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アヤカシの末裔3~人喰い羅刹~  作者: 遠野まみみ


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19/27

19・乱入

霧島大和は両親の遺した遺産と、元々住んでいた家を人に貸して

ワンルームで暮らすことになった。保証人は美和の母だ。続柄は「甥」

遺産関係の事は、羅刹が霧島の母を使ってうまくやっていたようだ。

例の屋敷は地下が都合が良かったので、勝手に使っていたらしい。


               *


一ヶ月ぶりで登校した霧島は転校してきた時と違って、

黒ぶちメガネに少し猫背でおとなしくて目立たない生徒になっていた。


「なんか、大和は最初とイメージが違う」

美和が前の席に座った霧島と話している。

「あんまり目立ちたくないんだ。」

「目もカラコン?」   「うん」


「で、部活さあ、剣道やろうと思ったんだけどその…レベル低いよな?」

「それは言っちゃだめ。愛鷹あしたか戸隠とがくしさんの剣術と同じにしたらダメ」

「ですよねー。そのうち美和が手合わせしてくれる?」

「あ、それいいね。明日からやろう」


               *


「きゃあああああ」 廊下に悲鳴が響いた。

放課後で下校しようとした生徒がパニックになっている。

教室を出ると、「逃げろー!」と走ってくる生徒がいた。


廊下の先を見ると、男が包丁を両手に持って振り回しながら歩いてくる。

その先には怖くて動けなくなって座り込んでいる嵯峨野がいた。

剣道部や柔道部の人間がいるが、やはり動けないらしい


嵯峨野さんは苦手な人だけど、死んだり傷ついていいわけじゃない。

「モップ!」掃除道具のロッカーから武器替わりのモップを取って、

美和はそのまま男に向かって行く。


「美和ー」その後を大和と沙織が追う。


パアアアン…。  パンパンッ。


男の包丁を叩き落して、あっという間に失神させた。

と、男の首の後ろから記憶にも新しい、黒いものが飛び出して行った。


羅刹…。


「羅刹かも。屋敷で見た黒いのが飛んで行った」

「あいつ、俺の身体で学校へ来ていたから

ここは知ってるよな。偵察にでもきたのかな?」

美和の言葉に大和が答える。


「嵯峨野さん、大丈夫~?美和が助けてくれたんだよ」

沙織が声をかけると、嵯峨野は「うん」と頷いて美和を見上げたが

その顔には以前のような敵意はまったくなかった。


教師がさす股を持って駆けつけた時は、男が倒れていて

目撃していた剣道部員から『穂積さんが倒した』と証言があって

その出来事はあっという間に広がった。


               *


その日、羅刹らしき黒いモノの話しをした後で

美和は母からペンダント状のお守りを渡された。


「警報ブザー替わりよ。沙織ちゃんと大和にも渡してね。

悪霊とか、ヘンなのが寄ってくるとわかるようになってるから」

「うん。ありがとう」


               *


翌日、母から受け取ったお守りを早速ふたりに渡していたら、

美和の元へ剣道部の入部のお誘いがしつこいくらいに来た。


「あなたがいれば女子部は全国大会優勝も夢じゃない。ぜひ入部を!」

「いえ、わたしなんて、とんでもないです。昨日は偶然です。

たまたま当たってしまったんです。帰宅部が好きなんです」

なんとか逃れたいが、部員も必死でとうとう夏に引退したはずの

3年の元・副部長までが出てきた。


「どうしても部活は嫌ですか?」  「すみません…」

「なら、勝負してわたしが勝ったら入部してもらえます?

負けたら諦めますから」

「ええ…?」


「あのう、腕相撲ならわたしが代わりに相手になりますが?」

「剣道部なので腕相撲は結構です」

沙織の提案はあっけなく却下された。


「何?この青春映画みたいな展開は」と、つぶやく美和に

「諦めて片付けるしかないんじゃないか?やっちゃえ」と

大和が煽るが、実は美和の剣術が見れるのでちょっとワクワクしている。


               *


「昨日包丁男を倒した2年生が、体育館で3年の女子と一騎打ちだってよ」

「見に行くベー」 と、

見学の剣道部員と野次馬でいっぱいになる放課後の体育館だった。


中段に構えた3年生に対して、美和は八相の構え。

「おい、素人なんじゃない?剣道の試合で八相の構えなんてしないぞ」

「包丁男を倒したのって、マジ偶然なんじゃない?」

剣道部員がヒソヒソ話している中、「はじめ!」の声と同時に美和は踏み込み、

3年生から一本取った。

「は…?今何やったの?見えた?」 「いや、踏み込んだ…までは見えた」


「大和、美和は何したの?」と沙織もわからなかったらしい。

「踏み込んだと同時に脇に一撃入れたんだよ。…美和と手合わせは

また今度にしよっと」大和が苦笑いした。


座り込んで動けない3年生に

「約束なので、諦めてください。失礼します」と、帰ろうとしたら

やはり引退した元・部長が出てきた。 なかなか強そうな男子だ。


「手合わせを、お願いしたいっ」

「えええー。…そうだ、大和がいる。男子だし彼が相手になりますきっと」

と、大和を差し出した。

「お…俺!?」  

「ちょうどいいじゃない。試してみたら?」

「…じゃ、やってみようかな。美和を相手にするよりいいかも。

お願いします」


               *


5分後、元・部長も座り込んでいた。

「よっしゃ、修行の成果!」

「それでは先輩方、失礼しますっ」と逃げた。


「わあああん。諦めきれないー」とジタバタする剣道部員たちだった。


               *


「屋敷の一件以来、剣に慣れたみたいで自然と体が動く感じだわ」

「うん。見てると流れるようにすごく自然に動いてるよ」

美和の言葉に沙織が答える。

「俺はまだまだだー。…動いて腹減った。ハンバーガー食って帰ろう」

「あ、ついでに修学旅行の計画立てない?九州だし霧島山へ行かない?」

「よしっ。やろう」

美和の提案に寄り道が決定した。


読んでいただき、ありがとうございます。

まだ続きますので、読んでいただけますと嬉しいです。



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