転生特典、見つけました
それから三か月が経った。
俺は少しずつ、この世界での生活にも慣れてきていた。
母さんに抱かれたり、ミルクを飲んだり、眠ったり。
毎日はそんなことの繰り返しだ。
兄のカイルも、姉のアリシアも相変わらず毎日のように顔を見せに来る。
それは嬉しい。
でも――。
「暇だ……」
できることが少なすぎる。
体を自由に動かせるわけでもない。
外に出ることもできない。
話すことだって、まだまともにはできない。
そんなある日。
俺はふと思い出した。
転生したのなら、何か特別なものがあってもおかしくないんじゃないか。
いわゆる、転生特典というやつだ。
「……何かないかな」
もちろん、そんなものが本当にあるのかは分からない。
でも、何もしないよりは試してみる価値がある。
俺は頭の中で、いろいろな言葉を思い浮かべてみた。
ステータス。
すると――。
目の前に、半透明の画面が現れた。
「……!」
本当に出た!
俺にしか見えていないのか近くにいる母さんは何の反応もしていない。
見えてたらヤバかったので結果オーライだ。
【名前】レオン・アークライト
【年齢】0歳
【性別】男
【種族】人間
【スキル】召喚魔法
こう表示されていた。
「……召喚魔法?」
俺は表示された文字をじっと見る。
最初から、スキルの欄に一つだけ名前が表示されていた。
召喚魔法。
魔法という言葉に、さすがに驚く。
これまで俺は、この世界についてまだほとんど何も知らない。
だから、この世界に魔法があるのかどうかすら分からなかった。
でも、俺のステータスには確かにそう表示されている。
「俺、魔法が使えるのか……?」
それだけで、少しわくわくしてしまう。
召喚魔法という名前から考えると、何かを呼び出す魔法なのだろう。
(……召喚魔法か)
名前だけでは、具体的に何ができるのか分からない。
せっかくスキルを持っているのだから、詳しい説明くらい表示されてもいいはずだ。
こういうのは、前世で読んだ小説ではよくあった。
スキル名を意識すれば、詳細な説明が表示される。
そんな展開だ。
俺は「召喚魔法」の文字に意識を集中させた。
じっと見る。
さらに集中する。
(詳細……説明……詳細……説明……)
頭の中で何度も念じてみる。
けれど。
何も起こらない。
(……あれ?)
もう一度。
今度はもっと強く意識する。
文字を押すようなイメージをしてみたり、念じてみたりもした。
それでも、ステータス画面には何の変化もない。
(……ダメか)
やっぱり何も起こらない。
(説明とか、出ないのか……)
「……召喚魔法」
俺はもう一度、その文字を見る。
分かったのは、名前だけ。
何ができるのか。
どうやって使うのか。
何を召喚できるのか。
それらは、何一つ分からなかった。
ただ、具体的に何を呼び出せるのかは分からない。
試してみたい気持ちはある。
けれど、今はまだ生後三か月だ。
突然何かが現れたりしたら、大変なことになるかもしれない。
「今はやめておこう」
まずは、この世界のことをもっと知ることが先だ。
俺はそう考えて、ステータス画面を閉じた。
退屈だった毎日の中で、初めて見つけた新しいもの。
それが、ステータスと召喚魔法だった。
「これから、どうなっていくんだろうな」
俺は小さな体のまま、これから始まる二度目の人生に思いを馳せた。




