幕間⑦番外編~短編小話あれこれ①
外出自粛中なので、あれこれ控えていたら頭の中まで控えてしまいました。
アイディアが出て来ないので、過去話からチョイスした小話を差し込みます。
※作者個人的な視点での抜粋「六話目 夏と海と子⑤―浜辺遊び―」より。
「砂浜って雪の上に似てるねー」
「うんうん、たぁっくさんの雪の上を歩くときみたいね~」
「転んでも痛くないの~」
初めての砂浜を走り回る子供たちがそんな感想を漏らしたから、つい。
ほんとつい、駆けっこをしてる大人もみて、頭にぽーんと浮かんだのが
「砂って転んでも痛くないのよね。て事は、ちょーっとばかりはしゃいでも怪我しにくいわね」
「あらあら、何か思いついたの?」
「うや、ただのお遊びよ~」
そう。ただの旗取り競争、ビーチフラッグだもの。
てなわけで、なるだけ平らな乾いた砂浜へ移動。準備するのは小旗がなかったので代用品としてなるだけ揃った大きさの枝葉。ゴール地点を定めて一列に並べ立てて準備オッケー。
今回の討伐参加者中で一番小柄な私の疾走中の一歩を計測、それを単純に30倍した地点を最低距離のスタート地点としました。近くにいた風ちゃんにも協力してもらって同様で距離を出し、運動性能を加味して+αの距離を気持ち足して。よーいドン。
気持ちいいくらいあっさりと風ちゃんはゴールイン、遅れて私もゴールイン。
「うや~、全く勝負になんないわ~」
『俺の距離、倍にするか?』
砂浜に並べて立てられた枝を取るために、短距離疾走する。
ただそれだけなのに、誰かと競うというだけで、こんなにも面白いと思ってしまう私が居ます。風ちゃんのお言葉に甘えて風ちゃんの距離だけを倍に。逆に私は1Mほど縮めて、よーいドン。それでも簡単に抜かれるの。なんでよぉ~!
『俺、まだ軽くしか走ってねえけどまだやるか?』
「風ちゃんが本気で走ったら私の七歩で確実に抜かれるじゃない」
『なにやってんの~?』
雷ちゃんやほかの人が集まってきたので、簡単に説明して今度は雷ちゃんとおんなじ条件で勝負。うお~。
「うや~、また負けたー」
『かった~』
華麗にゴールに飛び込む雷ちゃんと、ゼイゼイと無様にゴールに倒れ込む私。分かっちゃいたけど雷ちゃんも早~い! 私、走るよりも空を飛んだ方がいいんじゃないかしら。
「次俺~」
「俺も~、手ぇ抜かねえからな」
要するに『旗を取るかけっこ』なのでやってみる人が続出。雷ちゃんと風ちゃんは、このまま参加を継続するそうな。みんな元気よね~、雷ちゃんに手加減してもらったのに私は全力疾走よ。ぜいぜいぜい。歩幅の違いによるハンデ設定だから確実に運動性能の差だと証明してるんだけどね。
面白そうと観てた人達もやり方を聞いて交代しながら楽しんでます。これ、冒険者も村人も軍人もごちゃ混ぜのハンデ(ゴールまでの距離)あり。最大距離でも50M位なので、殆ど短距離競争のノリで皆様のぶっちぎり感が半端ありません。
身体能力の比較的高い方には多少のハンデとして、うつ伏せ後ろ向きのからのスタートをつけたけど、ハンデにもならないくらい速いの。なにこれ~!?
波打ち際なら私も走れる方なんだけど、さらっさらの乾いた砂浜は踏ん張りの全く効かない場所。こんな場所を疾走するなんて正直超人よ。
いっそのこと、私と対戦する超人は「スタート直後に頭をバットに付けて10回回ってからダッシュ」って項目でも盛り込もうかしら。
何せハンデ付きとはいえ6.3Mスタートは私だけ。しかも全敗。
(↑ご存知でしょうがちび竜ちゃんの羽を含まない身長は約42㎝。)
一歩当たりの歩幅×規定歩数からこの距離を算出したので、一番歩幅の短い人=足の短い人。うん、これは仕方ない。ただ、他の人はどんなに短い距離でも12Mからのスタートなの。
誰! タンソクなんて呟いたのは。同時スタートして一番最後にゴールという結果は、鈍足なの。決してタンソクじゃないわよ!
〖その代わり空を飛んだら早いじゃない。ご飯だって作るの上手だし、陶芸とか籠編みとか器用だし、一つくらいへたっぴが有ったっていいじゃない〗
と、未娘に慰められたけど、私にへたっぴは沢山あり過ぎるのよ。虫全般に生肉生魚苦手、(血)生臭いもの苦手、痛いの怖いの苦手、頭を使うの苦手、難しいお話苦手、うう。改めて私苦手が多くない?
『競う』って意外と闘争心を煽る言葉だったと実感、そして娯楽に飢えていたんだね、皆様。
アト村の若い人達も参戦して、枝葉も手頃な棒に鮮やかなバンダナ巻いて、一度に走る人数を二人から五人に変更して、ゴールに立つたった三本の旗を目指して、今まさに砂上の激戦が繰り広げられてます。
即興で実況中継と解説までする未達に熱気を感じるわ~。
相手がお子ちゃまでも決して手を抜かないシビアな走りを見せて、何気に全戦全勝をたたき出すのは風ちゃん。
逆に子供達相手には僅差でゴールさせるよう手を抜くし、大人には僅差で勝つようにして余裕を見せるのぞみ。
雷ちゃんは程々参加して、未達のそばで毛繕い中。
私も羊たちのそばでへばり中。
『ちび竜ちゃん、この競争なんていうの?』
「んあ、ビーチフラッグのこと?」
『びーちふらっぐ?』
私が知っているのは砂地で行われる旗取り短距離走ってぐらいなの。ホントはいろいろあるんだろうけど、おばちゃん詳しくないからねぇ。
「砂浜に人数よりも少ない手旗を立てて、後ろ向きうつ伏せでスタートする競技よ。瞬発力も判断力も足腰の強さも必要とされる上に、運も関わってくるわ」
競い合う事は正に知力体力時の運。一定の決まりの上で、正々堂々と己の持てる全てをもって勝負する。明確に勝ち負けが下されるからこそ、熱くなるのかもしれない。
命の掛け合いなんて物騒なものよりは俄然私は好きだけど、流血やケガが付き物だっていう競技は意外と多い。室内で正座して行うカルタだって立派な競技だし、将棋や囲碁だって楽しむか競い合うかでハードルはいくらでも変わる。入学試験とか就職活動とかもある意味競い合いだし、もしかして競技と言えるかもしれない。
『へぇ、競技なぁ』
「明確な勝ち負けが出るからね。私みたいにどんくさいのには向かないけど」
『他にはどんなのあるの?』
そう言われて頭に浮かんだのは、棒倒しに騎馬戦。片足バランスで縄引きとか。あ、ビーチバレーもいいかも。時間があったらサンドアートで砂のお城作りなんてのも捨てがたいわ~。もちろん私は見る専門ね。
「へぇ」
『おもろそうやな』
『すぐ出来るのはどれ?』
折り返し地点で頭を棒に当てて10回グルグルしてから帰ってくるスタイルのリレーを提案。かなり元気な若者は早速チャレンジして爆笑していました。ええ、あれでまともに走ろうなんて出来る方がおかしいんですとも。
その後、アト村や一部冒険者、国軍の人にビーチフラッグが流行り、夏の終わりには小規模ながら大会まで開かれたそうな。
私は参加しなかったので詳細は不明。未娘達が噂を集めてるから、その内に色々聞けると思うわ。
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※作者個人的な視点での抜粋「六話目 夏と海と子⑨―風呂場の会話の後話―」より。
アト村での香り付き洗い粉が好評だったので、そのことをセンセー伝えてみました。
「あらあら~。ならこのまま頑張ってみようかしら~」
「自然な香りの方が好評みたいよ、華やかなさよりも落ち着いた感じにしたら?」
「そうね~、変に凝ったものよりも手に入りやすい方がいいわよね~」
センセーの調合した洗粉は、使うとその良さが分かるのよ。
簡単に言うとね、一般に流通している普通の洗い粉はほぼほぼ泡立ちは有りません。例えると小麦粉を水に溶いて加熱すると出来るトロミを付けた感じのものを、適当に取ってゴシゴシするのが使い方。終わったら水を掛けてトロミを洗い流すの。
センセーのは基本的な材料は全く同じなんだけど、泡立ちがあるの。団栗みたいな木の実をピーナッツバターみたいになるまで擂り潰してちょっとずつ保湿の油を足しながら練り込んで、それから灰を水に浸したモノを加えながらしっかり撹拌するそうなの。石臼を使って作業するからそんなに苦じゃないわ~って言っていたけど、めっちゃ手間かかってるわよ。保湿の油を含めたこの配合は企業秘密なんだって。
保湿の効果を付けた洗粉ならけっこう需要があると思って~って言っていたけど、絶対あると思うわ。ほのかな香りなら一般的にも、無臭なら裕福層や冒険者にもお勧めできると思うの。
「ただ、持ち運びっ~ていうか入れ物ね~」
「うや? 入れ物?」
「こうねっとり~ってなるからぁ、瓶だと詰めるのも使うのも時間がかかるのよ」
見せてもらった実物は、冷蔵庫に置き忘れた蜂蜜。しかも中で糖分が結晶化しちゃって簡単には傾けても出て来ない状態を想像してみて下さい。まさにアレ。
私がセンセーに貰った試供品は、サラッとできる限界まで試したものなんだって。市販されているタイプの洗粉は目の細かい布袋に入れて使う半練りのものが多く、中身が終わったらお店で量り売りで購入って仕様が多い。台所用とかお風呂用とか一応分けていても、中身は同じなんてよくある話。
「いっそ、飴みたいに固形にしちゃったら?」
「う~ん、ベタベタしたお豆腐みたいの?」
「じゃあ広口の瓶に入れて、直接手か匙で取ればいいんじゃない」
「あら、そうね~」
固形化出来た方が包装も含めて持ち運びに便利と思うのだけど。確か石鹸の作り方って苛性ソーダとオイルってのが一般的だったような。まてまて、確か石鹸は肉を焼くことで落ちた油と灰が反応して生まれたものって聞いた覚えがあるわ。
洗粉は主に木灰を水に浸した上澄みか濾したモノに、団栗みたいな木の実を擂り潰して乾燥させた粉とあわせ、暫し待ってトロミが出たら使うの。
使う時に適量を手に取って水を垂らして、馴染ませてからタオルやブラシを使って洗います。多すぎるとすすぎに手間がかかる使い勝手の悪さがあるから、ひと手間かかるのよね。
「そうなの~、使い勝手って洗い粉によって微妙だもの。その辺の均一化が出来るといいいのにね~」
「洗う対象によっては洗浄力の調整は必要だと思うの。赤ちゃんを洗うのと油まみれのお鍋を同じ洗い粉では洗えないし?」
「そうね~、木灰の種類とか濃度とかも色々試したけど、ものすっごっく持ち運びには向かないし、配合がめんどくさいのよ~」
「草灰とかは試したの?」
「いちお~ね。一通り試してね~、入手が難しいのがあるからまだ途中なの~」
「羊達に頼んだら? 何なら森の魔獣さん達に聞いて見るよ?」
センセーから必要な種類を一覧にしてもらうようお願いして、灰汁の作り方を見学中。一般的な作り方としてはホント適当なところが多いの。
例えば家で使っている灰汁ってね、木を燃やした灰から大まかなゴミを取り除いて、表面つるっつるの壺に入れるの。そこに入れた灰の三倍くらいのあっつーいお湯を入れて、棒でぐるぐる~ってかき回して、簡易蓋をして一晩放置。翌日上澄みを取り出して専用の小壺に小分けしておき、底に残った灰は洗い粉と混ぜて食器洗いや手拭い洗いに使用。使った後はちゃんと手洗いして、保湿の手入れはしっかりしないとダメよ~。
「え~、おみず?」
「え?」
センセーは灰に常温のお水をそのまま入れて、弱火にしてかけていた。煮出して使うつもりなんだ。あれあれ、じゃあ私のやり方だとダメなのかなぁ。
「ちび竜ちゃんはお湯でやってるの?」
「うん、んで一晩放置して上澄みと灰に分けて使っているわ。」
「ふ~ん、じゃあ上澄みってあるの~?」
「あるわよ~、つかう?」
この辺だとお洗濯に灰汁が使われるの。洗濯物が一般家庭よりも圧倒的に少ない我が家ではそんなに使うものじゃないし、灰汁自体腐るようなものじゃないから年に数回作るかどうかって代物。山菜のあく抜きに使うことの多い春先を除けばほぼ作ることもないので、序に竈の中の灰もどうぞと進呈してきました。
優しい洗い心地の石鹸が出来たらいいなぁ。
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「ちょっといい? ちび竜ちゃんの持ってきた灰なんだけど」
「あれ、なんかあったのかい?」
ちび竜が持って来た灰は煮炊きに使われる竈と、趣味の陶芸用の窯の灰の二種類だった。細かく言うなら、大きな燃えカスが混じった灰と長時間の焼成により真白になった灰。ちび竜はまるで頓着しないのでその辺が分かっていない。
「凄く白くてサラサラ~だったから、ちょっと思いつきで洗い粉と直接混ぜてから、保湿油で練り込んで、乾燥させてみたの」
「へぇ、このチーズみたいなのがそうかい?」
村営商会『タングステン村・主婦の会』の運営者達はソフィが持ち込んだ『洗い粉』を吟味する。エルルーのスッキリとした香りを付けられた白杢色の塊は、木材並みに固く、持ち運びには便利そうだ。
「これを持ったまま水に浸して、それから洗ってみて」
配合の妙というか使われている油が良かったのか、しっとりとした洗い上がりの洗い粉は新たな売り文句が付けられ、無事に村の名産品に名を連ねることになった。
「泡立つ洗い粉、お肌の潤いが気になる貴方に」
後日、泡立ちの理由が「魔力を使った炎で生成された灰だと泡立つらしい」と検証され、ちび竜宅の灰は材料として全て回収される事となる。そう、すべて。
村営商会『タングステン村・主婦の会』の運営者達より、ちび竜宅の煮炊き用の薪と洗い粉が無料配布となったのはこういう流れである。
ぽつぽつ書き進めようと思います。
リアル未に逢いたいけど、自主的外出自粛中なのでどうしたものか。




