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小さな文学少女が友達を欲しがっていたので友達になって、ついでに自己肯定感やら友人関係を整えたら想像以上の勇者になった  作者: 夜月紅輝


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クエスト87 魔王討伐#2

 ついに、ついに迎えてしまった運命の時。

 その事実に、敬はどうしようもない悲しみを覚えていた。

 いや、そもそも来ること自体は理解していたのだ。

 その兆候自体はずっと前から天子から発されていたではないか。


 この気持ちは、それに対して覚悟が足りていなかった自分の落ち度。

 むしろ、自分の気持ちを打ち明けるなど、そんな大層なことをやってのけた天子を褒めるべきだ。

 それこそ、最初の頃の天子を知っているのなら尚更。


 だから、この気持ちに至った結果で天子を責めるのは筋違いも甚だしい。

 全ては制御しきれなかった自分の責任。止められなかった自分が悪い。

 でなければ、あんな残酷な結末を迎えることはなかっただろう。


「これからどうやって顔を合わせればいいんだ」


 あれから数日が経った。しかし、未だこの胸の気持ちは消えない。

 ベッドの上で寝そべり、蛍光灯の眩しさを手で遮る。

 しかし、それでも感じる眩しさ。まるで自分の中にまだ天子がいるみたいだ。


 最初は引っ込み思案と思えば、なんだかんだですぐに頭角を現した。

 まぁ、元々は社交的な性格だったらしいから、それが表に出ただけの話だろう。


「気まずい......」


 もはやその一言に尽きる。どう考えてもここから元に戻る保証がない。

 どれだけ「友達にも戻ろう」と言っても、そう簡単に割り切れるものじゃないだろう。

 割り切れたらそれはそれで「その程度の想いか」と思ってしまいそうだし、割り切れないなら友達の距離感に戻れず気まずいまま自然消滅がオチ。


 故に、どうにかこうにかこの結末に至らないように頑張って来た......つもりだ。

 しかし、すでにこうなってしまった以上、もはや今更後悔しても遅いだろう。

 「後悔先に立たず」とはよく言ったものだ。

 「後の祭り」という言葉も狙い打ち過ぎて笑えない。


「......いい加減、ボクも覚悟を決めるか。

 幸いにも今は夏休み。明ける頃にはある程度気持ちも収まっているだろう」


 そう願う事しか、今の自分には出来ない。

 なぜなら、それがまだ天子との繋がりを保てる、「友達に戻れる」チャンスだと思うから。

 自分が振っておいて都合のいい話は重々承知であるが、そう思ってでも願う。

 なぜなら、その時が一番楽しかったから。


「ハァ、気分を変えよう......」


―――ピロン♪


 突然、机に置いていたスマホが音を鳴らした。メールの着信音だ。

 ベッドから立ち上がると、暗くなった画面をタップして通知を見る。

 瞬間、その通知主を見て敬は目を見開いた――天子からだ。


 何の冗談かと思って一度目を離し、もう一度目を見てみる。

 しかし、それでも結果は変わらず。どうやら幻視ではないらしい。

 それから通知内容に視線を落とすと、そこには――、


『もう一度会えませんか?』


 その一言だけがそこにはあった。瞬間、ズンッと敬の心に重たいものがのしかかる。

 まるで心臓が締め付けられているように異様に苦しくなり、すぐに体が動かない。

 思考は酷く鈍く動くようになり、僅かに呼吸が浅くなる。


「......どうして」


 ようやく出せた言葉がそれだ。「どうして」......いや、本当にどうしてだ。

 あの時、自分達の関係は決定的なものになってしまったはず。

 もちろん、なんとなく気持ちを察してはいたが、言葉にするまではまだ勘違いで防げた。


 しかし、互いにあの告白を聞いてしまった以上、記憶に残ってしまった以上、もう無かったことにはできない。

 故に、ここで顔を会わせたとしても、あの時の気まずさを引きずるだけだ。

 ましてや、あの時からまだ数日しか経っていない。どうしてそんな勇気が出せるのか。


「どうすれば......」


 自分の行動が定まらない。

 「会う」と「会わない」の二択であるはずなのに、それすら上手く決められない。

 会いたい気持ちもある。それは個人的にも天子という人物を気に入っているからだ。

 しかし、気に入っているからこそ、自分は天子に会うべきではない。


 自分が不幸を振りまくのは、決まって自分の大切な人達だ。

 それは自分の人生が証明し続けた。

 すでに三名も亡くし、幸も怪我させたとなれば決定的だろう。

 

 だから、ここは会わないことを選択するのが無難だ。

 でも、天子のことをよく知ってるからこそ、そう簡単に引き下がるはずがないこともわかる。

 案外頑固なのだ。自分に振り回されているようで、自分の芯は持ってる。

 でなければ、散々俺が一定の距離を測り続けたにもかかわらず、告白なんてしないだろう。


「つまり、どの道僕には選択肢がないわけか......」


 そう呟くと、敬はスマホをタップしてロックを解除する。

 レイソのアイコンをタップし、トーク画面に映ると、「わかった。いつ?」と返信した。

 すると、すぐに既読がつき、「では、11時頃に」と返事が来る。


「11時......」


 視線を部屋の時計に向ければ、現在の時刻は9時半過ぎ。

 目が覚めたのは、いつも通りだとすれば、軽く1時間以上はうじうじ悩んでたことになる。

 なんて女々しいのだろうか。それはそれとして、タイムリミットは1時間半。


「とりあえず準備するか」


 久々に天子に会う喜び半分、告白の気まずさ半分という複雑な心境のまま、敬はとりあえず体を動かした。

 ソワソワした気持ちを抱えながら、顔を洗い、歯を磨き、それから着替えていく。

 あっという間に作業が終わってしまえば、手持無沙汰の時間にスマホを弄るがすぐに飽きた。


 というより、ずっと心がざわついて全然落ち着かないのだ。

 これではまるで自分の方が天子に告白しに行くみたいではないか。

 なんともおかしな話だ。こんなはずではなかったのに。


「お兄ちゃん、私遊びに行くから戸締りよろしく」


 その時、ドア越しに幸の声が聞こえてきた。

 その声に一瞬ビクッとしながらも、敬はすぐに答える。


「わかった。それと折れも11時頃に出かけるから」


「了解。それじゃ――頑(・)張(・)っ(・)て(・)き(・)て(・)ね(・)」


 その言葉を最後に、幸の足音が遠ざかっていく。

 ドアへ向けていた視線をゆっくり天井へ移動させ、それから一度大きく息を吐いた。


「少し早くいって待ち合わせ周辺で時間を潰してよう」


 どうにかしたい心の内を晴らすように、体を起こすと、そのまま用意したショルダーバッグを手に持って移動し始めた。


*****


 待ち合わせ場所の駅につき、特に気分も晴れないまま時間を潰していく。

 とりあえず、本屋に寄ったり、小さなホビーショップへ寄ったりしたが、潰せた時間は数分程度。

 わかっている。俺がいちいち時計を気にしてるからだと。

 刻一刻と迫る時間にビビり続けているからだと。


「ハァ、とりあえず飲み物でも買うか」


「なら、私もご一緒してもいいですか?」


「――っ!?」


 突然の声に振り返れば、そこには天子の姿があった。

 オシャレしているのか、麦わら帽子っぽい帽子にフリルの白いワンピース姿だ。

 ザ・清楚系という印象が伝わってくる服装で、思わず見惚れてしまいそうな純粋さである。


 って違う、確かにオシャレもそうだが、問題は天子が凄く普通そうであることだ。

 見た感じ、俺に対して気まずそうな顔一つしていない。

 むしろ、俺の顔を見てニコニコと笑ってるほど......え、なんで?


「えーっと、久しぶり......元気してた?」


「はい。数日ほどお時間を頂いたので、精神的にも少し安定しています。

 それこそ、敬さんと会う約束を取り付けるほどには」


「......だね。元気そうなら良かったよ、うん......」


 そう言いつつも、敬の頭の中では困惑が渦巻く。

 どう考えても色恋沙汰の問題が数日で落ち着くはずがないからだ。

 それこそ、自分ですらこんななのに、初恋であろう天子が精神的にタフなのはおかしい。


 しかし、自分が振った手前、そのようなことを聞きたくても聞けない。

 ましてや、どの面下げて会いに来たって感じなのだ。

 もっとも、それを言うのなら、誘ってきた天子も天子だが。


「......飲み物買っていい?」


「はい。どうぞ」


 妙な間が持たず、敬は自動販売機の方へ移動していく。

 お金を投入し、お茶のボタンを押した。

 取り出し口からお茶を取り出すと、すぐに蓋を開け、グイッとお茶を喉の奥に押し込んだ。


 それは暑かったからもあるが、それ以上に胸の中心付近の重たいものを流したかったからだ。

 しかし、それが消えることはなく、結局半分ほど飲み干した所で止めた。


「随分と一気に飲むんですね。そんなに喉が渇いていたんですか?」


「え.....あ、うん、今日は暑いからね。水筒でも持参してくるべきだったよ」


 調子のいいことを言おうとしたが、どうにもそんな空気に慣れない。

 なんだったら、いつもの道化師ムーブすらできなくなっている始末。


 どうやら天子を振り、それでいて今こうして会っている事実に困惑が拭えないようだ。

 いつもの調子が出せない。無難な反応しか出来ない。これは不味い。


「で、今日はどんな用事で呼んだんだ?

 まぁ、その色々とあったが、僕に手伝えることがあったら何でも言ってくれ」


「なら、今日一日付き合ってくれませんか?」


「買い物にか? いいぞ――」


「いいえ、デートです」


「――」


 敬の言葉を少し遮りながら、天子はハッキリとその三文字を断言して見せた。

 その言葉を聞いた瞬間、言葉に詰まる。もはやなんと返せばいいというのか。

 というか、こんな状況に一体何が返せるというのか。全く分からない。


 そんな経験が無いのはもちろんのこと、誰が聞いてもこの状況の対象方は知らないだろう。

 片や振って、片や振られて、そんな男女が数日後に会ってデートに行くという。

 控えめに言ってわけがわからない。天子も天子だ。なぜそんなことが言えるのか。


「まずどこから行くんだ? 誘いに乗っただけだから、何も考えて無くて」


「大丈夫ですよ。私に付き合ってくださるだけでいいですから」


 そんな天子の言葉に、敬は頷くことしか出来ない。

 それから天子の横を移動しながら、向かった場所は駅のそばの大型デパートだ。

 夏休み期間だからか多くの人達が入り浸っているようで、平均的にも年齢が低い。

 その平均年齢付近の二人も入店すると、すぐにエスカレーターに乗っていく。


 ゆっくりと移動した先に辿り着いたのは、通路のすぐ手前に見えるマネキンが置いてあるお店。

 レディース用の服屋なようだ。そこへ天子が何のためらいもなくスタスタと入っていく。

 その後ろ姿を見ながら、敬は少し気まずい思いをしながら後ろに続く。


 周りを見渡してみれば、当たり前だがどこもそこも女性服だ。

 また、少し視線をズラせばずらりとランジェリーがあり、そっと視線を移動させる。

 多くの女性が行き交ったであろう香水のニオイが鼻につき、混ざっているためか少し不快だ。


 すぐ近くではスタッフがお客さんに接客している。

 デパートの喧騒で内容まではわからないが、恐らく服をオススメしてるのだろう。

 こんな場所、幸に無理やり同伴させられた時ぐらいしか着た事ないというのに。


「敬さん、こんな色の服は私に似合いますか?」


 その時、かけられた声に振り向くと、天子が青い服を自身の前に掲げていた。

 寒色系の淡い青色であり、ただのTシャツであったが、その色は似合っているように見えた。

 ただ、個人的な所感を付け加えるなら、天子の性格を考慮すると暖色系の方が似合っていると思う。


「似合ってると思うよ」


 とはいえ、それはあくまで自分の感想だ。

 似合っているか否かであるならば、似合っている。それだけでいい。

 それこそ、自分達のようなよくわからない距離感であればなおさらだ。

 そんな返答に対し、天子は「ふむ」と軽く頷くと、


「違うみたいですね」


「え......似合ってるよ?」


「はい。その言葉は嬉しいですし、間違ってないと思います。

 ですが、私は敬さんの言葉をまともに信用していませんので。

 なので、たぶん寒色系よりも暖色系の方がより似合ってるでしょう」


「.......」


 上手く言葉が紡げなかった。

 矛盾した言葉なのに、なぜか的を得ているように思えたからだ。

 実際、敬は寒色系は似合っていると思ったが、より似合っているのは暖色系と思った。


 そんな心を見透かしたように、天子が言葉を発し、それから暖色系の服を探し始める。

 ごく自然に敬の心を言い当てた天子に、敬は少し恐ろしくなった。

 より自分の近い所にいる気がして、このまま自分の本心がバレるのではないかと。


「敬さん、今度はこのフリフリなのはどうですか?」


 そんな敬の子事を知ってか知らずか、天子は変わらず聞いてくる。

 その笑みが、優しいはずの笑みが、今はただ怖かった。

読んでくださりありがとうございます(*^_^*)

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