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アヤカシの末裔3~人喰い羅刹~  作者: 遠野まみみ


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6・霧島大和

「かなり霧が出てきたな。美和たちを見てくるよ」

霧島が山に向かおうとするのを嵯峨野が止めた。

「なんか、不気味でこわーい。ここにいて」

「もう一人男子がいるし、みんなも先生もいるから大丈夫でしょ。待ってて」


ムッとした嵯峨野を置いて霧島は山に入って行った。


「さて美和さん、どこかな」

カラコンを外して霧の中を見つめると、登山用ストックを構える美和が見えた

…正しくは視えた。


「あの構えって剣術やってるのか」

霧島の目は千里眼だ。相手が千里の先にいても知っている者なら視える。

美和の姿を追って、霧の中を歩いて行った。


               *


美和が声の方へ近づくと霧の向こうに男たちの影があった。

「ケガしました?」美和が声をかけると

「痛いよぅ」と返事がきた。

「元気そうですね。大丈夫でしょう。じゃっ」


その場を離れようとした時に、少し霧が晴れて

後ろから羽交い絞めにされてしまった。

ストックの持ち手で脇腹を突くと、男は呻いて離れた。

続けざまに背中に一撃入れて倒した。


沙織が大木を男たちの上に置いた。これでしばらくは動けないはず。

「戻ろう」ふたりはキャンプ場に戻って行った。


               *


「あーあ。情けない」

霧島が男たちを見下ろしてため息をついた。

「襲われている彼女を俺が助けて一躍ヒーローのハズだったのに。

何やってんですか? 役立たずのポンコツですか?」

「う…。話が違う。かわいいJKって言ってたのに、強いじゃないか」

「あ、それは想定外でした。お疲れでした。 はい、バイト代の一部です。

残りはこの住所へ行ってください。

自動ドアが開くので、それに従って進んで。交通費や食事代も出ます。では」


               *


渡された紙にある住所へ男たちは向かって、そして消えた。


               *


キャンプ1日目の夜は班ごとのキャンプファイヤーだった。

となりの班とおやつを交換したり、一緒にしゃべったりして

普通に高校生をしてかなり楽しい夜だった。


夜中、トイレに起きた美和は大きな石の上に座って

頭を抱えている霧島を見かけた。

「どうし…たの?具合悪いの?」


顔を上げた霧島は、月明かりに照らされてドキリとするほど綺麗だった。

だが、同時に美和の中で警鐘が鳴る。

これは人間の「綺麗」じゃない。 そう、狐族の戸隠とがくしの綺麗さと似ている。

アヤカシの危険な美しさ。


「逃げろ。こいつから」

霧島が焦点の合わない目を美和に向けて言った。


ドクン。


美和の心臓が鳴った。

左右の瞳の色が違う。 黒と青。いつか聞いた千里眼の色だ。


「…何?霧島くん、ヘンだよ?」

「こいつに関わってはダメだ」

そう言って霧島は…消えた。


美和の目の前から忽然と消えた。

呆然とする美和。


今のは霊?いや、違う。霧島には影がある。

クラスのみんなにも見えている。

じゃあ何? 分身?

有能な霊能者ならわかるのだろうか?

多嘉良さんならわかる? 村へ行かなきゃ。


               *


2日目のキャンプは近くの山に登って、地元のガイドさんが

山の植物を教えてくれた。


だが昨夜の霧島が気になって、頭に入ってこない。

霧島を見ると嵯峨野にぴったり付かれながら、美和に手を振った。

当然、それに気が付いた嵯峨野は睨んでくる。


うん、関わらないほうがいいわ。と、しみじみ思った。


               *

               *


「連休に美和と旅行とか、最高。おやつ食べる?」長距離バスの中で

沙織が嬉しそうにする。

「で、その村って遠いの?」

「うん、バスで5時間ってとこかな。あと歩いて2時間」

「あはははは」沙織は笑ってしまった。


「でもわたしにとって必要なんだよね。うん、美和を信じてついて行く!」

ガッツポーズの沙織に

「愛だなー」と美和が笑った。

「愛って言えばさ、霧島くんとはどうよ?」

「ううん、何とも…」  「付き合わないの?彼はマジだと思うよ?」


そんな話をしながら、あっという間に終点に着いた。

ここまで来たら村まで残り徒歩2時間だ。

沙織としゃべりながら歩いていると、一人で歩くよりも

早く着いたような気がする。


川の結界を渡って茂み超えると、白川郷のような村が広がっていた。

「はうー。綺麗…」沙織が感嘆のため息をついた。


               *


広い屋敷の部屋で霧島は青い瞳で美和を追っていた。

「やうと村か…。アヤカシとその末裔が住んでる。

結界で囲まれているけど目くらまし程度だな。なるほど。うひゃひゃ」と笑った。


読んでいただき、ありがとうございます。

引き続き、読んでいただけますと嬉しいです。



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