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鍵師のおしごと  作者: ちさここはる
EP4:王族の地下迷路金庫開け依頼編
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第47話 竜との勝敗

「ガタガタと喚くんじゃねぇよ、クボヤ鍵師」


「うぇえぇえ~~?」

 


 口と鋭利な何かが突き出した腹部から夥しい血液を流している。

 なのに、ジョイは平然とオレを窘めた。


 被害を受けている彼の言葉に、オレも黙って聞くしかない。

 視界でゆっくりと腹部を突き出しているものを掴む指先が見えた。


 痛いだろうにと、オレは見ていることしか出来ない。状況はひっ迫して、ヤバい局面と分かっている以上、意識が全集中とばかりに彼へと向けられる。


 彼とオレの目がかち合うとひと際大きな声で、次の指示を告げた。

 

 異世界に連れて来られる前のような、()()()()()()()()()であることは確かだ。

 


「捕らえたぞ」

 

「! はいっ!」

 

()れっ!」



 オレは応えなければならない。

 

 ジョイさんの後ろへと全身を翻して相手を見た。心臓が大きく高鳴って、今にも口から飛び出してしまいそうだな。


 ここで臆病風に吹かれて竦んで立ち止まったら、彼に申し訳ない。攻撃を受けて体を犠牲に敵を動けないようにしてくれているのは、オレを信頼してくれている証拠でしょう。


 目が捕らえた相手の容姿に驚愕だ。

 


「お前、その姿はっ」


「よくも(アタクシ)の身体を弄んでくれたな」



 ダンジョンの灯りから、真っ黒い肌の鱗が見えて、全身が輝いている。

 

 そう、真っ裸だよ。身長はいうまでもなくオレやジョイの遙か彼方、デカさの桁も違う。尻から生えた尻尾が彼の腹部を突き抜けている状況だ。


 頭の真っ白くて手入れもされていない髪は質量も多く、エルフ並みに尖がった耳の上、長い角が太く枝分かれして火花を散らしている。吊り上がった藍色の瞳、白目箇所は黒い。


 オレの怯んだ顔が映し出されている。

 

 嫌だな、こんなにも情けない顔をしているのか。

 みっともないったら、ないじゃないの。



「気持ちよく寝ていたというのにのぉう!」



 小さな口が大きく裂けて見える。口腔内の歯は鮫のように鋭利で、どんな敵も噛み砕きそうだよ。


 藤紫色の二枚舌がにょろっと、蛇に似た動きで、左右に動かされる。


 小さな胸と細い体躯、むっちりとした太腿から伸びる足先は竜の名残りで鋭利な爪が地面を踏んでいる。


 

「何もしておらぬのになぁアア!」

 

「してますよ」

 

「はぁ? 何の話しじゃっ!」



 オレは首を傾げる竜女に「貴女の身体下に金庫があって、それに用事があるんです」と指を差して説明をした。オレの仕草に竜女も差した先を見る。


 彼女からは見えなかったようで顔を傾げた。金銀財宝の山の、しかも竜の死骸の下だ。見えるだろうか。



「金庫じゃと?」

 

「はい。この王国の神器でして、明日、使用をしたいので取り出したいだけなんです」

 

「そんなもののため、……妾にああまでしたというのか?」



 ダンジョンとはいえ、場所は人間の敷地内である。そこを巣くう許可なんか貰っているはずがない。ある種の不法滞在にあたるでしょう。


 どんな経緯で場所を選んだかを、オレたちも知らないが引っ越しを願うしかない。


 

「《カップ=ヌゥダールの名において命ず!》」



 オレの言葉に竜女は尻尾を抜こうと足掻いだが「させねぇよ」とジョイが尻尾から手を放さなかった。



「《現ダンジョン追放!》」


 

 「ああ。貴様があの方の寵愛を受けている人間の、……よかろう。妾の負けだ」



 反撃されるかなと思ったが、やはりあの女神の名前は効くようだ。



「尻尾、腹から抜いても大丈夫か?」

 

「! 抜いてくださいよ! 大丈夫ですから!」

 

「気は抜くんじゃねぇぞ」


 

 彼の言葉にオレも「はい」と小さく頷いた。あの女神の名前を言ったのに、竜女の態度は変わらない。何か他に事情があって、隠しているかのようだ。



「では、抜くぞ」

 

「とっとと、抜けよ!」

 

「よ、っと」



 腹部から尻尾が抜き取られれば、ジョイが両手で傷口を覆う。夥しく噴き出して身体も衣服、辺りを汚す血もすぐに急き止められた。


 治癒の様子に、オレもよかったと竜女から目を離して安堵の息も漏れてしまう。そんなオレに、固い言葉が投げかけられる。



「妾は【ダンジョン追放】を言われる覚えはない。撤回せよ」

 

「え? わぁ。服をっ、何か羽織って下さいっ」

 


 オレに声を掛けて来た竜女は真っ裸で硬直してしまう。顔を両手で覆い隠して叫ぶ情けないオレを他所に、ふぁさっとジョイがどこからか取り出した毛布を肩にかけた。



「異種族の女に興奮すんなよ。変態か」


「何を言ってるんですか! 普通の反応ですよっ!」


 

 言い合うオレたちを無視して「前職者である番人より、妾は後継者に任命されたっ」と前も締めずに仁王立ちとドヤ顔で事情を教えてくれた。


 

「前任者の番人だって? 死人に口なしじゃねぇか」

 

「口はないが任命書は、この通りある!」

 

「角を開けて中から、……すごいな」



 頭の枝分かれした角を開けて取り出された紙を、ぺらりと広げてオレたちに見せつける。

 

 見せられる紙をジョイが手で掴みとって、文章を目で読んで紙を竜女に丸めて返した。



「正式なダンジョンの番人、竜族ジラゴだ」

 

「本物なんですか?」

 

「ああ。ダンジョン追放は、どんな神の名前を出しても叶わないだろうな」



 ジラゴという名前の竜女にオレは――事実上、()()()

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