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俺と京香のこれまで(リュウ視点)

俺は、『異端児』だった。





両親は、『平凡』という言葉を体現したような人たちだった。

容姿も、運動神経も、経済力も、多少の得意不得意はあったにせよ、あくまで『普通』の範囲内だった。

だから、俺が産まれたときは、非常に驚いたそうだ。

産まれて1ヶ月経った頃には、もう目鼻立ちが整っているのが見てとれた。

愛想もよかったため、『まるで天使のよう』と言われた。

見に来る人全員にほめられ、自慢に思い、最初は俺のことを可愛がってくれたらしい。

だが、あくまでも赤ん坊だから可愛いのであって、成長していくにつれて、自分たちのように平凡になっていくだろうと思っていたらしい。

そんな両親の思いとは裏腹に、成長していくにつれて、俺の美貌は冴え渡っていく一方だった。


俺は、自分で言うのも何だが、めちゃくちゃ綺麗な顔をしていると思う。

こんなことを言うと、ナルシストと思われるだろうが、事実なんだから仕方がない。

芸能人でも、俺より綺麗な顔はなかなかない。

スタイルも抜群で、モデルになってもやっていけるだろう。




この見た目は非常に便利だった。


幼いころから特別扱いは当たり前だった。

望んだものは、誰かが買ってくれた。

人間は俺の機嫌を伺って動いていた。

ほとんどのことは、思い通りに進んでいった。



だが、その良すぎる見た目は、弊害もうんだ。


俺に夢中になりすぎた人間には、思い込みの激しいやつもいて、ゴタゴタに巻き込まれることはよくあった。

犯罪にもまことに巻き込まれやすかった。


ストーカーや誘拐犯、幼児愛好者等、変な輩に狙われ続けた。

そいつらは、決まって同じようなことを言う。

『リュウは俺のものなんだ!』

『私とリュウは両思いなの!邪魔しないで!』

『リュウも私のものになることを望んでるの!』




最初は、そんな連中から俺を守ってくれていた両親も疲れてきたんだろう。


次第に、何かに巻き込まれても、『またか』とほっとかれるようになった。

『お前にも問題があるんじゃないか。』

の言葉とともにな。

たった小学校2年生の子どもに。



周りを囲んで離れなかった連中も、親から『あの子と遊ぶと、危険なことに巻き込まれるかもしれないから。』と、俺と遊ぶのを禁止されたらしく、俺から離れていった。






残ったのは、生まれたときから一緒の京香だけだった。

確かに京香は、俺を特別扱いしなかったし、俺から離れていかなかったし、俺を純粋に友達として好きになってくれた。

俺は、それまで別に京香が特別好きな訳ではなかったが、独りになるのが怖くて京香と一緒に過ごすようになった。

そのうち、少しずつ京香のそばが心地よくなり、京香に惹かれていったんだと思う。


今思えば、それがよくなかったのだろう。

俺と京香は、近所の公園から家へ帰る途中に変な女に連れ去られてしまった。

抵抗したが、女の力とはいえ、幼い子供が勝てるもんじゃなかった。

俺たちは、マンションらしき一室に閉じ込められた。

部屋に入れられて、女が変装のためだろうサングラスと帽子をとると、驚くべき顔が下から現れた。

……小学校の担任だった。

数少ない信頼していた大人だっただけに、俺は呆然としてしまい、いつもはすぐに行う抵抗と拒絶を忘れてしまっていた。



「リュウくん、リュウくん、今日からは一緒に暮らそうね?リュウくんも嬉しいでしょ?私、リュウくんのためなら何でもするし、リュウくんが大人になるまで待てるから心配しないでね?ああ、リュウくんったらそんなにうれしいの?かわいいっ!」



触られそうになって、嫌なのに、体が動かない。


「せんせい!リュウにさわらないでください!リュウがいやがってるの!!」

「……まあ、京香ちゃんったら何言ってるの?リュウくんが嫌がってるのは京香ちゃんよ?いつもリュウくんにべたべたして!」

「リュウはいやだったら、いやだっていいます!」

「……本当邪魔な子ねえ……どうしたらいいかしらあ……?」



ヤバい!目が怪しくなってきてる!




「リュウにさわらないでくださいっ!!!」

「きょうか、もういいからはなれろっ!にげろっ! 」

「やです!リュウもいっしょじゃないとやです!! !」

「きょうか……。っっくるな!くるなよっっっ!! !」

「やめてくださいっっっ!!!」








……結局そのときは、二人で部屋の中を逃げ回り、大声で助けを求め、物を投げつけて抵抗しているところに、大きな物音や叫び声に不審に思った隣人が来てくれて俺たちは助かった。







……京香は逃げなかった。

ほかの人間は、両親ですら逃げたのに。

自分が危なくなっても俺を見捨てなかった。



……多分、そのとき完全に俺の中の“特別”は京香になったんだろう。



その後、両親からも見捨てられた俺を、特別扱いせず、見捨てず、愛してくれたのは、京香と京香の両親だ。

俺を、京香が拾い、京香が愛情を注ぎ、京香の両親が、実の子と分け隔てなく育ててくれた。



京香の両親には、感謝している。

これ以上迷惑をかけたくなくて、中等部に上がってすぐのころに、デザインのコンテストを見つけ、デザインは好きだったので、募集してみた。


運よく入賞できた俺は、容姿のことからも、すぐに有名になった。


『美形デザイナー』『麗しき貴公子』『美しすぎる若き才能』

下手をすれば、デザインのことには全く触れていない記事も多かった。



成長して、変な輩を自分で撃退できるようになったのもあって、また俺の周りには人が集まりはじめた。

だが、“デザイナーとしての俺”や“俺の見た目”しか目に入らないやつ、俺の気持ちなんて考えもしないやつばかりで、“俺自身”を見るやつはいなかった。


その時、俺は心底分かったんだと思う。

『俺には京香だけだ』

『京香のためなら、この容姿すらも利用して生きていこう』

『京香がいなきゃ生きていけねぇ』







それなのに、今度は京香が狙われ始めた。


『貴方にあんな女は相応しくありません!』

『リュウ様のご迷惑も考えずにまとわりつくあの女が悪いんです!』

『あの女はリュウ様に害しかもたらしません!』




何故、俺のことを知らないお前らが口を出す?

俺に相応しくない?

どうしてそれをお前らに決められなきゃいけない?

迷惑?

俺がいつんなことをい言った?迷惑なのはお前らだ。京香が何をしたって俺にとっては嬉しいだけだ。

害?

京香が俺に害なんてもたらす訳がないだろ?もしそうだとしても、京香がくれるんなら害だろうがなんでもいいんだよ。






俺にとっては、京香だけが絶対だ。

京香のそばにいれるんなら何でもするし、京香が喜ぶならほかのことはどうでもいい。

この感情は、恋なのか、愛なのか、執着心なのか、依存なのか、それともあらゆる想いが交ざり合わさったものなのか、もう自分でも分からない。

確かなのは、年月を重ねるごとに純粋で綺麗だけな気持ちではなくなっていることだ。

……京香にとって、この想いが迷惑であっても、もう止められない。

もう、京香を諦めることなんてできない。


……だから……もし京香を俺から奪おうとしたり、京香に害になることをしたりするやつがいるんだったら……全力で排除してやる。



京香……ずっと一緒に過ごそうな?

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