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鍵師のおしごと  作者: ちさここはる
EP4:王族の地下迷路金庫開け依頼編
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第37話 第一の金庫の守護神と中身の王冠

「《カップ=ヌゥダールの名において命ずる!》」



 天井に蝙蝠たちといた黒い金庫とオレは対峙をする。

 


「《初めまして。オレはクボヤ鍵師です》」



 自己紹介をするオレの周りは真っ白く、前には巨大な頭部があった。


 全体に巨大な眼球が沢山ついてて悍ましいったらないな。さらには無数の羽根が生えていて、その一枚づつの羽根にも瞳が均等に在る。


 こりゃあ、ぶったまげだ。神話図鑑で見たことがあるような容姿じゃないか。神々しさと禍々しさが、なんとも言えないコントラストじゃないの。



「《鍵穴が腐食してしまっていまして、鍵師のお、私が開錠しに来たのです》」

 

『神に愛された御子が新たに国を統治するのだな』

 

「《ですので、神器である王冠を貸して頂きたいのです》」



 ぎょろりと無数の瞳がオレを一点に見る。羽根もオレの頭上で瞬きをしていることに、何か居心地もよくない。


 何か、気に障るようなことをしてしまっただろうかと、相手の出方を待ってオレも引き下がらずに見続けた。

 


「《明日。新しい王が貴方たちに――跪いて忠誠を使う僕になるでしょう》」

 

『貴様は?』



 巨大な頭部の意図が分からない。だから、上擦った口調で言い返してしまった。

 

 

「《……え? お、私ですか?》」

 

『ああ。貴様は傅くのか』

 

「《私は異世界から来ていまして、無宗教と言いますか……》」



 相手の機嫌を損なわないように、こちらの事情もきちんと伝えた。つもりだ。


 ばさり、と羽根がオレの全体に乗っかった。巨大な瞳も乗っていたが重みは一切、なかった。



「《王冠を貸して下さい》」



 オレは欲しいもの告げた。これ以上の話し合いは時間の無駄だと思ったからだ。


 相手はどう思ったのか分からないが『カップ=ヌゥダール様も、悪趣味だ』と小さく苦笑で言葉を弾ませている。



『許可する』



「開っっっっ錠!」


 

 ゆっくりと扉が開くと「おお」とジョイの表情が和らぎ目を輝かせていた。


 金庫の中から見える王冠の姿にため息が漏らしてもいたが、すぐにオレに指示を出す。

 


「おい。王冠(それ)を取り出して見せてくれよ」

 

「はぁ、ちょっと待ってくださいよ」

 

「休むな、怠けてるんじゃねぇ!」



 いやいや。少しは休ませて下さいよ。怠けている訳でもないのは分かっているじゃないですかっ。


 ジョイさんは頭部だけで手足がない。今の状態では取り出すことも出来ないから、仕方ないのは分かりますけどね。


 

「分かりましたよ。出せばいいんですね!」



 オレは金庫の前に跪いて扉を開いて、中の王冠を覗き込んで手を差し込んだ。


 何も施されていないことに、どうしてこんなにも何かあるんじゃないかって思ってしまう。もう悪い癖みたいになってしまっているな。



「よっ……っと」



 豪華絢爛。王冠の装飾も当時の技術が今以上に、職人に腕もセンスなんかもよかったのだと分かるもので――王冠の前ではため息しか吐けない。


 王冠を触っている両手が重さのせいで小刻みに震えていた。赤ん坊だったとき、子どもたちを沐浴させたとき並みに緊張しているぞ。

 


「こりゃあ。時価金額もつけられないな、落とすなよ。クボヤ鍵師ぃ♡」


「それで王冠はどうするんですか?」



 金庫の前から立ち上がったオレは、掌の中にある王冠を早くどうにかしたくて、堪らないんだ。


 狼狽えるオレの傍にいたジョイがにこやかに告げる。



「私が預かる」

 

「どうしたらいいですか?」

 

「鳥かごの扉を開けな」



 王冠を持っていて両手が塞がっていることもあって「開錠!」とオレは言葉で手っ取り早く扉を開けた。



「王冠を突っ込めばいい」

 

「突っ込むんですね? 分かりましたっ」


 

 オレはジョイに言われるがまま、鳥かごの中に突っ込んだ。なんの抵抗もなくすんなりと入ったことに驚かされたよ。

 

 王冠を持っていた手をオレは見た。掌に何か文字が写っていて「ぇえっと」と文字を読んでいた。



「時間がねぇんだろうが! とっとと行くぞ!」



 荒げられる声にオレは手を握り締めた。

 

 確かに、時間は惜しい。オレもそう思っていたはずだ、しっかりしなきゃな。


 まだ、第二と第三、そして、第四の金庫がダンジョンの奥でモンスターと一緒に待ち侘びているんだからな。

 


「はい!」



 写った文字にはこう書かれていた。



「…………(第二の金庫に進め、ですか)」



 言われるまでもなく行きますよ!

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