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アヤカシの末裔3~人喰い羅刹~  作者: 遠野まみみ


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24/27

24・対峙

翌朝、美和は母に巫女装束を着せてもらい、髪を結ってもらった。

「巫女の衣装はね、魔除けでもあるのよ。内に取り込んでも負けないように

…気持ちだけでも違うでしょ。その時に着替える暇があるといいけど」


「わあ。美和、素敵だよ」  

「こういうのなんだっけ?そうだ、馬子にもい…」

大和の口を両側から美和と沙織がつねった。

「ふいまへん…」  

笑ったので緊張が解けた。


ピロロロ♪  美和の携帯が鳴る。画面に『父』とある。

「お父さん!?」


外国へ出張中の父が、普段は母の藤子にしてくるはずの電話を

美和にしてくるとは珍しかった。


「元気かー?何してる?」

「あ…。今日月曜だけど、三連休だったの。特には何もないいつもの通りだよ」

「そっかー。なんか急に電話しなきゃと思ってさ。変わりないならいいや。

お母さんは?ちょっと変わって」


「もしもし、どうしたの?」

「なんかさ、いや、なんとなく。特に理由はないんだけどね。

まあ、いいや。俺、これから同僚と買い物行くから、

欲しいお土産あったら言ってね。来月帰るよ」

「わかった。身体に気を付けてね」

「おう。じゃあ美和によろしく」


「お父さん、急にどうしたんだろう」

「昔から勘がいい人なのよ。何か感じたんでしょ」


その時だった。以前、藤子が作った警報が光った。   

何かが近くにいる。


「帰らなきゃいけない日にこれか。俺、明日は学校休みだ」

「同じく」

「だめよ。大和はともかく、沙織ちゃんはご家族が心配するから

駅まで送るから帰って」

「でも…」


「沙織、ありがとう。終わったらメールする。そしたらクレープ食べに行こう」

「…うん」沙織は目が潤んでいる。

「あ、クレープに俺も参加」と、大和が手を上げる。

「みんなで行きなさい。母が奢ります」

「わーい」


「…多嘉良さんは?さっきまでいたのに」

「どこかしらね。…沙織ちゃんすぐ出れる?ここから駐車場まで2時間。

駅まで1時間半。大和、後はお願い」



「あのう。よかったらわたしが送ります」

「さーちゃん、俺も行くから送ってもらおう」

いつ来たのか、縁側から比十ひとの末裔の美佐と早池峰はやちねが声をかけた。

「それと、邪気を感じて村のみんなが戸隠とがくしさんの家の蔵に集まってます」


「藤子さんは美和ちゃんの側にいてあげて」

「美佐さん、ありがとうございます。沙織ちゃん、いいかな?」

「もちろんです」

藤子から電車代と車のキーを受け取って、沙織は早池峰と美佐と

帰って行った。


               *


戸隠の家の蔵は閉じこもるにはぴったりで、何人かの村の住人が

集まっていた。

「美和ちん、これ持って」   「これもだ」

梓と穂高がお守りを渡した。

「守りはね、己の意思が一番大事なんだよ。

しっかりしないと効果を出せないんだ。忘れないで」穂高の言葉に

「ありがとうございます」と美和は応えた。

お守りを大事に懐にしまうと村はずれの方へ顔を向けた。

その方向から羅刹の気配がするのがわかる。


「俺、一緒に蔵に入っていいですか?俺の先祖が羅刹を倒したなら

俺も手伝えるかもしれない」

「俺がやろうと思っていたんだが、大和が行くといい。

いいか!?美和が何者かを言い聞かせるんだ。学校のことでもいい。

楽しかった事や嬉しかった事を話して聞かせろ、そうやって自我を保たせろ。

意識がなさそうに見えても聞こえている」

愛鷹あしたかがそう言って、励ますように大和の肩を叩いた。


「では、行ってまいります」 みんなにお辞儀をすると

「来い!わたしはここだ」と叫んで、美和は大和と蔵へ入り

その場にいた藤子と双眼鏡を握った健太には

黒いモノが美和の後を追うのが視えた。


               *


美和の首の後ろが一瞬重くなって、何かが入った。

「羅刹が入った、これでわたしの手足を縛って、早く」と、

大和に帯紐を渡した。


ドックン


美和の鼓動が激しくなって「あっ…。あああ」と悲鳴のような

唸り声をあげて座り込み、縛られた手足を動かして戒めを解けと言わんばかりに

身体をくの字に曲げて転がった。


「おい、美和。聞こえるか?美和っ」

大和が呼びかけるが、いきなり両手のグーで殴られる。

美和を後ろから抱えるように抑えたが、今度は頭突きをくらった。


「自慢じゃないけど、こっちは散々ボコられて慣れてんだよ!」と、

強がるが今度はものすごい力で噛まれる。

「いじじじじ…」

大和は鼻から腕から出血してすでに血まみれだった。


読んでいただき、ありがとうございます。

引き続き、読んでいただけますと嬉しいです。


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