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アヤカシの末裔3~人喰い羅刹~  作者: 遠野まみみ


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5/8

5・鬼

「橘沙織ちゃんって、話を聞くと鬼族の末裔みたい。

あと転校生がきてね、霧島大和くんていうの」


美和は家で母に今日の出来事を話した。


「霧島!?何それいかにもな名前」

美和の母は鬼の末裔よりも霧島の姓に反応した。

母も比十ひとの末裔だ。

出身のやうと村にはアヤカシとその末裔が暮らしていて

今でも烏天狗や河童や狐、狸や鬼が住んでいるのだ。


「やっぱり霧島山には有名なアヤカシがいたの?」

「たしか、鬼だったかな。天孫降臨の神様とは別に、

昔はふもとの村の守り神で祀られていたと思う。

そのへんは村にいる鬼の大江さんが詳しいかも。

ついでにその橘さんも連れて行ったら?」

「村に連れて行っていいと思う?」

「そうねぇ。永介に相談してみたら?」

「そうだね。そうしてみる」


『永介』と呼ばれたのは母の幼馴染だ。

村で神主をしていて美和の相談役でもある。

早速電話をすると「おお。いいんじゃないか?連れておいで」と

言ってくれた。


「じゃあ、来週課外授業があるから、それが終ったら行くね」

という事になった。


               *

               *


「課外授業のキャンプの班分けをします。

まずは5~6人でグループになってみて」

委員長の言葉で、仲のいい子たちが次々にグループを作っていく。


美和、橘、嵯峨野、霧島、他男子1名。

計5名のグループがすんなり決まった。


「いつもあぶれるのに、奇跡だ」美和が感心した。

嵯峨野は美和を睨んでいたが、霧島と同じ班で機嫌が良かった。



山で必要な荷物は両親の趣味が登山で、

美和も幼い頃から登っていたのでわかっている。

スマホには登山アプリと天気アプリも入っている。


テントや寝袋はレンタルだしキャンプだから、

それほど大変ではないだろうけれど、一応装備はそれなりに準備した。


               *


「わー。緑がきれい。なんかドキドキする」沙織がはしゃぐ。

夏が終わったばかりで、まだ緑がいっぱいの山は

青空に映えて美しかった。


アヤカシの血を引く者は自然と共に生きたせいか、

自然の中に入ると安心して身体の中に気が満ちるのだ。


男女別で割り当てられたテントに入って、荷物を置いて落ち着いた後

食事の支度をするために木が必要になった。

「松の葉とか松ぼっくりが火種になるから探してくるね」

「美和はこういうの詳しいの?」霧島に名前で呼ばれて

「はいぁ?」とヘンな返事をしてしまった。


ニコニコ笑う霧島に、なにその爽やかな笑顔は。

嵯峨野さんが睨んでいるからやめてほしい。と

心の中で突っ込みながら「探してくる」と山に向かった。


「わたしも行くよ」沙織が追いかけてきた。


昼とはいえ、山中は高い木に覆われてて薄暗い。

30分ほど歩いたときだった。

「あれ?霧が出てきた」

「マズくない?帰り道がわからなくなりそう…ってか、見えないよ」

「ここ、切り株の中に入れるから、様子が分かるようになるまで待機しよう」

美和の提案で、沙織と二人で切り株の中に入った。


               *


「あ、こんなトコ入れそうな切り株だ」

突然男の人の声がした。

「おお。先客がいる。悪いけど俺たちも入らせて」

「うはー、君らはJK?俺たちリーマン。ラッキーだぁ」

「二人ともかわいいなぁ。俺たちキャンプに来たんだけど

迷っちゃってさ。ちょっと付き合わない?暇だし」


軽薄そうで嫌だな。と思って沙織を見たら、同じように不愉快という顔を

していた。

「ねえねえ」と肩を抱かれて、振り払ったら

「もったいぶるなよー。ダサいぜ」とますます抱き付いてきた…と思ったら

「うあああー」と、もう一人が悲鳴を上げた。


沙織が男の襟をつかんで持ち上げている。

「よけて」と男を美和のそばにいた男に投げつけた。


「行こう」と沙織の手をつかんで切り株を出た美和だったが、

さすがに道が見えないと危険すぎると、足を止めた。


「おーい、JKたちぃ。俺たちといた方がいいよー」と、

霧のむこうから声がした。

「俺たちといた方が危険だわ」と美和が呟くと

「しつこいよね。ちょっと待ってて」と沙織がそばの木を抱えた。


メキ メキメキ  ギギ…。


沙織が木を抜いて、声がした方に投げつけた。

「うあああー」っと声がして静かになった。


「怪力。やっぱり鬼の末裔だわ。お見事」美和は思わず拍手してしまった。

「怪力言うなっ…そうだけど」


「ねえー。ケガしたよぅ。助けてよぅ」今度は情けない声がした。

「木が当たったかな?」

「放っておいて、死なれるとマズいわ」


美和はリュックの中からストックを出して剣道の構えをして、

「うん。ちょっと行ってくる」と声の方に歩いて行った。

「剣道やってるの?」と沙織に聞かれて「少しだけ」と答えておいた。

本当は実戦向けの人を殺せる剣術だけれども。


読んでいただき、ありがとうございます。

引き続き、読んでいただけますと嬉しいです。


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