第42話 蜘蛛と第三の金庫へ
宝の神が指示したのは焼き焦げた門だった。
「開錠っ!」
オレは猶予がないと門の鍵を開けた。
すると中から巨大な蜘蛛たちが勢いよく向かって来たんですよ。
「うあ!」
「ははっ! 大歓迎されてんじゃん?」
「どこが!」
驚くオレにからかった口調で言う彼を見れば満面の笑顔ってのは、もう、怖いってもんじゃないぞ。
さらに、オレの胸元を押し退けて前に立ちはだかったかと思えば「アレを倒せばいいだけなんだよな?」と聞かれたが、そんなことオレが知りたいですよ。
でも、目の前に出しゃばって来た蜘蛛たちを倒さないと、第二の金庫に辿り着くことは出来ない。
「ジョイさん、やっちゃいましょう!」
「そうだよなぁ!」
両手を広げると黒い球が宙に浮かび上がって、優雅に腕を動かすと勢いよく蜘蛛たちに黒い球が飛び向かう。
蜘蛛たちに襲い掛かるのを確認してオレも「カップ=ヌゥダールの名において命ず!」と詠唱をした。
「施錠っ!」
「爆ぜやがれぇええっ!」
「っはぁあア!」
爆音が轟いて黒煙が立ち上り、辺り一帯が何も見えなくなってしまった。さすがに何も見えなくなってしまったことが不安だ。
オレは堪らずに、疾風の神に頼んで撒き散らして貰った訳です。
彼の考えのない大雑把な攻撃に腹ただしくなってしまって、さすがに怒鳴るのはいいですよね!
「どうして! 一ミリも成長をしないんですか!」
「はぁア? めっちゃくちゃ調整した攻撃したから、この程度なんだが?」
「どこを調整したって言うんですか! どこを!」
胸倉を強く掴んで、大きく左右に振る。ジョイも不満そうな表情を浮かべたが、何かを言い返すこともしないで、オレにされるがままに受け入れていた。
まるで子どもの怒りの収まるのを待つ、大人のような冷めた反応じゃないか。気に入らないったらありゃしないな。
手を解いて、大きく息を吐いた。いつまでも、反応をしない相手にし続けても時間の無駄だからな。
『ショータさん。先ほどの攻撃で破裂した大きな蜘蛛の腹部に金庫がありますよ』
宝の神の言葉に「体内にですか!」と思わず聞き返してしまう。それには宝の神も頷くだけだ。
ごくりとオレが躊躇をしていたら、ジョイが破裂した蜘蛛の体内に入って行った。
呆気にとられていたオレを他所に、中に入って行った彼の手に大きな金庫を持って出て来たことに、ブレないなぁとオレは呆れしまった。
『中には、エッグと杖が入っています。開錠なさってくださいまし』
「分かりました」
辺りに散らばる蜘蛛たちの残骸の一部を踏んで、ジョイの傍へ小走りで向かう。駆け寄るオレにジョイも金庫の扉を確認して向けた。
確認したオレも頷いて、前に手を差し出し回す仕草で、金庫の扉を開けた。
開いたことが分かるとジョイが金庫を真っ逆さまにして、ドン! と中身を地面に振るい落としやがった。
「っちょ! 大事な神器になんて手荒なことをするんですか!」
「貴様が遅いからじゃない?」
「人のせいにしないでくださいよっ」
ポイ、と金庫を投げ捨てて、落下した中身を確認する。確かに【エッグ】と【杖】が周りの光りで輝いて存在していた。
「欠けたり、ヒビが入ったりしていないよなぁ」
持ち上げようとしたオレよりも先に、ジョイが手で素早く掴み上げると鳥かごの中に放り込んでしまう。彼の手際のよさに、オレの口もへの字に曲がる。
少しくらい見せてくれたって、いいじゃないんですかね。
「何? 触ってみたかったのか?」
「いえ、別にっ」
ニヤニヤと聞かれたことにオレも悟られないように関心がないように装った。見えたのは一瞬でも、回収できたことは事実だ。怒ってでも、前に進むことが先決だろうな。
ジョイがすることに腹を立てても、きっと、彼にはどうでもよくて関係がないことだ。オレの怒りなんかも面白いに違いない。
怒りを落ち着かせるために、大きく息を数回を吐いたオレは宝の神に頼んだ。
「《じゃあ、最後の金庫まで案内をお願いします》」
『はい』
開いている門に歩いて行こうとしたとき「これに乗って行こうぜ」とジョイを見れば、嘘だろう、と目を疑いたくなるものだ。
「蜘蛛に乗って行くんですか」
「操っているから大丈夫だ。それに地面を行った方が無難だ」
「まぁ、そうなんでしょうけど」
倒した巨大な蜘蛛の比ではないくらい、大きいサイズじゃないか。どこから連れて来たんだ。
むしろ、どうして蜘蛛なんかにしようと思ったのよ。百足の方が、数倍はマシだ。
「…………(蜘蛛、嫌いなんだよなぁ)」
うぐぐ、と蜘蛛から視線を外してジョイを見上げた。と、しゅるる、と金色の糸がオレに巻き付いたかと思えば。
浮かび上がって蜘蛛の上、ジョイの後ろに乗せられた。拒否権もオレにはないようだ。
「よし。クボヤ鍵師、行くぞ!」
「まず、糸を解いてもらえませんか」
どん! 両足で蜘蛛を弾く。蜘蛛はゆっくり前に進み始めて門を潜って奥へと進んで行く。
「貴様なら自分で出来るだろう」
尻に伝う蜘蛛の感触と毛の手触り、オレは恐怖から眩暈に襲われた。こんな事態も、この仕事依頼で最後だ。異世界ともおさらばだ!




