第44話 竜への先手必勝、不発からの危機
「あいつが元凶か」
「本当に、竜が……いる」
ダンジョンの中枢に着くと金銀財宝の量がさらに増えて、ひと際、大きな山の上に巨大な竜が寝息を立てていた。
第三の金庫が宝の中からちらりと見えていて、寝息が漏れ出る度に宝の雪崩が起きて、からんがらん、と崩れ落ちていく。
周りが明るくなったせいなのか、少し唸って身体も動かしている。もしかしたら、起きてしまうかもしれない。流石に竜なんかと戦ったことなんかないぞ。ありゃりゃこりゃりゃだな。
「おい。ジョイさん、どうするんですか?」
「どうもこうもだな」
「え?」
蜘蛛の上に立ち上がって両手を組んで、音を鳴らす様子に「一体、何を」とオレの言葉が聞こえないのか、ふりなのかも分からないが竜に向かって蜘蛛を向かわせている。
「ジョイさんっ!」
オレも驚愕して慌てて行けないようにするしかない。
「《施っっっっ錠!》」
蜘蛛の身体に触れて心臓を止めた。そして、ずしゃっと蜘蛛の足が折れて地面に砕けを落ちた衝撃でオレたちの身体も弾き浮いた。
ジョイの身体は身体の上に座っていて、ゆっくりと後ろのオレを睨む視線から顔を背けるしかないじゃないですか。
「作戦も教えられないのに、……特攻させる真似は、出来る訳ないでしょう!」
「先手必勝だったのにか?」
「でも、相手の竜はね――……ぁ」
寝ているとばかりおもっていたのに、巨大な羽根が大きく広げられる皮膚を擦る音が聞こえて、オレは顔を前に戻した。
怒りと呆れを含んだ表情をするジョイの奥に、目覚めた竜とオレの目がかち合ってしまう。
「いい条件を貴様は潰してくれたんだ。どうしてくれるのか見ものだな!」
「っそ、そんなつもりなんかっ!」
蜘蛛を止めたことで眠っていた竜が起きてしまったようだ。地面を大きく揺らしたんだ、仕方がないのかもしれない。反省はしなきゃいけないな。
「ジョイさんは、あのまま竜に言っていたらたおせてうたんでっすか!」
「五分五分の賭けだが、キメていたとは思うな」
「……今からだと、どうなんですか!」
ごくりとオレはジョイの返事を待った。ここで無理だとか、可能性もないと言われれば、オレだって責任をとって無事に金庫を開けられるか、そこが重要だ。神々からの協力も必須になることだろう。
オレの質問にジョイも顎を掴んで目を竜へと向けた。ダ・カポネ三兄弟の長男である彼は巷の噂では――悪魔のように強く、神のように慈悲がない男だと言われている。
「どう、なんですかっ!」
口端も大きく吊り上がって白い歯が見える。悪戯を考えている子どものような表情じゃないか。
「舐めるのも大概にしておけよ、クボヤ鍵師。意味のない質問は野暮ってもんだ」
「質問答えろよ!」
「はぁんン?」
不機嫌になるジョイよりも徐々に身体を動かしていく、目の前の竜の存在の方が脅威だ。
「ヤれるか! ヤれないかのどっちなんですかっ!」
「私はダ・カポネ三兄弟の嫡男、闇魔術師だぜ!」
オレは蜘蛛の心臓を開錠させて動かしてやると、蜘蛛の足が戻って体勢も元通りになった。竜に向かって突進し始める。駆け走る風の強さにどうにもこうにも、こうなればジョイに委ねる覚悟を決めるしかない。
「サポートしてやるから、貴様は鍵師の仕事をしなっ!」
「わかりました!」
どんなサポートなのかは分からないが、オレは金庫の鍵を開けることだけを考えればいいんだ。きちんと集中して選択を間違うなよ、オレ!
「任せて下さい!」
オレを見ていたジョイさんに強く言い返した瞬間――……。
「ジョイさんンん!」
竜の長い尻尾が勢いよく、オレたちの方に向けて投げつけられる様子に、オレは彼の名前を大きく叫んでいた。




