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第三十九話 魂送り

このお話は初投稿版の64部分にあたります

(まが)』の結界に入り、本体をみつけた。

 そして、『(まが)』にとらわれながらも封印石を起動した。

 陣が展開し、成功したかに思えたが、弾かれた!



「あきらめるな! まだ封印石は壊れていない!

 ヒロ、もう一度展開できるか?!」


「できる!!」


「聞いたな?! もういちど霊力を込めるぞ!!」


 トモが叫び、石に再び霊力を込める合図をしようとしたその時。


 ゴッと晃から炎が噴き上がった!!


「晃!?」


「動くな!! 茉嘉羅(マカラ)!」


 晃の叫びに『(まが)』の動きが止まる。



「おれが、お前を浄化する!!」 



「晃?!」

「晃! 何言って…」

「まから?! 何?」

「もしかして、名前!? 何で…」


 突然の晃の叫びに、四人は動揺を隠せない。


「ヒロ! ナツ!」

「「はいっ!?」」

「回復かけて!!」

「「はいっ!!」」


 晃に言われるまま二人がかりで回復をかける。

 ついでに全員に回復をかけた。



「ヒロ! 浄化って、どうやるの?!」


 えらそうに宣言した晃だったが、具体的にどうすればいいかまでは知らない。

 困ったときのヒロだのみだ。


「浄化!?」


 何で突然?! と驚きながらもヒロが答えてくれる。


「浄化の呪を唱える。祝詞とか、経文とか!

 あと、清らかなモノで流す。霊力の高い水をかけたり、炎で燃やしたり!」


「おれの霊力の炎でもいい?!」


 ヒロはうーん、うーんと考える。


「浄化は魂に作用しないと効かないんだよ。

 汚れた部分をきれいにするイメージ。

 晃の炎が魂まで届くかどうか…」


 悩みながらも、ひとつの考えを絞り出した。


「身体を燃やしつくせれば、多分…?」


 でも燃えすぎちゃう? どうだろ? とぶつぶつ

悩むヒロ。


「退魔師が『悪しきモノ』を滅するときは、霊力をぶつけるぞ!

 相手の霊力を散らすんだ!」


「あと『核』になるものを壊す!」


 佑輝もトモもアドバイスしてくれる。



「つまり、あの『(まが)』の身体を燃やしつくせればいいんだな!」


 そうすれば『核』も壊れて霊力も散るだろう。

 そして、魂を炎で焼くことで浄化する!



「ヒロ! 封印石の陣が展開して封印するまでに、どれくらいかかる?!」


「え、えーと…」

 思いもよらない質問に、ヒロもたじたじだ。


「さっきの感じだと、陣が展開されてから、五分から十分てとこだと思う。

 その間、安定するまでは霊力を流し続けないとだめだ。維持できない」


「わかった!!」

「待て晃!!」

 今すぐにでも石に霊力を込めそうな晃をトモが止める。


「五人で合わせて霊力を込めるぞ!

 霊力を一気に込めて、そのあとも霊力を込め続けること!

 いいか?! 行くぞ!」


「せーの!」


 ドン!

 一気に霊力を込める。

 途端、キンッ! と音がして、右手が熱くなる。


 ザアッと金色のものが広がり、封印陣が展開した。


茉嘉羅(マカラ)! はじくなよ!!」


 晃が叫ぶ。

(まが)』は動かない。


 先程のように封印陣がはじかれることはなく、完成した封印陣がそのまま『(まが)』の霊力を吸い上げていく。


 維持する霊力を送る晃達の霊力もどんどん吸われていく。

 このまま霊力が保つか心配になる。


「――くっ…!」


 苦しい。でも、やらなきゃ!


 おれが、やらなきゃ!!


 だっておれは霊玉守護者(たまもり)だから。

 (たま)()りだから。

 


 ゴオッ!!

 晃から炎が立ち上がる!


(まが)』が動きを止めている間に、燃やして魂を浄化する!


 差し込んだ右腕から、炎が『(まが)』の身体を伝う。

 すぐに『(まが)』は赤い炎に包まれた。



 このままいける!

 そう思ったが、封印陣にあらがうように黒い炎が『禍』の身体から吹き上がった!


「ぐ…っ」

 黒い炎がせまってきて、ナツが、佑輝が顔をそむける。

 瘴気がこもった黒い炎は、近くで燃えるだけで霊力を奪う。

 くじけそうになる仲間を、自分を、トモが鼓舞する。


「封印陣はまだ生きてる!

 まだだ! あきらめるな!!」



 晃の赤い炎と『(まが)』から噴き上がる黒い炎が拮抗している。

 お互いに喰いつくそうと巻きつき混じり合っている。


 五人は『(まが)』の身体に腕を差し込んだままだ。

 晃の炎は五人に危害をくわえないが、黒い炎は人間には毒も同じだ。

 晃の炎が五人の前で黒い炎から守っているが、それでも舞う炎に髪も顔も焦げ、防御をまとわせた防具や服もどこまで保つかわからない。


「晃!!」

「晃がんばれ!!」


 四人も晃が何をしようとしているのか察しているようだ。

 封印陣に送る霊力を晃の分も負担してくれる。

 それがわかり思わず笑顔がこぼれる。

 が、すぐに表情を引き締め、炎の勢いを強める。


 もっと強く! もっと強く!

 

 左手を右腕に添え、歯を食いしばり炎をおこす。

 しかし、黒い炎が邪魔で本体を燃やすことができない。


 封印陣も黒い炎を抑えようとしているようだが、こちらも抑えきれないようだ。

 陣を維持する霊力を送っている四人も、歯を食いしばって汗を流している。



 だめだ。火力が足りない。

 黒い炎を抑え、二人分の魂を浄化しおくるには、自分では足りない。 



「ヒロ! 俺と佑輝なら補助できるか?!」

「修行のときのアレ?!」

「そう!」

「アレなら、晃の炎が主体になるから、大丈夫だと思う!」

「佑輝! 聞こえたか?! タイミングみて加勢するぞ!!」



 絞り出すように霊力を炎に変換する。

 汗が滝のように出る。

 顔が熱い。ジリジリと焼け焦げる。


 歯を食いしばる。炎をおこす。

 それでも黒い炎を抑えられない。


 それだけ茉嘉羅(マカラ)の『(うつわ)』が大きいのか。

 茉嘉羅(マカラ)の憎しみが大きいのか。



 きっと向こうでお師さんも茉嘉羅(マカラ)を説得してくれている。

 だからきっと『(まが)』が反応していないのだ。

 お師さんはきっとまだ『彼』の手を離していないだろう。

 その身を灼いているのだろう。


 そう思った途端、やけくそで叫んでいた。


「――茉嘉羅(マカラ)

 お師さん困らせんなよ!」


 晃の声が届いたのか、黒い炎が勢いを止めた。

 なおも晃が叫ぶ。



「お前の一番はお師さんだろう?!

 お師さん困らせんな!

 お師さんと一緒に逝けよ!!」



 黒い炎は徐々に弱まる。

 かわりに、晃の赤い炎がゴウゴウと燃え上がる。



「ずっと側にいてくれた、お師さん悲しませるな!!

 茉嘉羅(マカラ)

 おれに浄化されろ!

 お師さんと一緒にいろ!!」



 一呼吸の後に、黒い炎はおさまった。

 ほっとしたのもつかの間、封印陣が輝きを増した。

 封印しようとしているのだとわかった。


「封印陣が安定した!

 このままいける!!」


 ヒロの声に、晃にあせりがうかぶ。


 まずい!

 早く浄化しないと、このまま封印されてしまう!


「晃!」

 ナツが回復をかけてくれた。

 霊力がもどった!


「ありがと!!」

 息を整え、霊力を圧縮して、差し込んだままの右手に集中する。

 一気に霊力を叩き込む!


 ゴウッ!

 火柱が立ち昇る。

 が、それでも『(まが)』の身体は消滅しない。


「晃!」


 横から佑輝が雷撃を撃ち込んだ!

 バチバチバチッと炎に雷が混じる。


 さらにトモも風を巻き上げる!

 空気をたっぷりと含み、炎の勢いがさらに増す。


 ゴウゴウと渦を巻き立ち昇る炎。

 目の前で炎が立ち上がっても、右腕をとらえられている五人は逃げることもよけることもできない。

 晃の炎ならば自分達に危害はないとわかっていても、熱いしこわいのには変わりないはずだ。


 このまま封印陣が『(まが)』を封印すれば、自分達の役目は終わりだ。

 目標達成で、ヒロもハルも白露も助かる。

 それで何の問題もない。

 

 だから、あとは封印されるのを待つだけでいいのに。

 それでも四人共、晃に協力してくれる。

 熱いのもこわいのも我慢して、「浄化する」という晃のワガママに協力してくれる。


 ありがたくてうれしくて、さらに霊力を込める。

 ゴォォォォッ!! と炎が『(まが)』の身体を焼く。



 そこまでの炎でも、まだ『(まが)』の身体を焼けない。

 顔の面すら、焼ける様子がない。

 


 やはり火力が足りない。

 どうする?どうする?

 早くしないと、このままでは、彼らが封印されてしまう。

 どうにかしなければ!



 その時ふと、胸に入れていた羽根を思い出した。

 そうだ!

 右手で炎を保ち、左手で胸ポケットの羽根を取り出す。


 緋炎の霊力が込められたというこの羽根の霊力も使えば!


「緋炎様! 助けてください!」


 すがるように、祈るように叫ぶ。

 そして、再び炎を叩き込もうとした。


 その時。



 パアッと手に持った羽根が光った。



 思わず手を離すと、羽根はくるりと一回転し、可愛らしいオカメインコになった。



「緋炎様?!」



 緋炎はゆっくりと羽ばたきをすると、晃の肩に止まった。


「よく呼んだわね晃。お手柄よ」

 ニヤリと笑って肩から飛び上がる。


「名指しで助けを求められたからには、手助けしないわけにはいかないわよね」


 まるで誰かに言い訳をするように言いながら、緋炎は『(まが)』にささったままの晃の伸ばした腕に止まった。


「特別よ」


 こんな場所でも妖艶に微笑むオカメインコ。


「手伝ってあげる。

 どうしたいの?

 この『(まが)』を封じるの? 滅するの?」


「浄化したいんです!!」


 くい気味の晃の答えに、緋炎がまばたきをする。

 その間にも晃は言いつのる。


茉嘉羅(マカラ)と、お師さん!

 二人を送りたいんです!!

 でもおれの炎じゃ足りないんです!

 助けてください!!」


 晃の言葉に、緋炎が首だけを『(まが)』に向けて見上げ、何かを探っている。

 が、すぐに「ふーん」とつぶやくと、晃に向けてにっこりと微笑んだ。



「運がいいわね。晃」


 そうして美しい羽根を広げる。


 そうしていると、白から黄色、赤へと色付いた羽根が、立ち上がる炎のように見える。


「アタシ、『(たま)(おく)り』得意なのよ」


 バサリ。

 ひとつ羽ばたきをする。


 そして体の向きを『(まが)』にむける緋炎。


 バサリ。バサリ。

 さらに羽ばたきをする。


 不思議なことに、羽ばたきするたびに緋炎の身体が大きくなっていく。

 羽根も徐々に長く赤くなっていく。

 元々長い尾羽根はさらに長く、孔雀のようになった。


 そこにいたのは、長い羽根を持つ紅く美しい鳥。

 まるで炎から生まれたかのような、燃えているような姿。



朱雀(すざく)…?」


 晃でも知っている、伝説の霊獣。


「そんなんじゃないわよ」

 当の緋炎はカラリと笑い、晃の肩に飛び乗った。


「さあ、晃。追加授業よ。

 『(たま)(おく)り』、やるわよ!」


「はい!!」


「佑輝とトモも、うまく補助してたみたいね。

 その調子で、もう一回頼むわよ」

「「はい!!」」


 緋炎の言葉に気合を入れ直す。


「霊力圧縮!」


 緋炎の指示でぐっと霊力を圧縮させる。

 が、さっきのでもう霊力が少ない。

 それでも必死で霊力を集めていると、ふと身体が軽くなった。


 ヒロとナツが回復をかけてくれた。

 当の二人は封印陣の維持と度重なる回復に倒れそうになっている。

 親指を立てて「がんばれ!」と伝えてきたので、うなずく。


 身体中の霊力を集める。

 集めて集めて、圧縮する。

 炎に、変換する!


「狙うは、身体の中心!

 一気に灰にするわよ!」

「はい!!」


 ゴッ!!


 今までで一番大きな炎が立ち上がった!

 きっと緋炎が助力してくれている。

 佑輝も、トモも助けてくれた。


 炎に包まれた『禍』の身体は力を失ったようだ。

 あれほど抜けなかった右手がすんなり外れ、下半身をからめとっていた黒いものがボロリと崩れた。


 顔をおおっていた面にも火がついた。

 端から少しずつ少しずつ炎に焼かれていく。

 


 炎の強さに晃を除く四人が後ずさる。

 晃はその場で足をふんばり、炎をさらに強くする。

 

 『(まが)』の身体はボロボロと崩れていく。

 緋炎の宣言どおり、灰になっているようだ。


 対象が力を失ったことで封印陣が役目を失ったのか、金色の霊力がパチンと弾け霧散した。

 手の中の封印石も割れたのがわかった。


「送りたい相手の魂を炎で包んで!」


 言われ、目を凝らして未だ立ち昇る炎を見つめる。

 すると、炎の中に二人の姿が見えた。


 僧形の男性と、赤い髪で青い目の男性。

 お師さんと茉嘉羅(マカラ)だ。


 よかった。二人一緒だ。

 晃がほっと息をつくと、相手も晃に気づいたようだ。

 にっこりと微笑んで、手を合わせてお辞儀をしてきた。


『核』と思われる面が燃えたからか、お師さんの説得の効果か、茉嘉羅(マカラ)はおだやかな顔をしていた。

 きっとこれが本来の彼なのだろう。

 何かを言っているのか口が動いているが、言葉は聞こえない。



 そんな二人を包むように炎を操る。

 足りない火力は緋炎が補ってくれている。



「祈りなさい。願いなさい。

 魂の浄化を。

 来世のしあわせを」



 緋炎の言葉に導かれるように、炎に祈りを込める。


 どうか、どうかしあわせに。


 たくさんの罪を犯した。

 その身をにごらせてまで大切にしたかった。


 犯した罪をつぐない、お師さんと一緒に、どうかしあわせに。



「そのまま天に送るわよ」


 緋炎の羽根の動きにつられて晃の腕が天に向かう。

 緋炎のつむぐ祝詞(のりと)を復唱する。


 炎を操る腕をのばす。天に、天に。


 その動きに従うように、炎はゴウゴウと渦を巻き、天に向かって立ち昇っていった。

次話は明日19時に投稿します

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