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アヤカシの末裔3~人喰い羅刹~  作者: 遠野まみみ


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10/12

10・天城山

空気の悪い都会は歩けないために、山や山里を歩いてくる早池峰はやちねとは

登山口で待ち合わせた。


「お疲れー」手を振って早池峰が待っていた。

「俺の標準語、うまくなった?」

「はやちゃん、すごい。上手」

「たくさん練習しました」

仲のいい二人を見ていると、幸せな気持ちになるけれど

ほどほどにと、お願いする美和だった。


2時間と少しで万三郎岳へ。

「ちょっと集中してみるね」山の中で『視えるスイッチ』を入れるが

変わった様子はなかった。


「万三郎さんは伝説になっていて、奥さんがいたってネットで見たから、

継いだ者もいると思ったけど何の気配もないや」

まわりを見回した美和はがっかりした。


「ここら辺は登山者も増えて、木も切られてしまったから

他へ移動したかな?ちと、声をかけてみるか。

…おーい、山の主殿よ、俺は北の山から来た早池峰と申す。

主殿はおらんかー?」

早池峰の呼びかけにも返事はなかった。


「もし霊になっているなら、呼んでみようか。やったことないけどダメ元で」

美和は座って目を閉じて、集中しはじめた。


               *


         ユラリ

空気が揺れた。


目の前に人間の老人が立っていた。

「…万三郎さんの関係の方ですか?」

一人で話し始める美和に、「誰か来たんだ」と沙織と早池峰は

邪魔をしないように少し距離を取った。


老人は万三郎の子孫だと名乗った。着物なので、古い時代の人のようだ。

他に血縁の者はここにはいないらしい。

「鬼と戦った話しを知りませんか?」と聞くと

「この近くにある大きな木の根元に書き残した物があると

言い伝えがあるから、それを見なさい」と、

「大きな木?」

「ついてきなさい」


美和に続いて、沙織と早池峰が歩いて行く。


               *


そこには紙垂しでの名残が下がった注連縄が巻かれた

巨大な切り株があった。

長い年月で木が倒れ、切り株だけが残ったようだ。

「よかった。誰にも見られずに朽ち果てるよりずっといい」と、

案内が終わると、老人は静かに消えていった。


「この下だって」

切り株の周りを見るが、変わったところは何もない。


「よっと」沙織が根っこを持ち上げる。

「壊したら悪いよね!?はやちゃん、ちょっとずつ持ち上げてみようよ」

「よし。美和はちょっと離れていて。根をちぎらないように、そっと…」


切り株の下の隙間から木くずのような、ボロボロになった紙が出てきた。

「時間が経ちすぎたけど、読めるかな?ちょっと待ってて」

美和はリュックからビニールを取り出して、

ギリギリで紙の状態の物を全部入れ、切り株を元にもどして

礼をすると下山して行った。


               *


「すごいな比十ひとの能力。死人と話せると嘘もごまかしもできないよね」

沙織が感心した。

「昔は文字が無かったろ?必要なかったからさ。

比十がいて、死者からでも話しが聞けたから、文字で残す必要が

なかったんだ」

「え、そうなんだ」美和と沙織が同時に声を出した。

「アヤカシの歴史だば、そうなってらど」

早池峰が思わず故郷の言葉になっていた。


「だが、死者にも限界があって、時間が経ちすぎると

いなくなってしまうんだ。なのでやっぱり文字が必要になったとさ」

「それと詐欺には気を付けないとね。ありもしない事を言うのがいるって、

以前母が言ってた」

「なるほどー」


そんな話をしながら、紙は早池峰が持って帰って解読する事になった。


読んでいただき、ありがとうございます。

引き続き、読んでいただけますと嬉しいです。



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