↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が家が一番!  作者: 津村ん家の婆ァ
PR
52/53

幕間⑥村に駐在する国軍のとある珍訓練。

※『』内は魔獣のセリフ。翻訳機を使っているのでほぼほぼ違和感なし。

※本文中に曖昧な表現がございます。そのキャラの認識及び知識不足からくる表現の為、敢えてこの書き方を実行しております。

(↑と、己の未熟さを棚に上げた言い逃れ。)


以上、事前注意勧告(たてまえ)でした。一年近くも放置したお詫び小噺をあいさつ代わりに掲載させていただきます。引き続き、(相も変わらず拙い)本編をどうぞ。御笑納頂ければ幸いです。

 緑あふるる辺境の地に「長閑」を体現した陸の孤島、タングステン村。中立国として知られるカーバイト国内でも有数の「ど田舎」で、国軍の中ではとある訓練の実地研修地として現在話題沸騰の場所となっている。


『ねぇねぇ、ルムック達が村を出て修行に行ったってホント?』

『ホントホント。山の魔獣たちとタッタカ駆け抜けていったわ』

『よくあのちび竜ちゃんが送り出したわねぇ』

『それはいつものおねだり攻撃で即時降参。ホントにメロメロよね~』

『あははは、本当に効果抜群ね~』

『収穫祭までに戻るって約束していたから、当分の間へこへこ状態よ』

『病気にならなきゃいいけどね~』

『もうなったわよう~、暫く療養とかでいなかったもの』

『ルムック達、国境付近をぐる~って一周してくるって言ってたよ』

『そうそう。見識を広めるというよりもよその魔獣たちがどうやって生きているか知りたいんじゃないの。この村近辺が普通じゃないのは分かっているんだけどね~』

『そもそも私達とお嬢達が、こんな近距離で生活を共にしているなんて普通じゃないのよね~』

『ま~ね。面白そうなものがあれば心のままに追っかけるのが私達(ラクレコム)だけど、逆に警戒するのがお(タルーク)達だもの』

『ま、あのちび竜ちゃんにかかればありえないことが実現するんだものね~』

『そうそう。考えることもやることもホント、突飛もなくて目が離せないわよね。そもそもちび竜ちゃんって、火は噴くけど火吹き竜なのかしら?』

『あらあら、なんで?』

『だって、火吹き竜って寒がりなんでしょ。なのにこんな寒い場所にいるのがおかしくない?』

『美味しい物があれば何処にいてもおかしくないって。ちび竜ちゃんは食事には事煩いのよ~。私達は食べれないけどさ~』

『そうねそうね、私達だって食べるのを躊躇うペルロだって食べちゃったし~。そのうち私達のご飯まで手を出すんじゃないかしら~』

『あらあら~、そうしたら私達のご飯もおいしくなるのかしら~』

『それはそれで面白そうよね~、でもいつものご飯が一番なのよね~』

『そうねそうね。柔らかさと旨味、この突き詰めたバランスが”旬の味”なのよね。旨味だけでも柔らかさだけでもってのはちょっとね~』

『あら、旨味だけじゃないわ。このほのかな苦味、そして微かに尾を引く酸味と絶妙な風味の味わい。これも忘れちゃダメダメよ~』


 長閑な景色に存在する羊の群れ。ただの景色ともなりがちだが、着目すべきはその彼等の膨大な量の会話。一つの噂に即座に返る反応多数、とにかく情報量が多くて必要な情報を追いかけるだけで大変なのだ。これらを要領よく聞き分け、必要な情報を把握し簡潔かつ分かり易く書き起こす事は容易な事ではない。


「結構、いい訓練だな。これ」

「ああ、だが無心で挑まんと流されるぞ」


 無言のまま全神経を集中したまま、殺気かと思うほどの気合を放ちながら一心不乱筆走らせる男たちは彼らだけではない。羊達に混じってあちこちに国軍の腕章を身につけた男達が点在している。


 羊達の噂話に混じって微かに響く筆走らせる音は、ど田舎の景観に非常にそぐわない。が、村人も羊達もこれが彼らにとっての訓練だと判っているので敢えて無視している。


 そう、訓練。ここタングステン村は「速記技能訓練」を村公認で実地出来る場所として、国軍籍を持つ者達から密かな注目を集めている理由がこれだ。


 彼らが欲する速記技能そのものは決して難しいものではない。特定の職業以外では寧ろ不必要な技能に分類され、特に魔獣相手に真っ向からドンパチやらかす三流冒険者はその最たるもので「戦闘に直接関与しない技能だから」と、蔑ろにされている。が、世間的に着目している者は少なくない。


 国軍入隊希望者の大半が身体的能力値が高く戦闘などの武力行使に適性を示すが、中には諜報活動に適した身体的能力値を持つ者も居る。実際のところ諜報活動に向いていても本人が辞退したりと出来る人材は少ないのが実状だ。


 少ないが故に少数精鋭などと噂されるが人材不足な実情の為、敢えて訂正はせずに放置一択が現状である。正直言って諜報活動に向いた人員の求人は年中無休で募集中だが、戦闘要員の増員が殆どという嘆かわしい結果は、国軍の上層部の密かな悩みの種である。


 軍属を希望する側もそういった軍の事情を知っているわけではない。ので、恐らく必要とされる身体能力や判断力などの自己アピールを前面に出してくるものだから、採用担当者も思わず入隊申告書類に近親者の申告書などという書類の添付を要請するようになったのは致し方ないだろう。それによって当人が求めた部署に付けなかった事例も発生したが、当人も知らなかった一面を発掘した例も少なからずあるのだ。


 そもそも個人的に能力を生かし、それで生活を立てられるものは大概が冒険者として仲間を持っていたり、生活に必要な繋がりを持っている。


 食い扶持を稼ぐために軍属するものはそういった繋がりを持つのに「失敗」したものが多く、国からの要請を受ける代わりに様々な「保証」と「資質発掘義務」を受ける。「速記技能訓練」も資質発掘義務の一つなのだが、何せ練習する場がほとんど無い。


 基本的に知識は座学や書物で学ぶことはできるが、実地は非常に難しいものが多い。最初は座学の講義内容から始まり、同僚達の雑談や家族や友人たちとの会話などを基に練習をこなす。

 そうして数をこなしていくうちに何となく速記は形となっていくのだが、如何せん真顔で速記をこなすガタイの良い軍人などが街中に佇んでいたら、間違いなく目立つ。事は隠密に熟さねばならないという点を改善しない限りは使い物にはならないだろう。そもそも誰かの会話を延々と記録される様は裁判所や会議の場なら見かけることもあるだろうが、街中で同じことをしていたら周囲の人に白い眼を向けられることになる訳で、忍耐力と自尊心の狭間で揺れ動きたいという奇特な人材はまだ居らず、街中で実地訓練はなかなか実施にいたらない。


 そうこうしているうちに資質発掘義務の座学があれこれと勧められるので、いつの間にかものにならないまま終わることも少なくない。


 そんな中、タングステン村に派遣された軍人が羊達に目を付けた。

そう、羊娘(マスコミ)達の無限かと思われる会話。一つ一つは大した量ではないかもしれないが、何せ数が多い。そして、興味がなくなれば噂はどんどん消える。そんな彼等の何気ない会話を書き起こせば、いい訓練になるんじゃないかと。


 彼らは真っ先に羊達に対して真っ向から己の事情と理由を並べてお願いをした。嫌ならば言ってくれと。そして羊達は幾つかの条件を出した。訓練をしたい時は必ず声掛けをすること、噂話はどこからの情報なのかは敢えて聞かない、そして突っ込まない。


 羊達と彼らの約束事を、羊達の持ち主であるオーレ=スポジュメン氏に伝え許可を得ると、これらの決まり事を書面化して母体の国軍側へも申請し正式な許可を得た。この実地訓練の参加者はここで得た情報の一切問わず持出を禁じ、訓練に使われた用紙は自警団の詰所に設置された箱に提出するよう決められた。


 彼らが交わした約束事は他にもあるが、概ね羊達から出された約束事は国軍側の義務として守られる事になった。(ただし、相談に乗ってもらっている場合はその限りではないらしい。)


 この村で羊と会話する火吹き竜の姿を見て、何を話しているのかと一部の軍人が興味をもって話しかけたことが切っ掛けでその結果「速記技能訓練」の許可を取った。筆記用具を手にする軍人が羊達のそばにいても、特に咎められないのはこういった経緯があるので、村人も特に口にはしない。


 そんな訳で、長閑など田舎に「草原に点在する羊の群れと諜報活動(ストーカー)する国軍(おっさん)」という珍景観が出現している。



 村人たちも当初は困惑したが彼ら必至な説得に

「そりゃ、筆記訓練の為協力してくれって馬鹿正直に頭下げるんだものねぇ」

「あんな真面目な顔して頼み込んでくるんだもの。身元もはっきりしてる方ばかりだし」

「訓練だってあんなに真面目に取り組んでんだもの。よっぽど身に付けたいんだろうね」

と、村人達も余程の事だと思ったらしい。羊達からもまじめだと突っ込まれた。


 んで羊達にも礼をしたいが何か欲しいものがあるかと聞いたところ『王都の噂』と言われたので、諜報部に協力を依頼。王都で発行されている情報誌から社交界で流れている不倫騒動まで一通り揃えて聞かせたところ、特に貴族間にある愛憎ある痴情のもつれやら他人の不幸話やらに特に興味を見せた。


 王都で貴族の勢力関係もしっかり理解しているあたり、羊達の頭の良さは推して知るべきだろう。見た目こそ羊だが、中身は貴族の奥方並みの知識と思考を持っていると思っていいかもしれない。


「これを街中でひっそりと行う諜報部ってすげぇよな。羊達の会話についていくの、俺必死だぜ」

「羊達はかなりの早口なうえ、内容が二転三転していくんだ。通常会議の議事録ならもっとゆったりとした会話だからそうそう困らないと思うぞ」

「でも噂話ってのはこんなもんだろ」

「ま、筆記速度が早すぎて困るってことは無いからな。それにこの文面を簡単には読み解けんよ」

「仮に読み解いても内容は旬の青草の感想だしなぁ」


 使われている技術に対して、内容は正に井戸端会議。どこそこの草がかぐわしいだの、誰それの畑の様子だの、昨夜の晩御飯はどうのこうのとよくもまぁそんなに話題があるものだと感心する。稀に病気が流行りそうだの山火事が起こりそうだのと、物騒な単語もチラホラ混じっているところが恐ろしく、よくよく調べてみたら確かにその気配はあったと聞く。簡単に聞き逃すと大事になりかねない気がするのは考え過ぎか。


「噂の内容はともかく、信憑性はあるんだよな」

「魔獣の噂話と王都の噂話で一致するものは聞き逃せないからな」


 俺らのメモは一見すると一定間隔で並んでいる記号文字なので、まともに読もうとしても解読が難しい暗号文となっている。単純に簡略化された略語の羅列なのだが、言い回しなどを含めれば立派な怪文章である。元々羊達が始めた略語を面白そうだからと取り入れた結果こうなった「タングステン村独自の略語」は、第三軍の一部で密かに流行となりつつある。




       *******




「ふざけるな!」

「ふざけてません、よく読んで下さい」

「誰が浮気調査を依頼した。俺が出したのブリネル共和国の主だった噂調査だ!」

「ええ。ですからブリネル共和国の流通都市エバダで話題の外交官夫妻の詳細を独自に調べたものです。とは言っても騒ぎを大きくしているのは外交官の叔母ですけどね」

「は?」

「実際に騒ぎとなっている話のほとんどは叔母自身の醜聞(スキャンダラス)で、甥である外交官夫妻自体は寧ろ被害者に謝罪しているのが実情です。何せ被害者の一人がうちの商会なもんで、外交官も頭が痛いと思いますよ」

「『羊の噂』によれば叔母の見栄から出た一言の嘘が原因らしいですからねぇ」

「また『羊の噂』か」

「精度いいですからねぇ、あれ」


 他国からの情報には勿論様々な要素が含まれている。諜報活動に特化した彼らを国内外で集められた各情報を精査しうる場には、タングステン村で練習に取られた例のメモが記載された日付毎に纏めて置かれている。


 噂の精度もさることながら、その内容も看過できないものが多い。例えば




『ねぇねぇ~。辺境伯の噂、聞いた~?』

『子爵失脚一家離散のこと? 獣人隷属魔獣虐待のこと?』

『辺境伯ってカーバイトの? それともブリネル共和国?』

『ヒオ国に近いブリネル共和国んとこじゃない? あそこって三年前に当主交代したお家騒動があったじゃない』

『確か長男と長女が争って、滅茶苦茶になりかけたので、前当主が責任を負って二人を排斥して次男に全部譲り渡したのよね。んで末の子が留学生でハルト国にいってたのよね』

『じゃぁそうかも~。あのね~、混合魔獣(キメラ)生産の為に魔獣と獣人を無理矢理番わせたって話よう~』

『なにそれなにそれなにそれ~!?』



 十日程前のそのメモは、二日前に届いた諜報部からの内容として場所が一致している。何が起こっているかはわからないが、見過ごすことは出来なさそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。