第七話 シェアハウス的なことね!
「うわ……でっか……」
あーしは今、タイガの家の前にいる。
大きな門に、広い庭。なんか、ちっちゃい噴水まである。
あの後、シルとリーンにもこれからの生活について話した。
二人はすごく喜んでくれたけど、あーしはただの居候です。
「そうか? 本邸に比べたらだいぶ小さいが……」
「本邸……?」
「言ってなかったか? グラディウス家の領地は王都から少し離れててな。家族はそっちの本邸で生活している」
「じゃあここは?」
「俺が普段生活している別邸だ。とはいえ使用人もいるから――」
「いや一人暮らしのレベルじゃないんだけど!?」
あーしが一瞬世話になってたニアの家と同じぐらい?
いや、それよりでかいんだが!? え、こいつって結構えらい人なん……?
こんな不機嫌そうな顔してんのに?
「え? タイガって結構えらい人?」
「別に偉くはない。俺の功績ではないからな」
「うーん……」
「何を言っているかわからないだろ。それでいい、早く入るぞ」
「え、ちょっと待ってよ!」
*
「お帰りなさいませ」
「あぁ、変わりないか」
「はい、特に何も」
すごい!! これが執事ってやつ!?
本当に黒いスーツ来て、手袋してるおじいちゃんがいるよ!!
中もめっちゃ広いし、豪邸じゃんこんなの。
思わずキョロキョロしてしまう。
「そちらのお嬢様は?」
「婚約者のユイだ、今日から生活を共にする。空いている部屋をすぐに用意させろ」
「かしこまりました」
タイガに向かって深々と頭を下げると、その人はあーしにもお辞儀をしてくれた。
「初めましてユイ様。執事長を務めております、カミヌスと申します」
「急に来てごめんなさい、ユイです」
「いえ、お気になさらず。どうせ坊っちゃまが急に言い出したことでしょうから」
「坊っちゃま?」
「カミヌス、早く行け」
「はいはい、では失礼いたします」
またお辞儀をすると、カミヌスとかいうおじいちゃんは去っていった。
「坊ちゃま……」
「うるさい。カミヌスは俺の幼い頃を知っているからな。そう呼ぶんだ」
「へぇ、いいじゃん! 大事にされてんね、うらやまし〜!」
「お前は本当に……」
「うん?」
一瞬、悲しそうな顔をしたように見えた。
タイガも言葉飲み込む系?
リーンもわがまま言えない、って言ってたなぁ。
シルもポンコツだし、ニアも似たようなもんだったし。
もしかして、あーしみたい方がレアなのか?
首を傾げていると、タイガがため息をついた。
「まぁいい。部屋の用意ができるまで、屋敷を案内する」
「まじで!? ありがとう! なんか探検みたいでワクワクするね!」
「そうか?」
「うん! 楽しみだな〜」
「変な女だ。ほら、着いてこい」
「あーい」
口は悪いけど、絶対あーしを置いていったりしないんだよな、タイガ。
*
「——で、ここが食堂だ。覚えたか?」
「ぜーんぜん」
「……だろうな。まぁユイにも専属の侍女を付ける。わからなければ随時聞けばいい」
「え、いらないよ?」
「いるいらないではない、付ける」
まじか……。侍女ってさ、あれよな。
髪結ってもらったり、着替え手伝ってもらったりとか。
自分のことくらい、自分でできんだけどな。
てかそんなの付けられるってことは、やっぱりタイガえらくね?
思わず、ジーッと彼を見つめる。
それにここ別荘みたいなもんしょ? やっぱりお金はめっちゃあるよね……。
つーかよく見ると、結構かっこいいんだな。タイガって。
「……なんだ、ジロジロ見て」
「いや、タイガってすごい人なんだなーって思って」
「言っただろ? 俺自身は何も偉くない。権力はグラディウス家のものだ」
「……なに言うてるかわからん」
「わからなくていい。お前はそのまま接してくれ」
コンコン、と壁が叩かれる。
さっきのカミヌスおじいちゃんが笑顔で立っていた。
「坊っちゃま、お部屋の準備が整いました」
「助かる。ユイを連れて、先に行ってくれ」
「かしこまりました」
「あれ? タイガは一緒に来ないの?」
屋敷を案内してくれたから、部屋も一緒に来てくれると思ったんだけど。
やっぱり騎士だし、忙しいんかな……?
「すぐに行く。お前の侍女を連れてな」
「坊っちゃま、それでしたらこちらで――」
「ダメだ、俺が選ぶ。屋敷の人間たちは信用しているが、誰がユイに相応しいかは俺が選ぶ」
「いやぁ、そうですか。うんうん、それは実に喜ばしいことです」
「おい、俺は別に――」
「ではユイ様、お部屋に参りましょうか」
「おい、カミヌス!」
タイガはなんか言いたそうだったけど、あーしはカミヌスおじいちゃんに連れられて部屋へと向かった。
*
「こちらがユイ様のお部屋でございます」
「え? こんな広い部屋、使っていいんですか!?」
「もちろんでございます。貴女様は坊っちゃまの婚約者ですから」
貸してもらうことになった部屋は、めちゃくちゃ広かった。
大人四人が並んで寝れそうなサイズのベッド。
なんか高そうな白い石で作られた、大きなテーブル。
窓もあって、そこからは庭が見える。
他にも色々あるんだけど、とにかく一人で使うには広すぎる……。
「あ、そゆことか!」
「いかがなさいましたか?」
「シェアハウス的なことね! あーしに付いてくれる侍女さんとの部屋か!」
「……お前はバカか? そんなはずないだろ」
いつの間に来ていたのだろうか。
腕を組み、壁に身体を預けたタイガが、呆れた顔であーしを見ていた。
「あ! タイガだ! でもさ、一人で使うには広すぎない?」
「広過ぎない。ここが今日からユイの部屋だ」
「じゃあ侍女さんの部屋は?」
「屋敷の人間たちにも部屋はある。心配するな」
なんだ、ちゃんと部屋あるんだ!
そうだよね、通うのも大変だもんね。
「そっかー。たまにパジャマパーティーしていい?」
「パジャマパーティー?」
「うん! みんなが一人の部屋に泊まるの!」
「……勝手にしろ」
「ふふっ、面白い方ですね」
うん? 女の人?
タイガの後ろから、メイド服を着た女の人が出てくる。
その人は部屋に入ってくると、丁寧にお辞儀をしてくれた。
「初めまして。ユイ様の専属侍女を務めさせていただきます、マルタと申します」
パジャマパーティーなんてしたことないな




