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鍵師のおしごと  作者: ちさここはる
EP4:王族の地下迷路金庫開け依頼編
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第35話 王国地下ダンジョンの中へ

「それにしても、王国地下ダンジョンに金庫なんかを置いた訳を知りたいんだが?」



 ジョイが宰相ミューズの前に鳥かごを浮かせて尋ねたな。そこはオレも気になっていたところだよ。


 

「この場に番人もいないのはどうしてだ? 普通なら金庫の鍵穴を腐食させたことを詫びるのが(さき)だろう」



 話さない相手にジョイがオレも知りたい疑問を次から次に、ミューズから知りたいことを、囃し立てて聞いている。


 眉の端を吊り上げて大きくため息を吐くと、人差し指を立てた。少し黙れということなんだろうな。



「地下ダンジョンにも番人はいたんだ。しかし、……後継者不足もあって、死後四十年の今は無人でモンスターが巣くっている」



 後継者不足。それは鍵師もそうだな。まぁ、マイナー職業だから困らないと思うかもしれないが、伝承が出来ない状況も続けば鍵師がいたというだけの、歴史と記録は残るだろうな。


 番人の死後四十年。そりゃあ金庫のメンテがなければ腐食もするでしょうね。



「どこかの国に要請するか、後継者を募るとかやりようはあったんじゃないのか? それをサボっておいて無様じゃない」



 ジョイの煽りに「後継者問題よりも、今は明日の戴冠式だ」と強い口調で言い返した。


 

「金庫は全部で何台あるんですか? その金庫、すべての鍵穴が腐食しているんですか?」

 

「四台だ。最初の金庫で腐食を確認している。ならば、同じ他の金庫もと断定だ。モンスターがいることもあって近寄れないでいる」

 

「そっからクボヤ鍵師が来るまで待ち惚けで、前日になって、いよいよもってたまらずに拉致をして来たということね」



 分かりやすいジョイの解説に、オレも「神器は、何個なんですか?」と出さなきゃいけないものを聞く。


 戴冠式なんか行ったこともないから、神器自体が何個なのか、からの確認なんです。


 

「王冠、エッグ、杖、黄金の玉座」

 

「王様基本セットだな」

 

「四つの神器を金庫から出してもらいたい」



 四つの神器は、モンスターが巣くう地下のダンジョンにある金庫から持ち出し、明日の戴冠式に間に合わせなきゃいけないのか。


 

「じ、辞退を……」


 

 足ががくがくと腰も抜けそうだよ。ここまで時間に猶予がない現場は初めてだ。


 プレッシャーに圧し潰されそうで、堪らなく不安しかないよ。


 

「おい! このジョイ様がいて逃げ出すってのか! クボヤ鍵師!」

 

「だって! いや、……すいません」

 

「仲間が一緒なんだ、安心して背中を預けな、胴体はないけどな」



 心強い言葉に奮い立つ。


 ジョイに、ここまで言われたらやるしかないじゃないですか。



「時間なんかあると思うな! 行くぞ、クボヤ鍵師!」


「はい!」



 ◆



 巨大な王国地下ダンジョンの門の中に足を踏み入れた時に「あ。金庫から出した神器はどうしたらいいかな」とオレは、取り出した後のことを口にした。



「だって。四点の神器、……持ち運びをどぅ」

 

「ああ。金庫から取り出したのは私の鳥かごの中に入れればいい。中は広いからな」

 

「神器は全部揃うと、自動的に城の定位置に戻って置かれる仕組みだ。安心するといい」



 知りたかったことの説明にオレも納得をする。散り散りだった神器を全て集めれば、自動的に戴冠式へといくシステムとは思いもしなかったな。



「…………(まるでDBだな、〇龍も出て来そうじゃないか)」



 納得をして門を潜ると前も道筋に明かりが薄っすらと灯った。宰相ミューズが点けてくれたんだろうか。


 長く深い路の赤レンガの壁には繊細な壁画が描かれている。暇を持て余した番人たちが描いていたのかもしれないな。


 心を慰め、落ち着かせる方法が壁画だったのかもしれないが。どれくらい、何代と受け継がれて来たのかと見てた歩きたいのも山々でも、そうはいかない。


 

「鍵師の仕事をしに行きましょうか」


「その強気のまま、頑張ってくれよな。クボヤ鍵師ぃ」



 鳥かごの中のジョイの顔が無邪気に犬歯の牙を見せて笑う。

 


「あ。そういえば! このダンジョンの地図っ!」

 

「必要ない。私が記憶して、こうっ」

 


 ジョイの言葉の語尾が強められると、あらら、なんということでしょうだ。


 オレの前に影が集まって立体的な案内図を創り出した。今いる位置も、きちんと「今はこの位置です」と書かれている。


 何も考えずにオレも手を触れると地図形態が変わった。


 矢印が浮かび上がったことにも驚いたが【この路、間もなく第一金庫】と人工的な音声ガイダンスで女性の声が教えてくれる。



「行こう!」

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