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鍵師のおしごと  作者: ちさここはる
EP4:王族の地下迷路金庫開け依頼編
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第40話 未来の彼とダンジョンの金庫の数

 目が醒めたら見覚えのある天井で「ショータ! あんたは冬休みだからっていつまで寝てるべさ!」と懐かしい声が聞こえた。



「起きてるって! 正月早々、怒鳴らないでくれよ」



 これは夢だ。オレの口が勝手に動いて話しているんだから。走馬灯なのか、ここは一体――……。



「冬休み中、ずっとダラダラして! しゃんとするべ! 情けないったら! 四歳の妹は、規則正しい生活してしゃんと起きているってのにっ」

 


 四歳の妹ってのは誰の話しだ? オレには妹なんかいない、正真正銘の一人っ子なんですが。



「アカネはアカネ。オレはオレっしょ。あー~~お袋ぉ~あけましておめでとうございますぅ~~」

 

「もう! あけましておめでとう!」

 


 不機嫌なお袋の目の前で両手をこすって欲しいものをアピールをしている。それが貰えないと福袋もゲームソフトすら買えないから必死なんだろう。


 今のオレの顔に贅肉を二割増しの中肉中背体系をしたお袋も、オレに苦々しい表情を浮かべている。



「無駄遣いするんじゃないよ。なんなら母さんが貯金を――」



 ポチ袋に入れられたものがお袋の前掛けの横にあるポケットから取り出されて、指先でひらりと向けられるのをオレも拭き取って、中身をすぐに確認をした。



「二万円だ! やったー!」



「どうせ、お前のことだし無駄遣いするんだ。貯金して貯めた方がいい、母さんが銀行に預けて来るべさ。ほら!」



 太い指先がオレからポチ袋を寄越せと向けられた。これは毎年、お年玉を貰うと最終的にお袋が預かって貯金直行となる。


 その後。通帳の残高を見せて貰っていないから、いまだに存在するのかと思っている。お袋が生活費に使っているんじゃないかって、疑っている。


 旭川に帰ったら、通帳の残高を見せて貰わないといけない。これで、また一つ、帰らなきゃいけない理由が出来たな。

 


「おにいちゃん、もうおひるなのにねすぎだよ!」

 

「あ。四歳の妹、……アカネちゃん、かな?」

 

「なに、ねぼけているの。かわいい、いもうとちゃんだよ! きっらぁ~~ん!」



 オレの動揺からなのか、オレの言葉が口から出た。

 

 アカネの顔は凛々しくも形のいい眉毛が特徴的な――写真でしか見たことがない父親似だ。


 父親はオレが一歳ときに事故死してからお袋は女手一つでオレを育ててくれた、はずなんですが。

 

 再婚とか、オレが十四歳のときだってしていなかった。男の影すらなくて紹介もされた覚えだってない。


 もう結婚や恋愛もしなくないとバリバリの仕事人間でカッコイイと憧れたお袋に、一体何があったんだよ。



「ショータ。やっと起きたのかぁ、エッカちゃんと初詣行かないのか?」



「お、やぁ、……じ?」



 写真の中の親父が、大欠伸をしながら頭を掻いてオレに話しかけている。


 まさかな事態だ。夢に見た憧れた世界線が――本当にあるのか。



「アカネもいく! エッカおねえちゃんにあいたい! あいたいぃい!」

 

「仕方ないな」

 

「おにいちゃん、だいすき!」


 

 また、帰らなきゃいけない理由も増えちゃいましたからね。こんな現実があるっていうなら、オレは絶対に帰るよ!


 夢に甘んじるほどオレは子どもなんかじゃない。




「開っっっっ錠!」

 

 


 蜘蛛の糸を開けて外に出れば灼熱地獄と化していた。それをやってのけた人物が身体全体を大きく震わせて高笑いをしている。門にあった蜘蛛の巣と卵も消し炭と化していた。

 


「燃やす前にオレを助けるのが先じゃないですか?」


「甘えるな。クボヤ鍵師、貴様は勝手に出られるじゃないか」



 どうしてこうも人の感情を逆撫でするような真似が出来るんだ。



「金庫は門の向こうですよね!」



 空飛ぶ絨毯はなくなっていて、大股でオレは門へと歩いた。


 しれっとジョイもついて来る。怒っても仕方ない、神器を持ち運ぶ担当だからいなくなられても困るってもんだし、無視をするだけにしておこうじゃないの。


 

「だから。門の向こうかどうかは、私には分からないって言ったろ?」



 素っ気ない言葉に「そうでしたね!」とぶっきらぼうに言い返した。


 

「ちょっと地図を出してもらっていいですか」

 

「矢印があるじゃないか」

 

「立体的な地図で見て見たいんですよ」



 オレの言葉に「分かったよ」と地図がオレの目の前で出た。



「どうすんだ?」

 

「そりゃあ、宝の神に探してもらって位置を見て貰うんですよ」

 

「ああ、なるほど」



 ジョイが腕を組んでオレの言葉に頷く。何も言わないところをみれば、やってもいいということだと思っておこうじゃないか。

 


「《宝の神。神器の入った金庫の在り処を教えてください》」



 オレの呼びかけに、キラキラと砂が集まると容姿が出来上がって答えてくれた。



『お話しは聞いておりました』

 


 エッカくらいある身長で細身。灰色の長髪が顔や身体を覆っていて、足元まで伸びている。頭の黄金の王冠を始め、全身が宝石で着飾れている女神で煌びやかで眩しい。


 

『ここ王国地下ダンジョン内にある神器が納品された金庫は、全部で残り二台です』


「《エッグと杖が一緒なんですか?》」



 宝の神に聞くと顔を縦に振る。金庫の数が分かったことにも助かった。


 少しでも早く仕事を終わらせたいですからね。



「《じゃあ在り処を教えてください》」



 仕事を始めたいんだ。

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