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小さな文学少女が友達を欲しがっていたので友達になって、ついでに自己肯定感やら友人関係を整えたら想像以上の勇者になった  作者: 夜月紅輝


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クエスト68 大きな展開#3

 「妹のような存在」――それが宗次が出した答えであった。

 それは言葉で聞く限りでは、あまりにも残酷で、先がない答えにも聞こえる。

 しかし、それの言葉を聞いた天子は、あまりそう思わなかった。


 それは宗次の顔を見ていたことが大きいだろう。

 答えを紡ぎ出す瞬間の、あの僅かに曇ったような表情。

 さながら、自分の意に沿わぬ答えを、無理やり正しい答えと思い込もうとしてるみたいで。


 だからこそ、天子はそれが本音でないことを直感的に理解した。

 しかし、理解したからこそ、次の言葉が出てこないというのもある。


 自分が宗次の立場であれば、きっと同じようなことをしただろうから。

 もっとも、違いがあるとすれば、宗次のような意思の固さは無く、薄弱であるが。


「妹、ですか.....?」


 僅かな沈黙、それは天子の思考によって作り出してしまった時間だ。

 その時間が長ければ、自然と話題は流れて行ってしまう。


 それを避けるために、天子が出したが言葉がそれだ。

 とはいえ、ただのオウム返しでしかない点、自分の対人スキルの低さがよく見える。


「あぁ、妹だ。単に年下ってこともあるが、それだけじゃない」


 しかし、宗次は話題に乗ってくれるようで、そのまま返答してくれた。

 そして、その後も少しばかり理由を話してくれる。


「まぁ、お嬢様は少々お転婆な所があるからな。

 そういう点もあるかもしれないが、立場が違えば色々と見えてしまうものだ」


「ということは、それは宗次さんが執事の立場の話ですよね?

 となると、宗次さん自身はどう思っているのでしょうか?」


 相手の言葉を引き合いに、自分の聞きたい質問をする。

 いわゆる、言葉狩りの延長線上であり、敬がよくやる会話術だ。

 それを真似するようになった自分に複雑な気分になりながら、天子はさらに問い詰める。


「すみません、突然変なことを聞いて。

 先程の質問が少し無理をして回答しているような気がしまして。

 でも、ここには嘘をつく必要があるお友達はいませんよ? 例えば、敬さんとか」


「ふっ、まるで私が敬には嘘をついているみたいじゃないか。

 ......いや、確かに、アイツには余計な隙を見せると厄介だからな。

 それを考えると、まぁ大撫さん相手に見栄を張る必要もない」


「ということは――」


「あぁ、先の言葉では言葉が足りなかった――私はお嬢様を妹のように思っているが、同時にそうじゃない感情も持ち合わせている。

 もっとも、執事には過ぎた感情だとは思うがな」


 この瞬間、脳裏でガッツポーズをする天子。

 少々ズルい手も使ったが、確かに宗次から逃れようのない言質を取った。

 宗次本人の口から百合への好意への存在を自認させた。


 これは今の三角関係を巡る上での重要な情報になることは間違いない。

 とはいえ――、


(ここからどう動けばいいのでしょうか......?)


 もともと天子の仕事は、堅物の宗次から百合への好意を確認することだった。

 しかし、それも案外あっさりとクリアしてしまった今、特にやることがないのだ。


 いや、百合と宗次をくっつけるという最終目標を達成してない以上、百合の依頼を遂行したわけじゃない。


 だから、やることは探せばまだまだあるのかもしれないが、恋愛経験が乏しいもとい皆無である天子にはここから先の道がわからないのだ。


 これまでは示された道を歩いていた、敷かれたレールを走っていた。

 何もかもがわからない自分にとってはそれがありがたく、しかしそれじゃダメだ。

 だって、それじゃずっと自分が知りたい敬とは平行線だ。


 今も自分は敬の敷かれたレールの上を走っている。

 自分から率先して動いた今だって、きっとどこかでは敬のレールに合流してしまう。

 そうなれば、きっとこれまで通り、ずっと変わらない敬を見せるだけだろう。


(私は違う敬さんが見てみたい......)


 思わぬところで沸き上がった打倒敬への野望。

 しかし、それにはまだ明らかに経験値が足りない。

 だから、まずは目の前のことに集中して取り組むべき。


(私が宗次さんの立場なら......)


 例えば、自分の一つ年下に敬という主がいて、自分は彼を小さい頃からよく知るメイドである。

 そんな敬が自分に好意を持っている......持っている。


 そう考えた瞬間、天子の胸の内側からマグマのような熱が頬を焼く。

 若干のぼせたような真っ赤な顔になりながら、思考を整理するように首を横に振った。

 今は妄想に浸っている場合じゃない。必要なのは状況整理なのだから。


 ともかく、敬という主が好意を持っていて、それに長年いるメイドである自分はどう思うか。

 普通に考えてはダメだ。そのメイドは理知的で頑固な性格を仮定する必要がある。


 小さい頃から多くの人と交流し、加えて主のお世話もたくさんしてきた。

 そのお世話がどんなものか具体的に想像しにくいが、どんな状況でも対応でるようにするためには、主のこれまでの言動から思考を予測する必要があると思われる。


 となると、メイドである自分には主のやりたい行動がある程度読めてないといけない。

 それを言い換えれば、メイドは主の気持ちが感じ取れるということ。

 加えて、百合のような言動がハッキリしたタイプならなおさら。


(なら、どうしてあのような発言になるんでしょうか?)


 百合からの好意を自覚し、自分も主への好意を自認しながらも、一度目は「妹のような存在」と発言した。

 その発言を軽く取り扱ってはダメだ。もっと何か意味があるかもしれない。


 そう、仮にその状況を自分に当てはめるなら、何が思いつくだろうか。

 自分の立場、家としての位、自分より相応しい相手、わがままを通す意思の弱さなどだろうか。


 他にもあるかもしれないが、パッと思いつくのがそこら辺だ。

 その内、家のとしての位以外に関しては自分にも当てはまる気がする。

 ともあれ、それら四つの候補はそのほとんどが自分の覚悟次第だ。


 そして、百合が宗次と結ばれるためには、宗次に執事という枠を超えた覚悟を示してもらう必要がある。


 つまり、宗次が自分で作った檻を壊す必要があるということ。

 その言葉はきっと、自分のようなほとんど知らない人物が言う言葉ではないだろう。

 しかし、それでも――、


「宗次さん、少しだけ私の言葉を聞いてもらっていいですか?」


 どうせなら言って後悔する方がいい。


*****


 急遽始まった歓迎パーティであったが、敬と天子の奮闘により無事開催された。

 そして、本来であれば、夕方にバイトを上がる予定の彼らであったが、手伝ってくれた労いも兼ねてパーティに参加する運びとなり――、


「うわぁ~、場違い感スゲー......」


 小鳥遊家のパーティールーム。

 立食式のその会場にはいくつもの大きなテーブルが配置されており、そこにはまるで宝石のような豪華絢爛な食事が並べられている。


 そして、そのテーブルを取り囲む人達も豪華であり、普段メイドとして働く人達がドレスアップしているのだ。

 その煌びやかたるや、散々異世界感を感じてきたのに、ここではその印象をさらに受ける。


 もちろん、内々でのパーティーであるため、この場にはアンドリューと彼の関係者、他は小鳥遊家関係者であるためそこまで気を遣う必要はないのだが、


(とはいえ、僕も緊張しないわけじゃないからな)


 会場の壁際の隅っこ、そこにジュースが入ったグラスを片手に陰キャムーブをかますのが敬だ。

 基本的に心臓に毛が生えた敬であるが、それでも一定の動きずらさは感じる。


 特に、自分はふざけて道化になるのが仕事のようなものだが、あれは身内ノリが大きい。

 それをこんな大勢のいる場面で披露していいのだろうか。

 それこそ、宗次や百合の交友関係に悪影響が出てしまったらことだ。

 とはいえ、


「ここでギターを手にして颯爽と弾き語りをし、会場の注目を集めるムーブ。

 実に、エレガントなおふざけではなかろうか。

 宗次や百合からは白い目で見られるかもしれないが、僕のことを知らない人達からすればサプライズ演出的なそれで躱せる気がする.....! そうと決まれば即実行あるのみ――」


「それはエレガントな悪ふざけの悪ノリですよ」


 今にもギターを持ってきて動き出しそうな敬に対し、一つの声がそれを制止させた。

 聞き覚えのある小さくて、それでも最近意思が乗り始めた声。

 そう、今もなお少しずつ成長中の我が勇者の声である。


 その声に振り返ると、そこには勇者――ではなく、可憐な少女がいた。

 全体的に黄色いドレスに身を包み、加えて少女らしさよりは大人っぽい感じ。

 髪は少しカールがかってまとめていて、軽く化粧がされているのか魅力的な表情だ。


 少し詩人的に例えるならば、森の中で彷徨った先に湖にいる花の精という感じか。

 ともかく、今いるどの女性よりも敬の目に強く焼き付いたことには変わりない。

 それこそ、返答した言葉を忘れてしまうぐらいには。


「敬さん......?」


「え、あぁ......ごめん。どうやら少し見惚れてしまったようだ。

 似合ってぞ、天子。さすが我が勇者は何でもに合うな」


 天子からの声掛けにハッと我を取り戻した敬は、すぐさまサムズアップして返答する。

 そんな敬の回答に、いつもの天子なら「ありがとうございます」と返答が来そうなものだが、なぜかそういった類の言葉が何も来ない。


 それどころか、嬉しさに恥ずかしさを滲ませながら、熟れたリンゴのような頬をそのままに下から見上げてくる。


 ただでさえ、身長差で上目遣いなのに、顔も使っての上目遣いだ。

 そして、そんな状態の彼女が口を開いてようやく出した言葉が、


「もっと......もう少しだけ欲しいです」


「――!?」


 一瞬、か細く消え入りそうな声であったが、すぐさまボリュームが大きくなった。

 最初の一言目に比べ、若干要求を小さくしたが、それでも求める姿勢は変えないようで。

 その言葉の真偽を、イチイチ確かめなくてもわかる。あの揺れた瞳は本物だ。


 だからこそ、この状況で何を言葉にすればいいか敬にはわからなかった。

 いや、最近の天子の異様な積極性の伸びを考えれば、想定できたかもしれない。

 しかし、それを怠り、その結果招いてしまった悲劇というべきか。


 もちろん、こんな状況を悲劇と表現すれば、世の男子達からめった刺しにされるだろう。

 しかし、得てしてそういう状況は望まざる人物に試練のように与えられるものであり、敬もまたこの状況を望んでいない人物なのだ。


(今、確実に......俺の警報(アラート)がイエローまで達してる)


 敬とて、天子と仲良しでいたいと思うし、これからもそうあり続けたい。

 しかし、それは敬からの一方的な要求(ワガママ)であり、それを天子も望んでいるかと言われれば――目の前で見る表情からしてノーだろう。


 今の言葉が、天子の自我の肥大による承認欲求が故の言葉であればそれでいい。

 天子は成功体験も少なければ、誰かに認められることも少なかったのだ。


 ボッチ歴が長ければ長いほど、その経験の無さが精神に及ぼす影響は大きい。

 だからこそ、天子が自分から望むことがあるなら、敬だってできる限り助けてあげたい。


 しかし、今のこの状況は助けていいのだろうか。本当に助けるべきなのか。

 天子の願いへの一助か、保身に走るか。自分ならどっちを選ぶ。

 自分なら――、


「僕は――天子のイメージに合ってて......好きだ」


 口を右手で塞ぎ、顔を背けながらも、敬は自らの気持ちを言い切った。

 いつもと違う感覚に、天子の方を直視できないのだ。

 それこそ、自慢のポーカーフェイスがボロボロになってるような。


「――っ」


 そんな敬に対し、天子が顔を塞ぎこんでいた。

 俯かせた顔を両手で覆っているため、チラッと見てもつむじしか見えない。


 いや、そもそも身長差で覗き込まないと顔が見えないわけだが。

 そんな時、天子のつむじから少し視線を移動させると、耳が見えたが――見なかったことにした。


「......あ、ありがとうございます」


 それから数分後、敬が目の前の景色を見ていると、隣から感謝の言葉が来た。

 どんな表情をしているか気になるが、見ないこととする。それが安全。


「敬さんも、そのスーツ似合ってます」


「.....だろう。僕はこの世のある服なら何でも似合う男だからな」


「はい、そう思います」


「「......」」


 先の天子の服に対する褒め言葉から甘い空気感から抜け出せない。

 意図的に作ってるわけではないが、どうにも生まれてしまってるような。

 とはいえ、それを指摘してしまうと、自認してしまう気がして口には出せない。


――ガチャッ


 そんな妙な空気感にむずがゆさを感じていた時、パーティールームの両開きドアが開く。

 そして、そこから現れたのはアンドリューにエスコートされる百合の姿であった。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')


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