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アヤカシの末裔3~人喰い羅刹~  作者: 遠野まみみ


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7・早池峰

「いらっしゃーい」

神社で多嘉良永介が迎えてくれた。

「おじさん今はこんな腹出てますが、昔は細身でイケメン…」

「はい、ありがとうです。お世話になりまーす」

美和に遮られてしょんぼりの多嘉良だった。


               *


和室に鬼族の大江が待っていてくれた。

大きな体に頭部の角を見て、沙織は少しひるんだが、

「よお、よく来たね」と、ニコニコ笑う大江を見て少し安心したようだった。


美和が持ってきたお茶菓子を並べて

お茶を入れて話しが始まる。


「早速だが、沙織さんの姓は橘。お母さんの旧姓は?」

大江の問いに

「佐藤です。…あ、でも祖母の旧姓が赤石っていうそうです」

「それだ。儂の山の近くだね。配下だった鬼だよ。

残念ながら今はもういないが、関係者の末裔に会えるとは嬉しいねぇ」


「力のコントロールはできているかい?突然何かを壊したりしてないかい?」

「はい、小さな頃はわからないんですけど、

今はヘンな男をぶっ飛ばす時以外は普通です」

「あっはっは。それはいい」


「それと美和の話しの霧島だっけか。たしかに霧島山に鬼がいたが

今はアヤカシとしての霧島がいるかどうかは儂にもわからん。 

ただし、子孫がいないとは限らんな」

「そうですか。…なんていうか、不思議な人なんですよ」

「いきなり美和にアタックするって。クラスで宣言してました」

「そりゃなんて勇敢な」多嘉良が笑った。


「それと多嘉良さんに聞きたい事があって、

霧島くんは多分千里眼を持っているの。で、キャンプの時に消えたの」

キャンプの夜の事を多嘉良に話す美和だった。


「千里眼か。ヤバいことを考える人間なら、面倒だな。

それと消えたなら、可能性としては憑依か生霊か…。

本人の意思だけが外に出て、視える美和に警告してくれた。って事かな」

「本心が違うところにあるって、何があったのかな…」


こればかりは考えてもわからない。でも、霧島大和には何かある。

とてもイヤな予感がするのだった。


               *


ザッザッザ。   ザッザ…。


山のような荷物を担いで、若者が歩いてきた。

TシャツにGパン。頭に巻いたバンダナの端から

二本の角が見えている。

後ろから見ると荷物が歩いているようだ。

山から山へと渡って旅をして数年ごとに村に帰って来るのが彼

──早池峰はやちねのライフスタイルだった。


「ちわーっ」

多嘉良の神社で荷物を下ろして声をかけると

多嘉良をはじめ、大江や美和と沙織が出迎えた。

「おお早池峰よ、お帰り」

「大江先生、まめでなによりでぁんす」


「わぁ、めんこい子がいるじゃ」早池峰が沙織を見て愛想よく笑った。

「…めんこい…ってかわいいって意味だよね。初めて言われた」

沙織が赤くなる。

はっきり言って早池峰はイケメンだった。 アヤカシは美形が多い。


「そげは美和だが?大きぐなったなぁ。前さ会った時は小さかったのになぁ」

「5年ぶりくらいだから。もう高校生です」


早池峰が来たと聞いて、村のあちこちから住人が集まって来た。

「早池峰さーん」

「早瀬―。久しぶりだじゃ、会いたかったじゃ」

ふたりは岩手県遠野出身で、同郷なので抱き合って再会を喜んだ。


「…アヤカシ。大江さん以外にも本当にいるんだ」

沙織がぽかんと見ている。

「早池峰さんは日本中を旅している鬼さんで

お土産たくさん持ってきてくれるの。

早瀬さんは河童ね。あと狐と烏天狗と狸さんがいるよ」


「こほん。早池峰いいます。よろしくね…俺の標準語合ってる?」

「橘沙織です…。よろしく」

「ちょっとメアド交換してくんねべか?」

「はーい」


「だからナンパとか、早池峰さんも沙織も展開早い」

「いいんじゃね?ビビッときちゃったんだろ?あるあるだ」

多嘉良が大笑いする。

「生粋のアヤカシと人間が恋愛関係って、あるの?」

「なくはない…うん、確かにある」


その日のうちに二人は「はやちゃん」「さーちゃん」と

呼び合う仲になっていた。

「ついて行けない」

美和はそう言いながらも笑いが止まらない。

さらに沙織に村の中を案内しようと思ったら、早池峰と出かけていた。


「うん、いい事だ」と、やはり笑いが止まらない。



               *


「ようこそ、やうと村へ」狐族の戸隠とがくしが、烏天狗族の愛鷹あしたかが、

早瀬と同じ河童族の梓が、狸族の穂高が、その他村で生活する者たちが

沙織を歓迎した。


「さっき穂高さんにもらっちゃった。記念にどうぞって」

村を回って帰って来た沙織が嬉しそうに美和に見せた。

「座敷童の人形だね」

キーホルダーに付けられた、ちんまりした人形は着物を着た少女の

彫り物だった。

「穂高さんの手作りだ。かわいいね」


「わたし、来てよかった。ありがとうね、美和」

「うん、よかった」

「特に自分の事が分かって良かった。この力も何か役に立てそう」

沙織はキラキラした目で、ぎゅっと拳を握った。


読んでくださってありがとうございました。

次回もよろしくお願いいたします。

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