丹田を探していたらもらしました
――それから、一週間が経った。
その間、俺は何度もステータスを確認した。
何か新しい項目が増えていないか。
スキルに変化はないか。
もしかしたら、何かできるようになっていないか。
そんな期待を込めて、何度も確認してみた。
だが――。
何度見ても、表示される内容は変わらなかった。
ステータスを何度も開いたり閉じたりしてみても、何かを念じてみても、特に変化はない。
実は、召喚魔法も試してしまった。
最初は、前に決めた通り、もう少し成長してから試そうと思っていた。
けれど……。
やっぱり、気になるものは気になる。
(召喚!)
心の中で叫んでみる。
……何も起きない。
(召喚!)
もう一度。
……やっぱり何も起きない。
(召喚魔法!)
今度は、もっと強く念じてみる。
魔法陣が現れるところをイメージする。
その魔法陣から、何かが出てくるところまで想像してみる。
けれど。
「…………」
何も起こらない。
(……ダメか)
それなら声に出してみよう。
「ばぶばぶぅ」
(……くそぉ)
その後、何度召喚魔法を試したが、一向に魔法の使い方なんて分からなかった。
それなら、せめて魔力を鍛える方法くらいないだろうか。
そう考えるとすぐにある考えが浮かんだ。
――丹田。
漫画や小説では、魔力や気を集める場所として出てくることがしばしばあった。
小説の主人公は丹田を割とすぐ発見する。
何か違和感があるぞ、とかあったかい場所があるぞとか、わけのわからんことを言って。
それを信じるとしたら確か、おへその下あたりだったはずだ。
……試してみるか
俺はベッドの上で、おへその下あたりに意識を向けてみる。
もちろん、そこが本当に丹田なのかは分からない。
意識を向ける。
集中する。
それだけ。
「…………」
何も分からない。
自分の内臓がどこにあるのかを知識として知っていても、それを実際に感じ取れるわけじゃない。
丹田だって同じだ。
意識を向ければ、すぐに特別な場所が分かる。
そんな簡単なわけないよな、実際。
「…………」
それでも、もう少し続けてみる。
おへその下を意識する。
何かないかと考える。
集中する。
けれど、何も感じない。
温かいものもない。
力が集まる感覚もない。
魔力らしきものも、まったく分からない。
「……やっぱり無理か」
そう思いながらも、俺はしばらくそのまま集中していた。
すると――。
「…………ん?」
急に腹のあたりに違和感があった。
なんだ?
そう思った直後。
「…………まさか」
お腹がぐるぐると動く。
嫌な予感がする。
でも、今の俺にはどうすることもできない。
「…………」
そして。
ぷすっ。
「…………」
一瞬、時が止まったような気がした。
続いて、明らかに覚えのある感覚が襲ってくる。
「……丹田が出てしまった」
気づけば、俺はおもらししていた。
しかも――大のほう。
「俺、何やってるんだ……」
魔力を鍛えるどころか、赤ん坊としての生理現象に負けてしまった。
そのまましばらくしていると、扉が開いた。
「レオン、どうしたの?」
母さんの声だった。
母さんは俺の様子を確認すると、すぐに気づいたようだった。
「あら……」
少しだけ困ったように笑う。
「出ちゃったのね」
「…………」
俺は何も言えない。
言いたくても、今の俺にできるのは声を出すことくらいだ。
「よしよし。すぐに綺麗にしましょうね」
母さんに抱き上げられる。
いつものことながら俺は恥ずかしさに耐えながら、されるがままになった。
しばらくして、着替えも終わる。
「これで大丈夫」
優しく声をかけられる。
「……あぅ」
情けない声が出た。
母さんはそんな俺を見て、微笑んでいる。
俺は心の中で深いため息をついた。
召喚魔法は使えない。
丹田も見つからない。
魔力も感じられない。
それどころか、集中していたら大便をおもらししてしまった。
「……先は長いな」
今の俺は、まだ生後三か月。
魔法を鍛える前に、赤ん坊として成長することが先なのかもしれない。




