11・祖母
学校では相変わらず霧島が休んでいて、嵯峨野がお見舞いに行くと
盛り上がっている。
「お願い。止めて」
嵯峨野の後ろにいる老人が、美和に懇願する。
「行かせないで。孫を、あゆみを止めてください」
「え…」
廊下の窓際で、
「沙織、嵯峨野さんのおばあちゃんがお見舞いへ行くのを止めてって。
どうしたらいいと思う?」と相談した。
「美和が…美和がわたしに相談とか、超嬉しい」
「え?友達に相談くらいするでしょ」と言ったら
沙織がぎゅっとしてきた。
「…嵯峨野さんのおばあちゃん?いるの?」
「うん。嵯峨野さんの後ろにいつもいるの。以前わたいのバイト代を
盗った時も土下座して謝られて、何も言えなくなった」
「あの時。それで黙ってたんだ」
「ストレートに言っても信じないだろうし…」
「いっそストレートに言っちゃえば?
おばあちゃんと嵯峨野さんしか知らない事を話したら信じるかもよ」
*
放課後の教室で、嵯峨野に
「おばあちゃんて、肩までのストレートヘアで白いサマーセーターと
紺色のスカートが好きだった?」と聞いた。
「何よ?急に」
「霧島くんのお見舞いはやめてって言ってる」
「はぁ?穂積さんって、アタマ大丈夫ですかー?」
「言い方っ」沙織の方が怒っている。
「あゆみは小さな頃、幼稚園の滑り台から落ちて
後頭部に傷がある。今でも残ってる。
小学校までは両親が共働きだったから、あたし…おばあちゃんの家に
いつもいて、甘やかしてた。可愛くて、何でもしてあげたかった」
淡々と話す美和の話しに、はじめは馬鹿にした顔をしていた嵯峨野だが、
次第に真剣になっていった。
「私が入院したのはいつ?」嵯峨野が試すように言う。
「小3の時、盲腸で。おばあちゃんが面会時間いっぱいまでいて、
代わってあげられたらいいのに。っていつも言ってた」
嵯峨野の質問にも美和は正確に答えた。
「……当たってる。サマーセーターもスカートも
お気に入りだったから、死んだ時に棺に入れた」
「その人がいつも嵯峨野さんを心配して、霧島のお見舞いは
やめてって言ってる」
「…あっそ。どうやって調べたら知らないけど、
霧島くんを取られそうで邪魔しようとしてるんでしょう?
ぬりかべのくせにっ」
「ちょっと…」沙織が掴みかかりそうになったのを止めた。
「どうしても行くの?」
「当たり前じゃん。ノートも取っているんですぅ。渡してあげるの」
「ムカつく、この言い方」沙織がぶつぶつ言う。
「じゃあ一緒に行く」
「美和ぁ?」沙織が呆れて声を上げた。「もう放っておけばいいのに」
「なんで来るの?穂積さんは邪魔なんですけど」
…と頭に何か当たって嵯峨野が振り返った。
「おばあちゃんが怒って殴った。この子はなんでわからないかなって。
死者が生きてる人間に触れるって、相当なことだよ。
それと、またお仕置きで押し入れに閉じ込めようか?って」
「! マジで。なんで…?」
「だからわたしは死者が視えて、話せる」
「わたしも最初は信じられなかったけどね」沙織がファローする。
「…ふん。もういい。わたしに構わないでよ」嵯峨野は教室を出て
霧島の家へ向かった。
*
「なによっ。腹たつわー」
「沙織が怒らなかったら、わたしがひっぱたいてたかも。グーで」
拳を握る美和は、沙織によしよしされるのだった。
「とにかく、霧島の家へ行ってみる。…武器が欲しいな」
「わたしも行くよ。わたしなら素手でいける」と沙織が手をヒラヒラさせた。
「…ありがと。でも無理しないで」 「うん」
沙織が友達で良かったと、心からそう思った。
読んでいただき、ありがとうございます。
引き続き、読んでいただけますと嬉しいです。




