第46話 竜と中身の行方
一ミリにも満たない距離間。死ぬ間際だというのに――……。
「《カップ=ヌゥダールの名において命ず!》」
「『刻壁、封鎖ぁあ!』」
全く、怖くないんだ。
「《全領域、施錠っ!》」
ジョイさんの術が、瞬く間に壁を創り上げた。
壁が全領域である範囲を、オレが施錠をして塞いだことで強化し、竜からの攻撃は見事で防ぐことが出来たことに武者震いが起こる。
とんでもないことを成し遂げたんだと実感をしたんだ。
頼もしい相棒のおかげで。
しかも、オレたちに向けた攻撃は竜自身に戻って大爆発をした。思いもしなかった防御方法に竜も驚いたんじゃないのかな。
ただ、いい眠気覚ましになっただけにならないことを願うばかりだよ。
「すんごいじゃん。クボヤ鍵師」
防御による功績に、ジョイも横のオレの肩を拳で軽く弾き叩いた。
咄嗟の動いて行ったことに、オレも肩を揺らして荒く息を吐くだけで、言われたことでようやく実感をしたんだ。
怪我もなく二人とも無事でいるってことに。
「ありがとうございます! これからの指示をお願い出来ますかっ!」
「っぶぁあアぁあっかァ! 真に受けてんじゃねぇよっ。こんなこと出来て当たり前じゃん?」
素直に聞いた分、彼からの出来て当たり前の言葉は鋭利で納得は出来たものじゃない。今は彼の相棒として、隣で頑張りたいんだ。
オレに師匠と呼べる存在がいたのなら、彼のように飴と鞭を使い分けて鍛えてくれたでしょうか。欲しかったなぁ。
「…………(エッカにも、……そうで在ればよかったのかもしれないな)」
反発するよりも行うべきことがある。
オレは彼からの指示を仰いでやりきってた。不出来な弟子で、いい相棒だと思い出せるくらいの【存在】と記憶を残して帰りたい。
今日よりも明日の自分を誇れるようにもなりたいんですよ。
「…………(エッカが追放されても、笑顔だったのか)」
早く、彼女に逢いたい。ぎゅっと抱き締めてあげて、許されるまで謝らなきゃいけないんだ。
仕事が終わったら、すぐにでも旭川に帰ろう。
「次は何をしたらいいんですかっ!」
「まずは竜の様子を見るとしよう、開錠しな」
「え! っで、でも、……分かりました」
ジョイの提案にオレも言い返したかったが、何か考えがあってのことなんだろうな。言葉を飲み込んで頷くことにした。
「《開っっっっ錠っ!》」
オレはがちゃり、と開錠させた。もちろん納得なんかしていない。
でも、彼を信じる。オレの相棒ですからね。
「優秀な鍵師ちゃんだな♡」
「ありがとうございますっ!」
「……さァ、行くぞ!」
黒煙が立ち上る竜の前へ降り立った。オレも彼の後に続くしかない。
香ばしく腹も空くような臭いがする煙も、ダンジョン内に充満をしている。
煙で辺りが遮られて見えないことにオレは「《風の神よ、旋風を吹かせてくれますか》」と頼んで、ダンジョン内の煙を吹き飛ばして貰った。
「おい。貴様は何をやってんだ」
「換気をしたんですが、イケませんでしたか?」
「そうだな。言うなら余計な真似だ」
ダンジョン内を換気したことを彼からも、余計な真似と吐き捨てられてしまう。あんな煙まみれのまま、鼻先も痛い空間の方がよかったっていうのか。
「あー~~……だからな? 敵さん側の視界を広げてくれちゃってどうすんだって話しだよ」
「え」
彼から言われた言葉に、オレもぎくりとなってしまった。
そんなことを言われたら、それはそうだな。血の気も低くなる。視界も黒くなって、息継ぎも忘れたかのように出来なくなってしまう。
「私たちも丸見えになるじゃんか、竜の野郎から」
「っご、ごめんなさいっ!」
「やっちまったことは仕方ない。次からは気をつけるんだな♡」
目の前にいる竜から丸見えだという現実は、オレの慢心から創り出してしまった窮地だ。
ところがだ、竜がびくりともしない。肌の呼吸をする動きが見た感じない。竜自身の攻撃をもろに喰らって自滅したということなのか。
「竜は、死んだんですかね?」
「どうだかな」
身動きのしない竜をオレたちは見下ろしていた。
オレは全体的に竜を眺めていると、何か違和感を覚えた。どこかの何かが、おかしいんだがそれが分からないんだ。
この気持ち悪さはオレだけなのか、彼にも確認したいが聞くことが出来ない。
「つぅか。ありゃあ、抜け殻だな」
「え?」
「中身は――」
ずしゃ! とジョイの腹から鋭利な何かが突き出た。
夥しい鮮血が噴き出したことに「は?」と間抜けな声がオレから漏れ出てしまう。
エイリア〇は勘弁してくださいよ。
「ジョイさンん!」




