17・歓迎
母親の遺骨を墓に納めた後、霧島は多嘉良と村へやって来た。
「君が持っていた太刀は美和の刀と一緒に穂高さんに預けるから
手入れしてくれるはずだよ」
「はい。…俺の刀ですか。使えるようになるのか…いや、なりたいです」
「君次第だね。さあ、みんなに挨拶しに行こうか」
多嘉良に連れられて、霧島は村人の集まる広場を目指した。
*
「霧島くん。やうと村へようこそ」にっこり笑って戸隠はじめ、皆が出迎える。
「戸隠さん、炎を飛ばさないでね。愛鷹は刀を抜かない。
てか、なんで帯刀してんの? 大江先生と早池峰は指ポキポキしないで。
早瀬さんと梓ちゃんは水を引っ込めて。 あと源さんたちは猟銃を構えないっ」
多嘉良は大慌てだった。
「あの…みなさん。ごめんなさい。とても大変な事をしてしまって…」
「なんてね。大丈夫ですよ。ちょっと悪ふざけが過ぎました」
ほほ笑む戸隠に霧島はうつむいて、その笑顔が怖いです。
と、冷や汗をかく。
愛鷹が霧島の顎を持って上を向かせて青い方の瞳を覗く。
「千里眼か。今も見えてるか?」
「それが、使い方がわからなくて」
「知り合いの顔を思い浮かべてからその場で回ってみろ。
一番感じた方向にその人はいるから、そこへ集中して」
霧島は言われた通りにその場でゆっくり回ると、
一か所で引っ張られるような感じがして、その方向へ集中してみると
目の前にモニター画面が現れたかのように人が映し出された。
「あ…美和が学校で数学の授業中だ。」
「できたな。それでいい」
「…あなたが愛鷹さんですか?美和の剣術の師匠。
羅刹が考えているのがわかりました。『この女、手ごわい。何者か?』って。
俺にも剣を教えてもらえませんか?」
「何のために?」
「再び羅刹が襲ってきた時に、彼女と一緒に戦えるように」
「そこは君、『美和を守れるように』ではないのぉ?」
霧島の尻をポンポン叩いて、不満そうに梓が言う。
「…その…俺は、今はまだ守られる方だと思う」
「!!!素直―。君のことちょっと気に入った」梓が大笑いした。
霧島の腕を掴んだ愛鷹は
「この筋肉じゃ問題外だな。美和は一見華奢に見えるが
きっちり筋肉を付けている。とりあえず、その辺の山を毎日5時間ほど
登ってこい」と告げた。
「…は?」
「美和は6つの頃からやって、基礎体力と筋力をつけている」
「変態アスリートですか!?」
「今のセリフは内緒にしといてあげる」と
梓がぷぷっと吹きだす。
「鬼の末裔なら力業だが、その瞳は烏天狗の血も入ってるな。
特訓次第で化けるかもな」
「が…頑張りますっ」
そうして霧島はしばらくの間、村で多嘉良と暮らして
早朝から毎日の山登り5時間に田んぼや畑の手伝い。木の切り出し。猟。
あらゆる仕事を手伝って、鍛えられていくと同時に
気持ちを落ち着かせていった。
*
「大和は強い子だな。でもたまに弱音を吐くもの悪くないんだぞ」と
多嘉良に声をかけられて、縁側でぼんやり外を見ていた霧島は身体を硬直させた。
「…俺は…」
「長い間おかしな状態にあったんだろ?普通になれって言ったって
まぁ、いきなりは無理だよな」
泣きたいような、笑ったような顔をして大和は多嘉良の言葉に頷いた。
「でも、みんな親切で優しくしてくれて助かってます」
「…多嘉良さん、俺の父方の先祖は霧島山の近くに住んでいたみたいです。
戸籍を取り寄せたら、天保の時代まで遡れて住所が霧島山の近くに
になっていました」
「そうか。自分のルーツを知りたいと思うか?」
「そうですね…。でも今はいいかな。ここで静かに暮らしていければ。
多嘉良さんのごはんも美味しいし」
「何を年寄りみたいな事言ってんだよ。帰って学校へ行って勉強しなさい」
「そうですね。あはは」と笑った。
「ここはとってもいいところです。落ち着いて、穏やかで平和で」
「末裔たちはみんなそう言って帰ってくるよ。特に都会は向いてないってね。
でも帰って来るのは今じゃなくてもいい」
「はい」
ゆっくりと息をして、霧島大和は村の心地いい風を感じていた。
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