通過儀礼って、なかなか白熱するね!
そこにあったのはーーー
あれ、なに!?大きな水色の立方体が、宙に浮いていた。そのサイズおおよそ、ガタイのいいザギリドル3人分。彼を横に3人並べたら、まさにこんな感じだろう。
「あれは、洗礼のクリスタルだ」
「洗礼の…クリスタル?」
なんか名前だけは厨二心をくすぐる。
「あれは、どんなものでも壊すことはできない、傷つけることすら、かつて誰もできなかった代物なんだ。」
「かつての戦神ミュレティーン様も?」
「彼女はまだいないっすよ!そこまで歴史ないっす」
笑いながら教えてくれた彼の名前は確か‥‥‥
「ありがとう、ぐり、ぐり‥グリーンマン!」
「グリードンっすよ!なんすかそのグリーンピースみたいな名前は」
言いながら顔を顰める彼。あらあら、どこの時代もみんなグリーンピースが食べれないのね、好き嫌いはよくない
「グリーンピースは嫌い?」
「そりゃあ勿論。あのねちょっとしたやつがあるだけでどんな料理も格がぐんと落ちるっすよ。」
「それはね、美味しいグリーンピースを食べたことがないんだと思うわ。今度料理作ってあげる」
「マジすか!?楽しみっす」
「あーあ、レイティーンに料理を期待しちゃあねぇ。」
「うっ、あのサンドイッチを思い出すとなぜか吐き気がしてきます‥‥」
そんなことをコソコソ言ってる彼女たちには構わず、
「レティー、手作り料理をまず食べさせるのは、この僕だよね?」
「あ、そういえば殿下いたんでした!殿下も食べたいんですか?しょうがないなぁ、腕がなります!」
「王子、やめたほうがいいよ。レイティーンの料理は‥‥」
「おいそこっ!一応授業中なんだが?」
こめかみに青筋を立てたザリギドルにキレられてしまった。
「あー、えっと。洗礼のクリスタルがなんでしたっけ?」
「はぁーーーー
。今からお前たちには、あれに向かってできるだけ勢いの強い攻撃をしてもらう。そしてレイティーン、君には相当期待している。特別枠の王子殿下とレイティーンは一番最後だ。あー、あとグリードン。なんかあいつらと仲良くなったみたいだから、全然この学校について調べてなさそうなこいつらに教えてやってくれな」
「はいっす!ザギリドル先生が言うんなら!!」
とか言いながらも、なんで俺が子守なんかしなきゃならんのだオーラが溢れ出ている。さっき新しい料理に食欲旺盛な年頃だから気分が上がっていた彼は、もうあっという間に下がったようだ。
「早速質問いい?」
「なんすか」
うわっ。めっちゃ虚ろで落ち窪んだ目………。
リリとカラメロが後ろでひいてるよ。あ、因みに彼女たちは学校には通わないが、従者としてついてきてくれたのだ。
「あれにはどうやって攻撃したらいいの?」
「えーと」
目は虚で背中は猫背になり、せっかくガタイいいのに小さく見える。
なんか感情わかりやすすぎっ!仲間だな。仲良くなれそうだ。
というか今更だけどシックスパック綺麗だなぁ。入学式初日の今日は服装自由だったから、グリードンは下半身の長ズボンだけだ。今4月だから気温はちょうどいいんだろうなぁ。
「よし!どういえばいいかまとまったっす。あれには、どんな武器、方法を使ってもいいから持てる最大限の力で攻撃するっすよ。ただ、魔法はダメっす。」
「なるほど‥?」
長い間考え込んでいた割にはシンプルだな。筋肉に頼る学校らしく、やはり魔法はダメなんだな。
って、使えない設定だけど。
「あのさ?念の為に確認させてもらうけど‥‥‥」
「なんすか?」
「私が、魔法使えないって知った上で言ってる?」
もしそうだとしたら結構残忍な性格の持ち主だ。まぁ本当は使えるから何言われたって傷つきやしないけど
「えっ?だって、公爵家のお嬢様っすよね!?」
「あー、うん。そだねぇー」
「え?えええ!?」
よかった、ただ世間に疎すぎるだけだった!意図的に嫌なこと言って嫌がらせするようなやつじゃなかったらしい。
「あ、も、もしかして、あの魔法使えないお嬢様っすか!?」
どんな噂届いてんだろ。
「そうよ」
「あ、あ、すみませんっした!」
「もういいよ、それよりあれみて。もう始まった。」
「ま、マジっすね!」
少し慌てたように同調する。
やっぱり悪い人じゃなさそうだな〜。
最初、つまり先生たちに一番弱そうだと判断された生徒の攻撃が始まった。
闇雲に走っていって、剣をクリスタルに突き立てる。
キーーーーーーーーーーーーン
耳鳴りに近いような音がして、その生徒は弾き飛ばされた。
その次も、その次もそう。みんな弾き飛ばされては、呆然とした顔で自分のクラスのところに戻っていく。
「終了!」
こうして、通称『底辺組』と呼ばれているらしい(グリードンが教えてくれた)クラスの洗礼が終わった。
それにしても悪意ある呼び名だ。
一学年5クラス。明らかに、後になるにつれて生徒の質が変わってきてる。
真面目に力をつけたい生徒たちを誰一人として拒まないという信念のもとテストがないのだが、先生たちの組み分けの審美眼は本物だったようだ。
最初は弾き飛ばされるばかりだったものも、数歩よろけるだけで耐えられるようになってきたり、四組なんかはなんとか踏ん張れるものさえいた。
しかし、誰一人としてあの大きなクリスタルに傷をつけられるものはいない。
勢いよく向かっていく生徒に期待をして、時々歓声が上がったり声援が聞こえたり。
通過儀礼って、なかなか白熱するね!
「終了!次、五組!!」
はっとする。
明らかに‥会場の空気が変わった。
堂々と足を踏み締めてつつ、少し俯いて歩く彼は、剣も何も持っていないのに、マントを着ているのに、肌で感じられる強者の風格ってやつを持っている。
初めて、あれに剣なしで挑むもの。
彼はなんていうんだろう。
「初めは、ビート・デューク!」
デュークは‥うちと同じ公爵家だ。しかし、男なんていたか?
クリスタルの目の前でさっと顔を上げる。と、同時にマントも外れて、そこから顕になった顔に息を呑む。
女性‥‥?




