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この世界に、スキルはあるのか?

母さんの話を聞いて、俺は一応納得した。


貴族が学校へ行かないのは、学校が必要ないから。


家には家庭教師を雇うだけの余裕がある。


それなら、わざわざ外へ通う必要もない。


家ごとに教育方針が違うというのも分かる。


家を継ぐ子供なら、家の運営について学ぶ。


社交を重視するなら、礼儀作法や人付き合いを学ぶ。


必要に応じて、それぞれの先生を雇うわけだ。


理屈としては、かなり分かりやすい。


「……なるほど」


俺は頷いた。


確かに、この仕組みなら学校がなくても困らない。


でも。


そこで、ふと別のことを考えた。


――だったら。


本人に合わせた教育をすればいいんじゃないか?


「…………」


いや、母さんの話を聞いた限りでは、すでにある程度はそうしている。


でも、それなら学校だって同じようなことができるんじゃないか?


例えば。


俺の頭の中に、前世の知識が浮かんでくる。


もし、生徒それぞれに得意な分野があるなら。


それに合わせた学校があってもいい。


戦うことに向いている人なら、その能力を伸ばす学校。


魔法に向いている人なら、魔法について学ぶ学校。


政治や商売、家の運営に向いている人なら、そちらを学ぶ学校。


つまり――


「専門学校みたいなもの?」


思わず口に出していた。


前世にも、普通の学校だけじゃなく、いろいろな分野を専門的に学ぶ学校があった。


だったら、この世界にあってもおかしくない。


……いや。


むしろ、魔法がある世界なら、そっちのほうが自然じゃないか?


「魔法を使える子供は、魔法を学ぶ学校……」


「…………」


「戦闘能力に優れた人は……」


そこまで考えて、俺は口を閉じた。


そういえば、母さんの話に戦闘能力なんてものは出てこなかった。


貴族に必要なのは、家の運営や社交、知識。


そもそも、この世界の貴族に戦うことが求められているわけではない。


だったら、戦闘系の学校という発想そのものが、前世で読んだ物語から持ってきたものなのかもしれない。


「……じゃあ、魔法とか、内政とか?」


俺は一人で考え続けた。


魔法について学ぶ。


政治について学ぶ。


商売について学ぶ。


家の運営について学ぶ。


そういう学校なら、あっても不思議ではない。


でも。


一つ、気になることがあった。


「…………」


そもそも、俺はこの世界の人たちが――


「スキル」について話しているところを、ほとんど見たことがない。


俺にはステータスがある。


そこには、こう表示されている。


【スキル】召喚魔法


俺にとっては、かなり重要なものだ。


でも、家族からスキルについて聞いたことがない。


使用人からも聞いたことがない。


誰かが、


「あなたのスキルは何?」


なんて話しているところも見たことがなかった。


そもそも、この世界で「スキル」という言葉が普通に使われているのかどうかすら、俺は知らない。


「……あれ?」


俺は首を傾げた。


初めて自分のステータスを見たとき、そこには確かに「スキル」と書いてあった。


だから俺は、それをゲームや小説で知っている「スキル」と同じものだと思った。


でも、それはあくまで前世の知識をもとにした解釈だ。


この世界の人たちが、同じ言葉を使っているとは限らない。


もしかすると、そもそも――


スキルという概念自体が、知られていない?


「……いや」


俺はすぐに考え直した。


魔法がある世界だ。


何かしら、個人ごとの能力や適性を調べる方法くらいはあるだろう。


でも。


もしスキルがあったとしても、それをどうやって確認するんだ?


俺のステータスは、俺にしか見えない。


少なくとも、他の人が見えている様子はない。


だったら。


「スキルを調べる方法が、そもそもないのか?」


俺は腕を組んだ。


ここでようやく、かなり大きな問題に気づいた。


俺の頭の中では、今までこんなふうに考えていた。


「スキルがある」

「能力を測れる」

「能力に合った教育ができる」


でも、二番目の時点ですでに怪しい。


そもそも、どうやって能力を知るんだ?


「…………」


魔法なら、使えるかどうか試せばいい。


文字なら、教えてみればいい。


計算なら、問題を解かせればいい。


でも、スキルは?


生まれた子供を見て、


「この子には召喚魔法のスキルがあります!」


なんて判定できるのだろうか?


俺には分からない。


そして何より、この世界の人たちがそうやって能力を調べている様子を、少なくとも俺は見たことがなかった。


「……そういえば」


俺は今までのことを振り返った。


俺が「スキル」という言葉を知っているのは、前世の知識があるからだ。


この世界では、誰かがその言葉を使ったところを一度も聞いたことがない。


だったら、俺が当たり前だと思っていた「スキル」というものは、この世界では当たり前じゃないのかもしれない。


「…………」


なんだか、急に不安になってきた。


俺は自分のステータスを確認する。


頭の中で念じた。


――ステータス。


いつものように、目の前に表示される。


【名前】レオン・アークライト

【年齢】6歳

【性別】男

【種族】人間

【スキル】召喚魔法


変わらない。


召喚魔法。


それは今でも、俺にとって唯一と言っていいほど大きな手がかりだった。


でも、この「スキル」が、この世界でどういう扱いなのか。


俺にはまだ分からない。


「……聞いてみるか」


母さんに聞いてもいい。


父さんに聞いてもいい。


家庭教師が来たら、その人に聞くこともできるだろう。


「……次は、スキルについて聞いてみよう」


学校のことを考えていたはずなのに、いつの間にか、もっと大きな疑問が出てきてしまった。


この世界では、スキルとは何なのか。


そして。


俺の持っている召喚魔法とは、一体何なのか。


六歳になった今。


そろそろ、本気でそこを調べる必要がありそうだった。

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