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アヤカシの末裔3~人喰い羅刹~  作者: 遠野まみみ


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3/8

3・アヤカシの血

「お別れなんだ」

ある日お見舞いに行った時、珠世が言った。


「バイクに轢かれたわたしを助けてくれてありがとう。

都会へ出て、空気の悪さから具合が悪くなって

ふらふらしていたら轢かれてしまった。


珠世が引っ越すとき、荷物に紛れて一緒に地方へ行って、

やっと調子が良くなったと思ったら

今度は珠世が事故にあって死んでしまった」


「は?一体何の話を?」混乱する橘だが、珠世はかまわず話し続ける。


「沙織の悲しむ顔が想像できた。だから、珠世に入って生き返らせて

一緒に成長した。

もう少しあなたが大人になるまで、一緒にいたかったから」


珠世の部屋で座り込んで、意味が分からないというふうに

首を振る沙織に珠世はさらに続けた。


「わたしはアヤカシ・猫又。何百年か生きているがもう寿命だ。

この子はとっくに亡くなっていたのに無理をさせてしまった」

猫又は珠世の両肩を抱きしめた。


「さよなら。 穂積美和さんに話を聞いて。

あなたもアヤカシの血を引いているかもしれないから」


「え?」

「覚えてない?バイクから助けてくれた時、タイヤの下にはさまった

尾を取るのに、沙織はバイクを持ち上げた。

あの力は人間のものじゃない」

そう言われて記憶が蘇った。


夢中でバイクを持ち上げた…誰かがやってくれたと思っていたけれど

自分だった。


そう…だった? 小さな頃からわたしは他の人と違ってた?


               *


小さかった頃。意地悪な子がいた。

ブランコの順番を譲ってくれなくてみんなが困っていたら、

鎖が切れてその子が落ちた。

…わたしが千切った。


小学校1年生の時、お母さんと買い物に行って、

詰まれたジュースの箱が重くて動かせなかったのを

持ち上げてカートに入れた。


思い出すとそんな事が何度もあった。

人と違う。だから穂積さんが気になってた?


それからすぐに珠世だった猫又は亡くなった。

学校への連絡はしたけれど、珠世の、猫又の遺言で橘だけ葬儀に出て

ひっそりと全てが終わった。


               *


「ごめんなさい。本当に。バカな事を言って、していたと思う」

橘の謝罪に

「まあ…うん」と返事をした。


「…力なら、鬼の系列?」

「その辺はよく知らない。だから穂積さんに聞いてって言ったんだと思う」


「あとはお願い」

黒部珠世だったモノがそう言って消えた。

「黒部さん、消えた。あとはお願いって言われた。

たいてい満足したり、納得するといなくなるの。成仏したのかも」

「そっか…つまんないな。珠ちゃんは人間でも猫又でも、大事な友達だった」と

橘はうなだれた。

「そうだね。ちょっと寂しいね」

大切な友人がいなくなった寂しさは、とてもよくわかる。


「うん。そんなわけで、よろしく。美和!」顔を上げてにっこり笑う橘は

切り替えが早い。

「ちょ…。そんないきなり呼び捨てっ」

「わたしの事は沙織って呼んで。ねっ。さ・お・りだよ」

「えええ。…『ぬりかべ』の責任は取ってくれるの?」

「うん、わかってる。美和はわたしが守る!」

「いや、そこまでしなくても…」


元気になった橘は嬉しそうに

一緒に帰ると言って途中まで付いてきた。



読んでくださってありがとうございました。

次回もよろしくお願いいたします。

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