京香の頼みなら、堕として利用してやる(リュウ視点)
何だ……大したことなさそうなやつじゃねーか。
京香を腕の中に閉じ込めたまま、相手にばれないように観察する。
別に美的感覚がおかしいわけでもないので、この男が世間一般でかっこいい部類に入るのは分かる。
だが、俺には遠く及ばないだろうし、こいつよりも、レンやアキラのほうがよっぽどいい男だし、厄介だ。
京香に惚れるやつは、一筋縄ではいかないやつが多いからな。
こいつは、京香に惚れてるわけじゃないのなら、さっさと退治してもう京香に近寄らないようにしておいて、残りの時間を京香と過ごしたい。
店に連れてって俺好みに着飾りたいし、今度こそ二人っきりでケーキを食べに行きたい。京香が読みたがっていた本も買ってやりたいしな。
そう思い、顔をあげ、そいつに俺の顔が見えるようにし、睨み付け、言葉でも攻撃を始める。
だが、どれだけ睨み付けても言葉で攻撃しても、全く堪えない、というか、俺の声が聴こえているかどうかも怪しいような表情をしてやがる。
ちっ!
またいつものうざったいタイプかよ!
俺の顔は、老若男女を夢中にさせるらしい。
俺の顔を見ると、たいがいの人間は決まって、目を潤ませ、頬を染めながらポーッと俺を見つめ始める。
俺は京香みたいに鈍くねーから、目の前のこいつも今までのやつらのように、自分に堕ちたんだということが分かる。
……ったく、堕ちてほしい京香は全く堕ちてくんねーのに、余計なやつは何もしなくても堕ちるんだからな。
つーか、揃いも揃って、マゾかよ?
俺は一回足りとて、俺に堕ちたやつらの喜ぶようなことを言ったりしたりしたことはない。
むしろ、邪魔なので、何か話しかけてきても無視をしたり、ぞんざいに扱ったり、暴言を吐いたりしているんだがな。
京香以外にとっては、かなり酷い男だという自覚がある。
だが、俺が優しくしたいのも、話しかけたいのも、喜んでほしいのも、俺をみてほしいのも、俺が触りたいのも、俺のものにしたいのも全部全部京香だけなんだから仕方がない。
ほかは、全部邪魔だから、俺たちに近付いてきてほしくない。
なのに、どうしてか俺に近付き、俺に夢中になっていくやつらがあとをたたない。
全部ぜーんぶいなくなっちまえばいいのにな……。
まあいい。
とりあえず今は、京香の願い通り、とっとと白状させよう。
「おい、誰かお前に命令したやつがいるだろ?吐け。」
「あの……その……。」
「早くしろ。」
「……あの……。」
すぐに答えないやつにイライラしてくる。
さっさと答えればいいものを。
……こういうやつには、容赦する必要はないよなあ?
だが、こんなやつ、京香に声をだしただけでも万死に値するのに……京香に頼まれたからまだ手はだせない。
……こういうやつには、関心を向けないほうが効くはずだ。
「……分かった、もういい。」
声から感情をそぎおとし、顔から表情を消し、踵を返す。
京香に向けては、いつものように蕩けた笑みと甘い声で
『京香、行こうぜ。』
と声をかけ、京香の手をとり歩きだす。
「待ってください!!!話しますからっっっ!!!」
叫びながら、俺の手を掴んでくる。
「触るな。」
予想通り、すがり付いてきたので、もう一押しとばかりに、手を思いっきり振りほどき、そのまま立ち去ろうとすると、いきなりベラベラと話しはじめた。
「命令したのは、山崎百合って女です!別に俺がしようと思った訳じゃなくて、あの女に無理矢理……俺はとめたんです!俺のせいじゃない!悪いのはあの女です!」
……山崎百合?
誰だ?
……まあいい。白状したからには、あとはこいつを利用して、その女を追い詰めるだけだ。
これ以上こいつの言い訳を聞くのもうざったいしな。
連絡をとれるようにしておいて、今日はこれで京香と二人っきりで過ごそう。
…………そう思っていたのに…………。
「京香ちゃんっっっ!!!」
「レン!?」
「京香ちゃん無事!?」
……何でここにレンのやろうがきやがる。
うぜえ。
こいつは、邪魔以外の何者でもない。
せっかく京香と二人っきりでデートをしようと思ったのに。
こいつを追い払うのは手こずりそうだ。
気合い入れないとな。
……ああ、早く京香を独り占めしてえ……。




