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婚約披露パーティー①

「はぁあ…」

「未来の王妃がそのようにため息をつくものではありませんよ」

「うう…はい」

今、ソファでぐったりする私、横でぴんぴんしてるキーシー、ドレスをウキウキで片付けているリリ、宝石を観察してるカラメロという構図だ…。

「明日の婚約披露パーティー、楽しみですね!お嬢様!!」

「なんでワンセット選ぶのにあんな量試着しなきゃなんないのよ〜」

私だって乙女心が一切ないわけではない、ないから最初は楽しんでいたが…

「三着目で飽きましたぁ…」

体力お化けな私でさえこれなのだから、世の高位令嬢たちは本当に尊敬する。

「本番は明日だよ、がんばれ〜」

「ふい…」



「お綺麗です!お嬢様」

誰もが一度は梳きたくなるようなさらさらの生糸ような銀髪を惜しみなくさらし、薄紫の瞳は普段よりもこころなしか力強く見える。もともと形のよい唇が弧を描いてこちらに星屑を周りに散らしたかのような笑みを届ければ、心を奪われないものはいないだろう。

客観的に見ると、やはりレイティーンはかなりの美少女だ。だけど…

「リリも本当に可愛いわね」

「まあ!嬉しい!」

もしやこのレイティーンは美しく、リリは可愛い。それは若干リリの方が優っているくらいで、男爵家で光魔法の使い手で優れた容姿…。でれも『ヒロイン』に当てはまるではないか。ジュロンに調べさせたところ他に光魔法が使えそうな男爵令嬢もいなかったし、もしや……

「嬉しすぎてシュトンが飛び出そうです!」

いや、ないね!シュトンとは彼女愛用の大剣のことだ。この間うっとりしながら紹介してくれた。

「何か物思いしてるね。いいじゃん、脳筋なんだから気楽に行きなよ」

脳筋といえば、この間決めた意思「一人でも多くの笑顔を守る」は、結局パワーで全て解決すると思い当たった。力こそ正義!

「そうそう、そのアホっぽい顔。リラックス!」

「リラックス〜。んじゃなくて、ひどくありませんか!?容姿だけは褒めてくださいまし!」

あ、容姿だけって認めちゃった

「てへぺろ」

「こんの〜!」




スカートをたくし上げてカラメロを追いかけようとしたところで足音を私の有能な耳が聞き取る。

「…」

スッと居住いを正して待っていると、元気よく王子がやってきた。

「わあ!本当に可愛いね!でもね、その可愛さは僕の前だけで出して欲しいな。みんなが君を欲しがっちゃう」

開口一番に口説かないでええええええ

「ちなみに、キーシーに僕も意思を決めろ、って言われたんだ。そして決めた。僕は…」

「え?え?え?言ってしまうのですか!?」





「レティーを心の底から愛でる!観察する!一挙手一投足まで脳裏に焼き付けるぅ!!!」

重要でもなんでもなかったぁぁぁぁぁぁ!叫ばないでっ!てか、なんでこんなに気に入っちゃったんだよお、レイティーンを…。作中ではただの一貴族として見ていたのに…。

「さあ、行こう。みんなに僕の婚約者のかわいさを教えてあげなくちゃ!……不本意だけど」

「は、はい…」







ガタゴトガタゴト

心地よい馬車の揺れ。横に…クラッセルさえいなければ……。

「僕がなんで君にひかれたのか、知りたい?」

今馬車には気をつかって他の人は乗っていない。

「え!?あ、はい。もちろん」

断罪回避の有効な手札になりそう!

「ええとね…」






「はぁはぁはぁ」

「流石です!クラッセル王子…」

「ハァハァご謙遜を、剣聖殿」

「わぁー!!!!」

「おお!遂に殿下が剣聖を!」

「本当に…4歳、なのか…!?」 

大きい歓声の中、軽く微笑んでお辞儀をし、クラッセルは競技場から去る。

ーーうるさいな。頭が痛い。

剣聖を負かしたとあってはうれしくないはずはないのだ。だが、明らかに手加減していたはずだ。見ていた人々かは気づいていないようだが……。この完璧王子という称号は素直に誇りだが、一部は権力に群がるハエどもによって作られていたりするので心から好きかと言われると微妙だ。 




規則正しい靴の音が競技場の回廊に反射する。

「お忙しい所申し訳ありませんが、レイティーン公爵令嬢のお見舞いに行かれる明日の予定、本日に前倒しできませんか?」

「なぜ?」

「誕生日だそうでして…」

「そうか…」

誕生日は今日わかった訳ではないだろうに

「わかったよ。今から行く。馬車をだしてくれ」

そんな気持ちはおくびにもださない。

「かしこまりました」

あ〜あ、めんどくさい。あれか、この間パーティーで僕を見て失神した。まぁ、ちょっと興味はあるな。よく姿も前はみなかったが。

母からできれば婚約してリキャリニス家を後ろ盾にしろとかいわれてるけど、そんなことどーでもいい。僕は周りによいしょされているの抜きにしても、未来の王でこの国で2番目に偉いのだから。





「つきました」

「戻っていいよ」

御者だけ戻して何人か家臣を連れて行く。母の臣下を普段借りているのだ。

立派な門構え。流石に王宮には遠く及ばないものの、権力を感じさせられる。

「レイティーンは?」

門番がいた。

「誰だ?」

「…」

胸元から王家の紋章が彫られたネックレスをだすと警戒していた槍を即座におろし、頭をさげて通してくれる。 

「今頃は中庭にいらっしゃるかと…」

「わかった」 

中庭。誕生日の日に取り巻き令嬢でも呼んで優雅に茶会かな。なんか完璧ではあるけどだから高慢で手のつけられない、人間味のない少女だと聞いていた。4…いや、5歳にして。

ーーいない?どこだ?どこにいる!?

離れと思われる本邸とは比べ物にならないがしっかりした建物と、その裏にこじんまりした東屋をみつけた。

「まさか…」

ーー!?いた。家来とにこやかにお茶をする、とても傲慢な公爵令嬢とは思えない愛らしい少女が。

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