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第67話 覚悟

「ああ、あの子は基本的に一匹狼なんですよ」

「そうですか……」

「普段はこの世界にいないですし、大抵のことは自分だけで処理してしまいますから。それだけ優秀ではあるってことですね」

「ここにいないってなると……私とかを連れてきてくださったのもあの方だったりするんでしょうか」

「そうですね――特に何事も無ければ独りでこなしているでしょう」

「今度会った時にはお礼を言っておこうかな……あたふたしてまともに会話できていなかった気がして、申し訳なかったです」

「そういうことを気にする質ではありませんよ。むしろ気を悪くしかねないので、できるだけ素で接した方が良いでしょう」

「ちょっと気難しそうですよね」

「根は悪い子ではないんですけど――実力主義の弊害とでも言いますか――頼るならまずはあの子に頼るのが確実ではあるでしょう」

「……偉い人より頼りになったりして?」

「そうですね」


 なんかどっかでズッコケる感じの音がした……?


「武器の扱い方を教えても良いよって言われたんですけど、そういうのって今後必要になったりするんでしょうか……全然そんなイメージわかないんですけど」

「危険なところに行かなければ必要は無いですよ」

「危険なところとかあるんですか? 紛争地帯とか?」

「そうですね――紛争といえば紛争ですかね」

「……知らない方が良いところでしょうか」

「そうですね」

「危険そうなところには近寄らないようにします……」

「それがいいでしょう。あなたがそんなことをする必要は全くありません」

「みなさん結構危険なこともされていらっしゃるんですか?」

「そんなことはないですよ。私なんかは特に、普段は平和な世界の維持に努めているだけです。件のあの子が最前線に立って、もう一名が積極的に関わっているくらいですね。残りは万が一に備えているだけです」

「ではみなさん戦うことはできるわけですね」

「まあそれなりには、ですが」

「なら私も、おいおい対応できるようにはしておくことにします」

「……いいのですか? そんなことは望んでいないでしょう?」

「いえ、この世界を守るために必要な事なのであれば、私だけが見て見ぬふりをしてしまったら、みなさんに顔向けできないです……」

「そんなこと気にしなくていいんですよ」

「もちろん自分に出来ないことを引き受けるつもりはありません。でも、できることを増やしていきたいなとは思います。それが大切な世界を守ることにつながるのであれば、なおさらです」

「……なるほど。そういうことでしたら、その思いを否定しては失礼ですね。無理なさらないようにだけお願いします」

「おととい同じことを言われました」

「そうですか。あの子がそんなことを――」




「それでは、今日はこんなところで」

「また来週お会いしましょう」


 遠ざかっていく車を眺めつつ、おもむろに鎌を取り出してみる。ここまでは流れるような動作で出来る。このまま振り下ろせば異世界とつながる亀裂を作ることも出来る。他にもできることはあるが、世界を守るどころか自分の身を守ることすらできない。


 つくづく自分には何も出来ないんだなあと思い知らされた。いつまでもこんなことでいいのだろうか。無理はするなと言われているが、いつまでたっても無理なままでいてしまっては、自分で自分が嫌になりそうだ。すくなくともこの世界が何かに脅かされることがあったとして、そのとき何も出来なかったら、絶対に後悔する。


「そうなることだけは避けないとな……」




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