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アヤカシの末裔3~人喰い羅刹~  作者: 遠野まみみ


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8/9

8・襲撃

ズン…ズズズ…。


翌朝、地響きが聞こえた。

「何?」外を見ると、村の中で黒い塊が動いている。


愛鷹あしたか、足を狙って動きを止めてくれ」

戸隠とがくしの言葉に愛鷹がその黒いモノに向かって行くのが見えた。


「いきなり、何―?」

美和が神社の階段を駆け下りると、愛鷹の他に戸隠が早池峰はやちねが大江が

黒いモノ───大きさは高さ4~5メートルはあるだろうか。

巨大な蜘蛛と戦っていた。


「水よ…!」梓と早瀬が川から大量の水を立ち上がらせて大蜘蛛にかけた。

大抵の昆虫や虫は水が苦手だ。が、蜘蛛は水をはじいた。

「撥水加工?」美和の疑問に

「蜘蛛の中にはそういうのがいるんだよ」と多嘉良が説明する。


蜘蛛の口が動いたと思ったら、糸が吐けないように口の中を狙って

戸隠が炎を飛ばし、早池峰と大江が前足を抑えて引きちぎり

愛鷹が飛びながら後ろ足を斬り落とした。


「ああやって力を使えばいいんだね。動きは…」

沙織が戦い方を学習している。

「沙織、なんて逞しい」と美和は感心してしまった。


こちらに気が付いた愛鷹が「美和、避難してもしもの時に使え」と

脇差をよこした。

『もしも』の時は美和にはぶっつけ本番の実戦になる。


蜘蛛が近づいたらみんなを守るのは自分。

思わず刀を握りしめ、ジーンズのベルトに挟み込んでそう覚悟した。


「美和、沙織ちゃんと村の人たちを避難させろ。

…って、みなさん何やってるんですか?」

源太をはじめ若者や老人が5人ほど集まって、

蜘蛛に向かって猟銃を向ける。


「猟師を舐めんなよ。わしらだって末裔さ。戦う事くらいできる。

ジジイだがまかせろ」

「若いのも頑張ります」と発砲した。

弾は確実に蜘蛛の頭部にめり込んだ。


「他の者はこっち来いー」狸の穂高が、梓が水で作った結界に避難させている。


「美和―っよけろっ」愛鷹の叫びと共に、

蜘蛛が身体を引きずりながら迫り、残った前足が美和をめがけて襲ってくる。

相手をよく見て。教えてもらった通りに…。

横によけながら刀を抜いて、関節を狙って袈裟懸けに切り落とした。


「美和カッコいいー」沙織が拍手する。


「よくやった。あとは任せろ」

残った3本の足を愛鷹が横に飛びながら切り落として

蜘蛛の動きは止まった。


正面から頭部を狙って刀を振り下ろすと真っ二つになって

動かなくなった。

「終わったか」愛鷹が刀を収めた。


「お疲れ。荒らされた畑と倒壊した家屋を直さなくては。

死者もケガ人もいないと思いますが、みなさん被害の報告をお願いします」

村の責任者の戸隠が、村人と確認を始めた。


「指が…」

緊張で刀が離せない美和に、愛鷹が近づいてその手を取った。

一本一本、指を刀から外していく。

「深呼吸して。すぐ慣れる」

「慣れるほどこんなことが続くのかな?慣れたくない」

「続くかどうかは場合による」

愛鷹が涙目の美和の頭を慰めるように撫でた。


「はやちゃん、ケガしてない?」 「大丈夫だ、心配すな」


手先が器用な狸族の穂高が

「この蜘蛛、いただいていいですかね?目玉は強化ガラスみたいだし

糸も使えそう。外の皮も水をはじくし…うん、何か作ります」と、

狸族の仲間と村人に協力して持って行った。


               *


「この村ができて200年ほどですが、あんなのが出たのは初めてです。

魑魅魍魎が出た大昔の時代ならまだしも、今の時代に…」

戸隠が珍しく緊張している。


「大江先生もご存じでない?」多嘉良が大江に視線を移す。

「ないなぁ。ただ、それこそ昔…鎌倉だか南北朝あたりで人喰い鬼が出て

その時の鬼の配下にでかい蜘蛛がいたって話があったとか

なかったとか。どっかの古文書に書いてないかな」


「神社の書庫を探してみるか。戸隠さんの家の書庫もお願いします」

「はい。探してみます」


「俺、あっちゃこっちゃ旅してらども、伊豆の天城山で聞いたことあるじゃ。

万三郎天狗と人喰い鬼伝説」


「天城山のアヤカシは会った事がないな。どこにいるんだろう?

それとももういないのか?」多嘉良の言葉に

「わたし見に行ってみようか?天城山なら日帰りで行ける」と言う美和に

多嘉良が青くなる。

「美和に何かあったら、お母さんの藤子とうこさんに殺されますわよ」


「はーい。わたしも一緒に行くから大丈夫」沙織が手をあげると

「それだら俺も行くじゃ。ふたりを守るじゃ」

早池峰がにっこりした。


「いや、お前は沙織とデートしたいだけだろ」と、その場にいた全員が

ツッコんだ。

          


               *


「あーあ、蜘蛛が簡単にやられちゃった。わりと手ごわいな。

それにしても穂積美和か…。その剣術、面白い子だね。

ますますタイプだな」

霧島が青い瞳を光らせて、自室で呟いた。


               *


美和はその夜、緊張して眠れなかった。

前から何か恐ろしい事が起こりそうな、そんな予感がしていたけれど

ますます濃厚な感じになっている。


読んでいただき、ありがとうございます。

引き続き、読んでいただけますと嬉しいです。


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