第38話 最強の仲間と第二の金庫へ
矢印に導かれるまま、オレたちは前に進んで行く。
ジョイさんのおかげで周囲も見やすいし、何か影があれば攻撃も、すぐに出来るのがいい。
「言っとくが。攻撃や防御なんかも一切、貴様はしなくていいからな。クボヤ鍵師ぃ!」
「そうは言われても、いきなりとあらわ――」
オレ真横に浮かぶ鳥かごのジョイさんに言い返したときだ。背後から羽根のようなものを擦る音が聞こえて振り返れば、ヤツがいる。
「しつこい、蝙蝠たちだな!」
「それは私も同意見だ」
きれいな顔が歪み、眉間に深いしわを刻む彼の表情。
向かって来る蝙蝠たちにオレも攻撃をしようとしたが「手出しすんなぁ!」とジョイに言われて、身体も硬く動けなくなってしまった。
「…………(なんでっ、からだがうごかない!)」
動かなくなってしまったオレ他所にジョイが攻撃を始めている。蝙蝠が一体、また一体と爆音で爆ぜていった。
まったく、美しくもない花火。もしくは近代世界の戦争的局面場面だが、テレビの液晶なんかじゃなくて実際に行われている現場な訳です。
攻撃で爆ぜた蝙蝠の生々しい破裂音や近い場所。そのために鼓膜もキーンと、聴覚もなくなっている上に、放つ光りが眼球にもろに直撃で視覚すらも奪われて、何も見えない。
オレが一大事だ。仕事に専念どころじゃないですか!
なのに彼はお構いなしに攻撃を放っている。そこまでしなくてもいいんじゃないと思うくらいだ。
「襲った相手を間違えたな、くそ雑魚どもがぁ!」
喜々と吠えるジョイにオレも息を飲み込んでしまった。この攻撃自体、オレのサポートが仕事だからだ。
仕事をしただけの彼に何もオレは言えるはずもない。オレの仕事は金庫を開けるということ。
それだけに集中させてくれるためにいるんだから、有難いと思わなきゃいけないんだ、ろうけどもだ。
「ちょっと、ジョイさん」
「ん? 感謝はいい、私は仕事をしたまでの――」
「至近距離で何をしくさってんですか! 聴覚と視覚がダメになったから治癒の神に頼んだんですからね!」
行われた攻撃の最中に「《治癒の神よ。治してください》」と咄嗟に思いついたオレも異世界に慣れ染まってしまったもんだよ。
「ジョイさんって、他に誰かと一緒に仕事されたことはあるんですか!」
「…………」
すんと鳥かごが宙に浮かび上がる。ちょっと、質問には応えましょうと。まぁ、ぶっちゃけて言えば、ダ・カポネ三兄弟は仲間を持たないことで有名だ。
どうしてと聞くのも野暮だ。三兄弟で事足りてしまうから、赤の他人を招き入れる隙なんか必要ない。連携の取れた動きは巷でも有名な話しですからね。
招き入れたとしても数本だろう。オレも、その数本の指に追加された一般人だ。だからこそ言わせてもらう!
「もう少し、他の人間を考えて攻撃をしてもらえますかね!」
「はいはぁ~~い」
とても軽い返事で相手の顔も見えないのは「人の話は面と面を向かってでしょう!」とオレは鳥かごの自由を【施錠】した。
オレが鍵を使って施錠したことで、宙を飛ぶことをはく奪された鳥かごは地面に大きく音を立てて落っこちて大きく回転している。
足で鳥かごを踏みつけて回転を終わらせてやる。ここまでしなきゃならない相手が彼だ。オレだって、したくなんかないよ。
「クボヤ鍵師ちゃんよぉう? やっていいことと悪いことくらい、その頭で分かんねぇかなぁ?」
「悪いのはオレだけですか? オレだけなんですか!」
ガン! と何度も鳥かごを踏みつけた。怒りの感情でやってしまった、と反省はあとでしよう。
足の裏で鳥かごを転がしたのに中にいるはずのジョイからの反応はない。おかしいなと、鳥かごを持ち上げて中を見た。
「あれ、どういうことだ?」
中身にいるはずの人物の頭部がない。空っぽだ。
「どういう魔具なんだよ」
鳥かごの扉を開けてみる。すると、腕がにゅっと出て来たじゃないか。
オレの鳥かごを持っていた手からも力がなくなって、また地面に落としてしまう。ごろんごろん、と転がり回る鳥かごを中から出た手が動きを止めたかと思えば、鳥かごを地面に立たせた。
ずり、っと中から黒髪の人が這い出て来る。ゆっくりと、オレの前に立ち上がった。
「呪うぞ」
細い腕がオレに向けられて、オレも身構えてしまう。
「っぎゃ!」
情けない悲鳴が口から漏れ出てしまうが、後ろから軽い音が鳴る。風船が割れるようなものだ。
振り返ろうとしたが「見なくたっていい」とジョイが命令口調で言い放って、オレの顔を胸元に押し付けられる。
「私が悪かった」
手のひらで抑えられる頭部の痛みも忘れてしまうくらいの謝罪だ。
ゆっくりと伝えるように反省しているという口調で来られたら、もう怒りもどこかに行っちゃうじゃないですか。
「他の仕事を終わらせてから来てやったんだ。許してくれるよな?」
「神器を集め終えてから許しますよ」
「可愛げのない男だな、クボヤ鍵師っ」
オレの身体を突き放すと鳥かごを持ち上げた。取っ手を持って鳥かごを回して、凹みなのか見て確認をしている。
そして、鳥かごをオレに向けた。
「おい。解けよ! 魔具にかけた【施錠】を!」
「わかりました」
言われるがまま、オレも鳥かごを開錠をした。すると鳥かごも浮かび上がって、動きや飛び方にも問題はない。腕を組んでいたジョイも頷くと不敵な笑みを浮かべた顔をオレに向けた。
「私も走って行ってやるよ」
時間がない中で、ようやくオレはきちんとした仲間を得た気がする。




