第50話 道民、自力で旭川に帰還する
開けた扉の先はレンズフレア。見たこともない、現実味のない場所だった。
「っこ、ここは」
思いもしない場所だったが、彼女が言ったように――……。
***
「決して振り向かないこと」
「閉開錠をし続けること」
「帰ることを考えること」
***
オレは集中をし続けた。
たったの、二十四回だ。二十四回!
「《開っっっっ錠!》」
前に鍵を差し込んでオレは、言われ言葉のまま戻り続ける。
周りの光景も、様々と、見たことのない場所に移り変わっていく。
ダイアモンドスパークにグリッター、さらにシャインレイとなって、ハロに移り変わった後は、見覚えのある真っ白な部屋に立ち竦んでいた。
「《施錠》」
ガコン、と後ろの扉が閉まる。
重い音が部屋の全体に鳴り響いた。
「おや? ……どうして戻って来たの?」
彼女の質問は、悲しそうな口調だった。
俯いたままの顔を前に真っ直ぐと持ち上げて、目の前にいるだろう彼女の方を見る。
妖怪バックベアードから女性のスーツ姿になった、あの日のままの容姿だ。
「私が出来なかったことを、ショータはヤるんだな」
「オレは元の世界に戻ります」
彼女の奥にある扉を指差した。
何十年、この日を願って生き続けて来たか。
貴女なんかには分からないでしょうし、知ったことでももないんでしょうよ。
ゆっくりとオレは扉へと、言い得ようのない感情を抱えて歩いて行く。
「そうか。ショータにあげたものは、そのまま元の世界でも使えるように神たちに頼んでおこう。それが私のショータへの想いだ。また、仕事の依頼があれば呼ぶ。そのときはどうか、応えて欲しい」
「時と場合によるんじゃないでしょうかね」
彼女を越えて、来たときの扉の前に立った。この扉を「《開錠》」と開けて中に入れば、リスタート地点。十四歳、マルチバース後の世界。
「それでは、……御機嫌よう」
扉を潜るとホワイトアウトだった。辺り一面真っ白で、何もかもが見えない。旭川じゃなくても道内ではよくある現象だ。
「北海道っ!」
地面に寝転んで宙を見上げている。ずり滑ってしまったんだろう、足元もアイスバーンだ。骨折していないことがよかったというほかないんじゃないのかな。
「旭川、……オレは帰って来たぞ!」
オレは手を宙に上げて鍵を回す真似をする。
「《カップ=ヌゥダールの名において命ず!》」
ホワイトアウトが嘘のように開けて青空が見えた。




