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アヤカシの末裔3~人喰い羅刹~  作者: 遠野まみみ


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20/27

20・霧島山

「修学旅行の班分けはどうしよう。三人で組む?それとも

もう少し誰か入ってもらう?」沙織が相談に来た。


「嵯峨野さん…とか?」美和が恐る恐る聞いた。

「ううん。彼女は友達と、他に男子数人でグループ作ってた」

「三人でいいじゃないか。他は面倒だ。計画通りに霧島山へ行くなら

三人がいい」


「霧島山のどの辺だろう?村人に祀られていたなら、

神社とか祠とかあるかも」

「あった。この辺かな?祠の跡ってある」美和と大和が話している中、

沙織がスマホの地図を見せる。

「ダメ元で行ってみよう」


「計画書には『登山』って書いておくよ。天孫降臨の研究とかなんとか」

大和を中心に三泊四日の修学旅行のうちの、二日目の自由行動の計画が

組まれていった。


               *


「霧島山へ行くんだ?」夕飯の支度をしながら、母は美和に話しかけた。

「うん。昔、霧島っていう鬼が戦ったなら、羅刹の手がかりが

あるかもって思って」

「そっか」


「…お母さん、私が人喰い鬼になっちゃったら、どうする?」

「ならないわよ。させないから」

「うん…」母の自信はどこからくるのかわからないけれど、

屋敷での能力を思い出すと、少しだけそうかもと思えるのだが

不安は消えない。



「せっかくの旅行なんだから、楽しんできなさいよ」

「うん」


               *


「行ってきまーす」

修学旅行の朝は空港に集合なので、沙織と大和と待ち合わせて

駅から空港へ向かった。


「ひ…飛行機。俺、初めて」 「わたしも」 「わたしだって」

ドキドキしているのは美和たち3人だけではなかった。

クラスのほとんどが初体験で、

「国際線も乗った事ある」と言う生徒は「セレブめー」とつつかれていた。

宮崎空港に到着したのは午後だった。青島神社に亜熱帯植物園を

見学してホテルに入った。


               *


翌日の朝、自由行動のために生徒たちはそれぞれ目的の場所へ

出かけていく。

美和たちは山に向かった。


登山道がはっきりしていなくて、美和が地図とコンパスで方向を見て進んだ。

「すごい、コンパスだけで目的地へ行けるんだ」沙織が感動して

地図を覗き込んだ。

「両親が登山が趣味で、それで知り合って結婚したんだって。

だからわたしも小さい頃から山関係のことはいろいろ

教えてもらっているの」


               *


しばらく登ると祠のような跡があった。

「天城山でやったように呼び掛けてみるね」

美和が集中して話しかける。


ユラ…リ


空気が変わって、白い髪。角。着物姿の老人が現れた。


白い鬼の老人は静かに佇んでいて、とても落ち着いた雰囲気が

悪いモノではないと感じさせた。 母からもらったお守りも反応しない。

「こんにちは。お邪魔させていただいています」


「これは驚いた。そなたがわたしを呼んだのか?比十ひとか?」

「はい。末裔です」

「末裔…にしては血がずいぶん濃いようだが、だが嬉しいな。

話しができる者と会ったのはいつぶりだろう」


「あなたは?霧島さんでいらっしゃいますか?

「そうだ。ここに祀られ、守っていた」


「鬼の霧島…さん」

「俺?」と、大和が美和に声をかける。

「今、目の前に鬼の老人がいるんだけど、霧島さんだって」


「そこの若者は?」

「彼は霧島大和と申します。おそらくあなたの関係ではないかと」

「わたしの名を継ぐ者か。なんという。これほど嬉しい事があるとは」


「子孫の大和に会えて喜んでる」と説明する。


「あの。羅刹をご存じですか?人食いの鬼です」

「よく知っている。わたしと万三郎殿と人間と協力して討ち取った」

「それが霊となって復活しています」

「何ということだ…」


「羅刹は俺たちが討ちます」大和の言葉に美和も沙織も驚いて、彼を見た。

「羅刹は美和を──彼女を狙っている。そうはさせない。俺が討ちます」

視えないが、白い鬼に向かって約束するように言った。


大和にそう言われて、ちょっと嬉しい美和だった。


「うむ。助言をしたいところだが、残念な事に何もない。

だが霊体ならば封印という手もあるやも知れぬ」

「封印…。そうか、討伐できなければ閉じ込める手もある。

でもどうやって?」


「比十がいるだろう。封印も彼らの手のうちだ」

「そんな事もできるんですか?」

「他に比十がいるのなら聞いてみるといい。…特にそなたは…。

うん。何かありそうな娘さんだ。

それと祠の跡を掘ってごらん。 壺が出てくる。 

中にわたしの妻が書いていたものがあるから

何か手がかりがあるかも知れん」と、ほほ笑んで消えた。


               *


「わたしに何かあるの?」美和がつぶやくと、

沙織が「何を話していたの?」と顔を覗き込んだ。


あった事を全て話すと

「掘るなら任せて。何メートルもいけるよ」と、沙織が軍手をはめて

バサバサ掘っていく。


「鬼の腕力は筋力だけじゃないんだって。はやちゃんが教えてくれた。

重さを調整する能力なんだって。重いモノでも軽くする能力。

だから筋肉隆々でなくても力が出る」

「そういえば、鬼でもマッチョって見ないよね。大江先生くらい?

早池峰はやちねさんも細マッチョって感じだし」沙織の説明に納得の美和だった。


3メートルほど掘ると壺が出てきて、中に巻物があった。

「うわわ。また読めないものが。また村へ持って行くか」


「え?村へ行くなら、はやちゃんにお土産渡すからわたしも行く。」と

沙織が早池峰に会いに行くと言う。

「じゃあ、わたしも多嘉良さんたちにお土産買ったから一緒に行く」と、

結局みんなで行くことになって、巻物は美和が預かった。

「お…俺も愛鷹師匠たちにお土産買わなきゃ…」


「あとは、封印かぁ。でも美和に何があるっていうんだろうな?」

謎は残ったが『封印』というキーワードと巻物をもらったので

それでよしとした。

              *


修学旅行で美和は沙織と大和と行動してそれなりに楽しんだ。

「うちの班が行ったとこ、心霊スポットだったー」

「うちの班、予定変更ばっかりだった」

「うちの班、みんなナンパされて逃げ回って迷子になっちゃった。大笑いした」

「うちの班、なぜかスイーツの食べ歩きになってしまったー」


クラスの皆もそれなりに楽しんでいたようだ。


読んでくださってありがとうございました。

次回よろしくお願いいたします。

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