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第65話 職務質問

「こんな夜中にお勤めですか。まぁ私が連れてくるのも大抵は深夜ですけど」

「いえ、ただ散歩していただけです。怪しいことはしていません」

「別に怪しんでいるわけじゃないですよ。その鎌を装備しているセンスには、ちょっと思うところがありますけど」

「え……」

「鎌を隠し持って夜中に徘徊するなんて、良い趣味してますね」

「なぜそれを……」

「せっかくだから試してみますか――」

「!」


 身の危険を感じたので、とっさに鎌を出して身構えた!


「……鎌を何だと思ってるんですか? そんな構えで何ができると?」

「いや、ただの防衛本能の賜物なので、特に何も考えてません……」

「ハァ……なんで鎌なんて装備してるんです? そういう趣味ですか?」

「なんというか、話の流れで……」

「意味がわかりませんね。あの方も意味不明なノリが多くて困ります、本当に」

「あの、もしかして」

「何です?」

「この前の日曜にお会いしましたか?」

「まぁ、チラッとだけは。邪魔が入ってすぐに退散しましたから」

「そうですか……どうしてこんな夜更けに私に会いに?」

「それはこちらのセリフです。たまたまこんな夜更けにフラフラしてるのを見かけて、日曜に話し損ねていたので、ちょうどいいと声をかけたまでです」

「えっと……はじめまして」

「挨拶は初めてですね。どうも」

「それで……」

「あなた、無理してませんか?」


 えっ?


「特には……」

「最近、嫌な仕事を押し付けられたでしょう? 私は反対していたんですけど」

「あ、ああ、スカウトの件ですか」

「そう、それです。嫌だったら、いつでも辞めていいんですよ」

「嫌というほどでは……」

「でも正直なところ、先が見えない中で根を詰めてしまっているのでは?」

「うっ――その通りです」

「それでこんな夜中に徘徊をしていたと」

「まあ――そうです」

「そのまま続けて精神でも病んだらどうするんです? あの方も、こちらに連れてきたあなたが奇跡的に馴染めたというのに、なんでこんな危険なことをさせるんだか」

「……心配してくださってるんですか?」

「心配も何も――あ、いえ、とにかく――無理だけはしないように、ご注意を」

「わかりました……慎重に事を進めます」

「あと、せっかくですから鎌の使い方も教えますよ」

「えっ?」

「その鎌は飾りじゃないんでしょう? ただ持ってるだけでご利益があるとでも、お思いですか?」

「これは武器として使う予定はないので……」

「さっきみたいなことがあったら、どうするんです?」

「あるんですか……?」

「そんなの、わかりませんよ」

「そうですか……」

「嫌なら別にかまいませんよ」

「嫌というほどでは……」

「……私自身がストレスを与えてしまっても本末転倒ですね。今はもう日付も変わって武術なんかを嗜む時間帯ではありませんから、もし興味がありましたら改めてお会いしましょう」

「どうやってお会いすれば……」

「簡単です。会いたいって思って頂ければ参上します」

「そんなことができるんですか」

「何の因果かそういう能力を得てしまったので、活用しているまでですよ」

「そうですか……それでは、そのうちお願いします」

「では今夜のところはこれで、おいとましますね」


 そう言って忽然と消えてしまった。




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