18・閑話
「翼よ、眠れ~アヤカシの末裔・外伝~」エピソード17・鞍馬山
を先に読んでくださると、より楽しいかと思います。
連休に美和と沙織が村にやって来た。
秋の収穫祭りがあるので、お祭りに誘われたのだ。
沙織は早池峰と何やら始めている多嘉良の手伝いに広場へ向かった。
「霧島くん、調子はどう?」
「てか、名前で呼んでくれる?俺も名前で二人を呼びたい。
村のみんなはもう大和って呼んでくれてるんだ」
「うん、わかった。で、大和は愛鷹に剣術習っているんだって?どう?」
「毎日アザだらけでーす。情け容赦ないよ。しかも、戸隠さんまで
参加してくれてる」
「あー、ホントだ。腕と足がすごいコトに」
足元を覗き込むと紫のアザだらけだった。
「美和もこんなんだった?」
「ううん…。そこまでは…。女だから優しかったかも」
「ふ…不公平だぁ」
「おーい。バーベキューやるぞー。手伝ってー」
多嘉良の声に2人は「はーい」と返事をする。
「源さんはじめ猟師さんたちが捕って来た猪と鹿です。
しかも、もうさばいてある」
「おおー」
「遠慮しないで食えー。わしは酒がメイン」
源太はすでにできあがっている。
テーブルに肉やらお酒やら、お茶菓子が山ほど並んで、
村人60名がほとんど集まって、秋の収穫祭りの大パーティーだ。
「大和もそろそろ学校へ戻れよ」多嘉良に言われて
「美和たちと帰って、来週から戻ります」と返事をした、その時だった。
「愛鷹、何か来る」戸隠が耳をそばだてた。
聴覚のいい狐族の耳には何か聞こえるらしい。
「西の方から飛んでくる。お前何かしたのか?名を呼んでる」
「西?」
「テーブルをはじに寄せて。とりあえず火を消して」
戸隠の指示に、「何?何?」と慌てながらも言う通りにすると…。
「愛鷹ぁぁ!」と烏天狗が飛んできた。
物騒な事に両手に刃物を持って、愛鷹目指して突っ込んでくる。
「使え!」テントの柱に使っていた鉄棒を戸隠が愛鷹に渡す。
ガキイイイイン…。 ガガガ…。
飛んできた烏天狗がいきなり斬りかかってきた。
愛鷹は刃を鉄棒で受け止めて、相手を見て「華菜!?」と叫んだ。
「やっぱ愛鷹は強いなぁ。うち、お嫁に来たんやで」
「はいぃ?」 その場にいた全員が口を開けた。
「あと、今の名前は鞍馬や。父さまから名を受け継いだんやで」
「よかったな。美人なお嫁さんだ」と戸隠が愛鷹の右肩を組む。
「ナイスバディなお嬢さんだ。不満はないだろ」と多嘉良が左肩を組んだ。
「お前ら、面白がってるんじゃない」
「ほー…」と呆然と見ている美和は元・華菜の鞍馬と目が合った。
「あ、この子はね、美和って言って、愛鷹の妹分だから。
兄ちゃんに彼女がいてびっくりしているだけだからね」と
多嘉良がフォローする。
「おおー。将を射んと欲すれば、まず馬を射よ。 よろしく小姑!」
「小姑言うなぁ」と鞍馬の言葉に思わず大笑いしてしまった。
「あ、ええ子やねぇ。よろしゅうね、美和」と、握手した。
「あの…鞍馬さんて、ガイドしてます?これ」と、大和がスマホの画面を見せた。
『鞍馬山のコスプレガイド・鞍馬ちゃん』と紹介されている。
「そうそう、うちや。結構いいバイトやねん。コスプレってのもええやろ?
で、たまにデートに誘われねんけど、婚約者おるし断ってんねん」と、
愛鷹を見る。
「誰が婚約者なんだ」
「約束したのに、忘れちゃったん?」
「断ったはずだ」
「はいはい。何が不満なのかなー?お幸せに」
「同じ種族だし、全く問題ないな。おめでとう」
多嘉良と戸隠は久しぶりのイベントで面白がっている。
「みなさん、よろしゅうおたの申しますぅ」
村人は頭を抱える愛鷹を横目に、鞍馬を大歓迎した。もちろん面白がって。
「さあ、お祝いだ。乾杯だー」 「祝言はいつ?」 「お二人の馴れ初めは?」
「めでたい。あの朴念仁に嫁が来たっ」
夜更けまで祭りは続いた。
*
「皆、好きだな。何なんだ、このお祭り騒ぎは」
「美和が産まれた時以来のめでたいイベントだからな。
で、正直なところ彼女はどうなんだ?」
戸隠の家の屋根の上で、子供の頃からの親友である戸隠と愛鷹が
月を眺めながら酒盛りの続きをしている。
「どうって…。剣の師匠の娘で子供の頃から知っているし、性悪も悪くない
…というか、いい子だよ。いつも俺の右に立って
俺が見えない範囲を見てくれているのがわかる」
「最高じゃないか。それに師匠の名を継いだなら、手強いだろうな」
「なにかというといきなり斬り込んでくるんだぞ。しかも真剣で。
敵なんだか味方なんだか。油断できない」
「あっはっは。確かに困惑するな。ずっとここに住むのか?」
「京都での仕事がすぐには辞められないから、行ったり来たりするそうだ」
「では村人の名簿に予備で入れておこう」
一方の鞍馬は美和たちと意気投合して、特に沙織と恋バナで盛りあがって
そのまま雑魚寝になっていた。
鞍馬は村にすっかり馴染んで、古くからの友人のようになっている。
「…まあ、いいさ」と、愛鷹。
「うん、綺麗な月だ」と、戸隠。
静かに村の夜が更けていく。
読んでくださってありがとうございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。




