第48話 異世界転移者の後悔とその先へ
ダンジョンの番人と名乗った竜族ジラゴは、高い身長をオレたちの背丈に合わせて小さく変わった。
抜け殻となってしまった巨大な竜の遺骸も塵となって消えた。
おかげで本来の目的である第三の金庫も見つかる。
中身も玉座である為か、オレたちの背丈以上もある大きさと存在感だ。
「さぁ。クボヤ鍵師、仕事をしろ」
「はいっ」
「何じゃ。金庫とはカギというもので開けられるんじゃないのか? まぁ、……これだけ錆ていれば無理なのかもしれんな」
二人の声を耳にしながら、オレは金庫に何か攻撃術式を確認をする。
結果として、何も施されていなかったことに安堵の息を吐いたときだ。
両隣で二人がオレに話しかけてきた。
「古い金庫じゃ。すでに施された術など解けてなくなっておろう。当然だろうが」
「一目見たら分かるだろう、クボヤ鍵師」
二人から煽られ、言われる言葉を聞こえないように受け流した。ないならないって、はなっから言ってくれたらいいでしょうが。
怒りや恥ずかしさで頭が沸騰しているよ。
ガチャリと【第三の金庫】を開錠した。
「開いたっ」
オレの言葉に二人が身体を前に躍り出て、弾かれてしまったオレは、地面にへたりと座り込んで見上げる格好になる。
ジラゴが細い腕で扉を勢いよく開けてくれたおかげで、中身である玉座も目の当たりにすることが出来た。
装飾の素晴らしさも圧巻だが、黄金に輝く玉座は神々しく見惚けてしまう。ダンジョンの内部を照らす灯りが美しさに拍車をかけているな。
腰を浮かせて無意識で玉座に触れようとしたが。
ジラゴの尻尾に手の甲を弾き飛ばされた。
「汚い手で触れるな」
「すいません」
「私の汚い手で申し訳ないが、玉座は鳥かごの中に入れさせてもらうぜ。いいよなぁ?」
ジョイは鳥かごを横に浮かせている。小さなサイズが、嘘かと思うくらいに巨大になっていることに驚いた。口の扉も開かれていて、今にも全てを飲み込めそうだな。
「その中に神器が入っているのじゃろう。仕方ない、許可する」
「有難き光栄。では、失礼をさせてもらいましょう。……飲み込めっ!」
中から赤い舌のようなものが伸び出てきて、中身である玉座を中へと掴み入れて扉を閉じると、宙に浮かび上がって消えた。一瞬の出来事で、もう終わり? とすら気も抜けてしまう。
「終わった、んですか? 終わったんですよね?」
「ああ。お疲れ様だな、クボヤ鍵師」
「金庫はこれで最後だ。何を寝ぼけたことを言うんじゃ」
はぁ。また腰が地面に落ちて、全身から気も抜けてしまった。倦怠感に、筋肉痛に見舞われている。放心状態で思うのことは、異世界は店仕舞いだということだ。
「地下ダンジョンに入ってどれぐらい、時間も経ってますか?」
「ああ。今日が戴冠式だな、……式までは三時間はある。睡眠も十分ではないがとれるな」
今、彼はオレになんて言ったんだ? 聞き間違いをしたのか。朝だったはずが、もう次の日で早朝だとは驚き桃ノ木だよ。
「とりあえず地上に戻るぞ。もちろん、クボヤ鍵師の能力でだ。いいよな」
「それはもちろんっ! ……えぇっと。ジラゴさんも、地下ダンジョンの後継者である番人として戴冠式に参加の上、新王の前に行った方がいいんじゃないでしょうか」
「当然だろうな。ぅんじゃ、行こうぜ」
オレと彼の話し合いのまとまりに「妾も、外に出ろというのか?」と怪訝な表情で顔を交互に警戒して見ている。後ずさりする様子に、ジョイがジラゴに手を差し向けた。
「眩しい世界に行こうぜ」
彼の言葉に唇を噛み締めるしかない。
そんな世界を、オレは意固地になって目を瞑っていたんだ。
とても恥ずかしい気持ちすら沸き起こる。
「…………(異世界を拒絶なんかしないで、きちんと受け入れて見るべきだったんだな)」
心が堪らなく痛い。




