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第60話 あの方

「後悔しているわけじゃないんですけれども、思った通り難しいなあと……」

「そうですね――わたしもその計画をはじめに聞いたときには、随分と無茶なことを考えるものだと思ったものです」

「そうですか……この計画って偉い人が考えたものなんですか?」

「キッカケはそうですけど、計画としてまとめたのは私の同僚のうちの一名ですね。ただ、まとめたと言っても中身については疑問符だらけだったそうです。計画の詳細を話しながらツッコミまくっていましたよ」

「同僚って何名いらっしゃるんですか?」

「私の他に三名ですよ。そういえば、まだちゃんと顔合わせしていませんね。あまり皆で集まるということをしないもので」

「ああいえ、お忙しいのでしたら私なんかのために時間を割いていただかなくていいんです。今の質問も、ちょっと出過ぎた真似だったかなって後悔しちゃいました」

「そんなことはないですよ。もう私たちは仲間みたいなものですから、あなたに隠し立てするようなことは特には無いでしょう。ただ――」

「ただ?」

「知らない方が良いことはあるのかもしれません」

「……」

「世の中知らない方が良い事っていうのは、あるものです」

「そうですか……」

「おどかしてしまいましたか? そういう意図ではなかったのですけど……お気を害されたならすみません」

「いえ、なんとなく私の想像の範囲を超えてそうなアレコレが見え隠れはしているので、気を使って頂いているんだろうなってことは、なんとなくわかります」

「そう言っていただけると嬉しいですね」


 うーん、やっぱりイケメンだ。でもちょっと気になることが――


「あの、それとは別に気になった事があるんですけど」

「なんでしょう?」

「あなたは私にいつも気を使ってくださっていますけど、偉いあの方に対しては、あんまりそうじゃないですよね」

「あー……あのお方は、まあ、気を遣うだけ無駄ですから」

「なんか因縁みたいなものがあるんですか?」

「そうですね……因縁……言い得て妙かもしれません」

「先週お話した時の感じだと、他の同僚の方も似たような関係にお見受けしたのですけど」

「はは、まあなんというか、全部あの方の自業自得ですよ」

「……なんか酷いことをされたりするんでしょうか?」

「そうですね……私は特には被害を受けていると思ってはいませんけれども、考え方によっては酷いことをされたと感じてしまうのかもしれません」

「ちなみに具体的にどういう事をされたのか、お聞きしても――」

「本人がすぐそこにいるのに、随分と大胆ですね」

「!」


 あわてて収集車の方を見たが、車内ではボケーっと半分寝ていそうな人がいるだけだ。あ、あくびした。


「まあ本人が嫌がるようなことはしないですから、安心してください。ちょっとその、あとになって、こんなことになるとは思わなかった、みたいな副反応とでも言いましょうか、同僚の弁によると『だまされた!』となったりするわけですけれども……」

「いろいろ覚悟だけはしておいた方が良さそうですね」

「前向きな姿勢が大切です」

「そうですか……」

「あなたなら大丈夫ですよ。そう思ってなければ私が止めてますから」

「それを聞いて、すこし安心できました」

「よかったです。それでは、今日はこんなところで」

「また来週お会いしましょう」




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