は多分、色々な技を見て見聞を広める意味もあるはずだから、珍しい技が見れるのは嬉しいけれど、何をするんだろう。

彼はフレイルを取り出した。

ーおおっ!

 前世異世界ものでくせのある悪役とかが持ってたよ!

頭上に掲げてぐるぐると回し出す。

しゅっと空気が擦れる音がする。

だんだん鈍く重くなって迫力を増してくる。

勢いが頂点に達した時、クリスタルに向けて思いっきりうち当てた。

キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

今までで一番強い音がなって、軽く一歩後ずさった。

彼はクリスタルに向けて敬意を払うようにお辞儀をした後、戻ってきた。



「どうだったっすか?俺の技」

「えーあーうん」

ーー今見たものに興奮して胸の内がざわざわと騒ぐようで、蒸気した頰を笑みの形に変えることぐらいしかできなかった。

それでも彼には十分だったのだろう。

嬉しそうに私の隣に整列した。

ーーなんだかんだ、今改めて、いや初めて異世界にいることと、もう自分にとってここは異世界じゃないことを理解できた気がする。



「次、クラッセル・スティリア‥王太子殿下」

「ここでは生徒なのだから、呼び捨てで構いませんよ」

レイティーンをちらっと見てからクラッセルが歩いていく。

彼はシンプルな剣使い‥かと思いきや。

マントに隠れて見えなかった腰には双剣の鞘があり、そこからすらりと引き抜いて構えた。

「はああっ!」

交差して構えた腕を、クリスタルの上に飛び上がってから左右に戻す。

シンプルで軽やかな動きだし、クリスタルには一切触れていないのに、

キン!

爽やかで勢いの良い音がして、クリスタルとの反発を表現していた。

「わぁぁあ!」

声にならないような歓声が気づくと漏れていた。



帰ってきたクラッセルは私の反応を見て満足そうだ。

ー相変わらずなんか謎に独占欲強いな‥

 そこがいいんだけど!推しポイントなんだけど!

 でもそんなんではいつか言いがかりにしがみついて断罪されてしまう‥

「レティー、次‥というか最後は君だよ」

「あ、はい!」

その前に目下の大問題があった。

ー多分!このチートのせいで!あの石を壊せて大騒ぎになる予感がする!

「お嬢様ならばアレも壊せるかもしれませんね!」

「フラグを立てないで〜〜〜〜っ!」

誰か力加減を教えてくれえええ

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